1. 人生の転機は、ある日突然やってくる

斎藤薫の美容自身2

2016.05.11

人生の転機は、ある日突然やってくる

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 今月のテーマは“女の人生”と、その分岐点について。毎月第2水曜日更新。

人生の転機は、ある日突然やってくる
齋藤 薫
ビューティジャーナリスト
by 齋藤 薫

法外に良い思いをした分だけ、ちゃんと正確に天罰が下る時代

 近ごろ話題の週刊誌は、まるで閻魔さまのよう。ほぼ毎週のように、ムキになって超ド級のスキャンダルを用意し、発売日に毎度、事件にする。で、そのたびに当事者、ないしその周辺の人々の人生がガラリと変わる。本当に人生が180度ひっくり返るのだ。世の中が一生懸命ちやほやしていた人が、いきなり外を歩けなくなってしまうのだから。

 ともかく、ゲス不倫議員や経歴詐称コメンテーターなど、“法外に良い思い”をした人に、その分だけの天罰が正確に下るのは、なんだか不気味なほど。自業自得とは言え、人の人生ってこんなにも簡単に壊れてしまうのかと、うっかり同情してしまうほど。どちらにせよ、人生の儚さを憂える今日この頃。ただそういう意味で、ベッキーのケースは特殊な上に、出来事そのものは世間にけっこうありがちな話だっただけに、全くの他人事とは思えなかったりもしたはず。人生の転機ってこんなふうに来てしまうの!? という驚きも含め。

 そもそも今、“世間の目”が明らかに変わってきている。単純に、チェックが厳しくなり、しかも意外なほど常識的な倫理観をベースにした間違い探しが恒常化している。だから一般人さえもがちょっとしたミスも許されないような気がしてきているはずなのだ。

 言いかえればこれは、社会の自浄作用が、SNS時代のスピードと広がりを持ってしまったという話なわけだが、たとえば浮気がバレたり、相手の浮気を知ってしまったりする不測の事態が以前の10倍くらい起きやすくなっている。その分、交際のサイクルも短くなっているはず。総合すれば、本人が望まなくても、多くの人の人生が“劇的なもの”になりやすくなっているということ。もちろん、社会の目の変化だけじゃない、いろんなことの白黒がハッキリするのも速くなり、だから人生の転機も、不意にやってくる。ある日突然やってくる。そう思っていたほうがいい時代。さてあなたは、いきなり人生の転機が来たらどうするのだろう。

悪い転機と良い転機は、いつも背中合わせにある

 とても不思議なことだが、私の場合、なんだか平和だなあと思った数日後、必ず何かが起こる。あんまり良くないことが……。そして大なり小なり、望まない転機が訪れたりするものなのだ。そう、“転機”って良いことよりも悪いことをきっかけにするほうが多い。もちろん、良いことがある分だけ悪いことも起きる、というのが本当のところなのだが、悪い転機のほうだけ、人は運命のせいにしがちだから、転機として目立ってしまうのだろう。たとえば、リストラされた、夫が別れてくれと言い出した……そういうことは運命のせいにできるから。

 たぶん多くの人の日常は、何も起きないことを前提として流れていくから、何もない時ほど何も起きるはずはないとタカをくくっている。でも、すべての人生は、いつ、何が起きるかわからないと、思っていてちょうどいいのだ。とりわけ「私の人生、なかなかいい感じ」と思えた時、のどかだなあとゆとりを感じた時こそ注意する。不思議にその反動のように何か起こってしまうから。

 およそスキャンダルに縁がなかったベッキーが、恋に落ちて、当初は不倫とは知らずに夢中になって、事実を知ってももう後戻りできず、でも相手が卒業(離婚)してくれると約束したから、有頂天になった。いや普通は“不倫”って、そう簡単に思い通りに事は進まない。相手がたちまち別れてくれるなんて事はまず起こらず、だから苦しんだり、イラついたり、バカバカしくなったり。それで不倫が全く割に合わない恋愛だと知るのが、一般的な人生というものなのだが、この人の場合は、相手の、少々軽薄な言動に乗せられて、突然やってきた“幸せの転機”に酔いしれ、不倫であることを忘れた。その心情までが、まさかのライン話発覚で世間に公表され、一転、“最悪の転機”になってしまう。転機はそういうふうにやってくるのだ。最高の転機も、最悪の転機も……。本人にしてみれば、ただ人を好きになっただけ、ただ恋をしただけなのに。巡り合わせの悪さが、そこまでの激流を生んでしまったわけで、転機は不可抗力も加わるから、人生が音を立てて動きだしてしまうのだ。

 このように、悪い転機には、必ず何かの悪い偶然が重なってくるのだけれど、でもその芯の部分には、やっぱり自分が犯した何らかの“落ち度”が潜んでいる。それを素直に認めないと、運命というものを恨むだけで、悪い転機はもっとその人を不幸にしてしまうのだ。でも、その落ち度を嚙みしめるうち、人生はまたことこと動きだして、良い転機へと切り替わっていくかもしれないことも、ベッキーは教えてくれたと思う。

 つまりこの人は、開き直らず、言い訳もせず、すべての仕事を降りた。真偽のほどはわからないが、賠償金も半分払うと申し出た。何の代償も払わずに「なんで謝る必要があるの?」と言った相手とは真逆の対応。ベッキーは何も“法外に良い思い”をしたわけではないのに、結果なんだか相手の代償も代わりに払った形。だからその差額は必ず返ってくるはず。払い過ぎた税金が戻る還付金のように。だって相手の分までの禊を済ませる若い女性など、そうはいないから。

 だから“復帰の時”は、それなりの拍手を持って迎えられ、ひょっとすると世間はそれ以前よりも、この人を評価するかもしれない。今まで全く興味がなかった人でさえ、一目も二目も置くかもしれない。そうやって“最悪の転機”は、背中合わせに“良い転機”を孕んでいるのだ。

 つまり身に覚えのない不幸が訪れたとしても、自分の非を本気で探せば、やがてひっくり返って転機そのものが好転するということ。人生はオセロのように白になったり、黒になったりするしかないのだから。表か裏かしかないのだから。それがまさに“ちょっとしたきっかけ”で一斉に表になっていったり、一斉に裏になったりするから、それが転機となる。たった1枚の駒を動かすだけで人生がガラガラ変わる、それが転機。

 でもだからといって、臆病になってはいけないと思う。不可抗力によって“悪い転機”に見舞われるくらいなら、いっそ自ら駒を動かして、一斉に表に変えてしまうつもりで良い転機を引き寄せる、そういう生き方をしたいもの。

 長年、“単なる友人”のひとりだった男性の海外赴任が決まった時、「一緒に行っちゃおうかな」と冗談半分に言ったことで、素晴らしい転機を引き寄せた人がいる。「え、ホント? ならばぜひ来てほしい」と言われて、3ヵ月後には、もうフランスで新婚生活を送ってた。30代半ばまで恋人もいなかったのに……人生はだから面白い。自ら動かして、人生を面白くするってありなのだ。

 どっちにしろ幸せと不幸せは同じ量だけやってくる。でもそこで、不幸せな時間をできるだけ短くする工夫をすれば良いのだ。たとえば、最悪なことが起きたら、これ以上悪いことも起こらない、後はもう良くなるだけと考えること。それだけだって不幸せな時間を最短にできる1つのテクニック。覚えていてほしい。

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齋藤 薫
齋藤 薫
美界のご意見番。VOCE連載のほか、美容や女性をテーマに多くの女性誌で執筆中。精神性の深さが多くの女性から支持をえている。

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