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パール剤とは、着色に使用される顔料(キーワード参照)の一種。真珠光沢顔料とも呼ばれる。光学的性質を生かし、塗布したものの表面に光沢、輝きを出すために用いられる。化粧品の中ではアイカラーや口紅、下地やファンデーションなどにも幅広く配合され、肌や唇に光沢を出す役割を持つ。
パール剤はベースとなる基板と、基板を覆う粒子から成る。基板と粒子で構成されるパール剤の形状は、光を多く反射させるために表面が平面になっていることが多い。基板には平坦に加工しやすい雲母(キーワード参照)やガラス、粒子には均一に塗布しやすい酸化チタン(キーワード参照)がよく使用される。
光には、物質を透過して底面から反射する際、その物質の厚みによって色が変わるという性質がある。通常のパール剤は粒子によるコーティング厚が90ナノメートル未満と薄いため透明な光沢を発するが、コーティング厚を90ナノメートル以上にすると黄色、115ナノメートル以上にすると赤など、色つきパールをつくることもできる。
古代より人々は真珠や貝殻の持つ光沢を珍重し、貝殻を家具や楽器に貼りつける螺鈿細工などの技術を生み出した。しかし真珠のような光沢を持つ塗料が登場するのは、かなり時代を下って、近世になってから。「17世紀半ば、フランスでタチウオやニシンなど魚の鱗から、グアニンという真珠光沢を持つ成分が発見されます。当時の人々はグアニンをガラス玉に塗布し、人工真珠など工芸品や装飾品をつくっていたと言われています」(カネボウ化粧品 商品設計第2グループ主任研究員 永井智雄さん) しかしグアニンは品質が安定しないなどの問題があり、化粧品に利用されることはなかった。
1977年、カネボウ化粧品から発売されたフェアレビュー クリーミィアイメイクアップカラー。当時はまだ珍しかったパール剤により、それまでにない輝きをまぶたに得られると注目を集めた。
第二次世界大戦終結以降になると、パール剤の基板に適した、板状に結晶化するさまざまな化学物質が発見された。パール剤は大量生産が可能になり、そこで初めて口紅やアイカラーなど化粧品に使われるようになったという。「1960年代には現在とほぼ同じような雲母と酸化チタンを使ったパール剤が開発され、パール剤の化粧品への利用はさらに進みます。カネボウ化粧品では1977年にパール剤を配合した、フェアレビュー クリーミィアイメイクアップカラーという製品を発売し、話題になりました」(永井さん) 1990年以降は基板の種類がより一層増加し、コーティング技術も発達。従来より大きく透明感の高いもの、一種で何色も色を発し肌に立体感を与えるものなど、さまざまなパール剤が開発された。多くのメイクアイテムにパール剤が配合されるようになり、メイクアップはパールの時代へ突入。透明感と立体感を求められるメイクにおいて、今やパール剤は必須要素になっている。
顔料とは、化粧品や食品、絵の具やペンキなどの着色に用いられる粉末のうち、水や油などに溶けないものを指す。化粧品に含まれる顔料には、白色を発する酸化チタンやカオリン、黄色や黒色、赤褐色を発する酸化鉄、緑色を発する酸化クロムなどが挙げられる。
ラメとは、光沢を持った細かな薄片のこと。グリッターと称されることもある。樹脂フィルムをアルミニウムなどの金属でコーティングしてさまざまな色や光沢をつけ、四角形や星形などにカットし成形する。一般的にラメはパール剤より大粒であり、単体で目視できることが多い。化粧品では、ネイルカラーやアイカラー、ボディパウダーなどに配合される。
雲母とは、花崗岩や片麻岩などに含まれる鉱物の一種。マイカ、キララなどとも呼ばれる。力を加えると薄く平らに剥がれる特徴を生かし、化粧品においてはパール剤の基板、ファンデーションに含まれる白色顔料として用いられる。
パール剤は、マイカ(雲母)とマイカをコーティングする酸化チタンの層からできている。各層がそれぞれ表面と底面で光を反射することで、見え方に奥行きが生まれ、その光が光沢として映る。
2002年に発売された、カネボウ化粧品 テスティモ トランスシャインアイズ。
資生堂から1968年に発売されヒットした、ナチュラルグロウ口紅。
1970年にコーセーから発売された、オーリック コンパクトベール。
酸化チタンとは、鉱物を原料にして生成される化合物のこと。均一に塗布しやすい性質を持つため、パール剤の基板をコーティングするために利用される。また、酸化チタンには紫外線を反射する性質があり、UVカット乳液などに配合される紫外線反射剤としても活用されている。
角度により、色が赤や青などに変わって見えるパール剤のこと。光が物質を透過して反射する際、その物質の厚さによって反射光の色が変わる性質を応用。パール剤の形状や厚みを工夫し、色を変化させている。偏光パールを配合したアイカラーやネイルカラーは、肌や爪の立体感を強調する役割を持つ。
1968年
資生堂 ナチュラルグロウ口紅●資生堂において、初めてパール剤を配合したアイテム。ナチュラルグロウ口紅の爆発的ヒットは、同社の口紅の評価を高めるきっかけとなった。
1970年
コーセー オーリック コンパクトベール●コンパクト入りの固形カラーベース。パール剤や顔料の働きにより実現した、肌色を思いのままに変えることができるという特性が話題になった。
1999年
シャネル レーヴル サンティヤント●輝きのピグメントを配合したグロスとして登場。発売以来10年を超える現在も売れ続けているロングセラー。
2002年
カネボウ化粧品 テスティモ トランスシャインアイズ●ガラス素材の大粒パール剤、クリスタリングパールを配合したアイカラー。それまでになかったパールの透明感が人気を集めた。
パウダーファンデーション、アイカラー、ネイル
※次回のテーマは、「レチノール」です。
取材協力:
カネボウ化粧品 商品設計第2グループ主任研究員 永井智雄