1. あなたはちゃんと悩む人か? あまり悩まない人か? 人生、一体どちらが正しいのかについての考察

斎藤薫の美容自身2

2015.08.12

あなたはちゃんと悩む人か? あまり悩まない人か? 人生、一体どちらが正しいのかについての考察

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 今月のテーマは人生についての考察。毎月第2水曜日更新。

あなたはちゃんと悩む人か? あまり悩まない人か? 人生、一体どちらが正しいのかについての考察
石井 亜樹
VOCE編集長
by 石井 亜樹

悩みはするが、悩み方の上手な女たれ

 たとえば二人の男に同時に「好き」と告白されたとして、あなたは悩みもだえる女だろうか。それとも何ら悩むことなく、"私ってなんてモテる女なの?"と調子にのる女だろうか。ともかく世の中いつもクヨクヨ悩んでいる人と、いつもあっけらかんと悩むことなく生きている人がいる。悩むか悩まないかは生まれ持った"体質"に近く、悩む人は何だかんだとほぼ一生悩み続けるから、両者の生き方はまったく違ったものになる。そういう意味では、一見"悩まない人"のほうが人生ラクに生きられそうだけれど、それほど単純なものでないのが人の人生。正しいのは一体どちらなのだろう。

 そう、悩まない人が基本ラクなのは間違いないが、悩まない人にもハッキリ2種類いる。答えが最初からわかっているから悩まない人と、考えが浅いから悩まない人がいて、これは天と地ほども違う。前者は大なり小なり人生を踏み外すが、踏み外しても悩まず生きて行く鈍感な強さがあるから、いっそ幸せなのかもしれない。ちなみにずばり、前者は答えを知っているから"占い"に興味がなく、後者は何も考えないから"占い"を鵜呑みにする。"今日のラッキーカラー"から、"出会いの場所"に転職の正否まで、占いに素直に従うのが悩まない女。

 一方、ここで占いを信じていいのかどうかにさえ悩むのが、すなわち"悩む人"なわけで、そういう意味では、悩む人のほうが間違いは少ないはずだが、正しい決断をしても尚正しかったかどうかを悩むから、いちいち面倒な生き方となる。 ただ、何と言っても「人間は"考える葦"」である。言うまでもなく、人間なんて自然の中でいちばん弱い葦のように弱々しい生きものだが、それでも"考えるという能力"を持っている、と説いた哲学者パスカルの言葉。哲学者を相手にナンだけれど、まさにその通り。か弱いからこそ考える能力を与えられたのだ。なのにあまり考えずに生きているのは人として未成熟だし、不自然。単純にもったいない。答えがほぼ見えているから悩まない希有な人以外は、やっぱり悩みながら生きるべき。それが人間の自然の姿。

しかし問題は、悩み方なのだ。悩みの扱い方。悩みは言わば"風邪"と同じ。極端な話、放っておけばいつの間にか治ってしまうが、自分自身に繊細で神経質な人ほどひきやすく、治りにくい。むしろ悪化したりする。もともと風邪は、初期症状を見つけてすかさず薬を飲んでしまえば、多くがひきかかりで回復するし、自分の"風邪"のパターンがわかっていれば、悪化を防いだり、かからない工夫もできるはずなのに、逆に自分を大事にしすぎてよけいに症状をひどくする悪循環を毎回繰り返している人もいる。

 そして「もう辛くて辛くて」と周囲に向けて主張する人もいる。そもそも"考えないから悩まない人"には、悩みをやたらいろんな人に相談するのに、相手のアドバイスは全然聞いていない"人騒がせ"なタイプがけっこういるものだが、くよくよ悩む人にも自分の悩みを周囲にまき散らし、収拾がつかなくなってもっと混乱するタイプが少なくない。こういうふうに、悩みの扱い方が残念なくらい下手な人っているもの。当然のことながら、悩みの処理が上手くない人は、人生もとっ散らかる。要は悩みはするが、悩み方が上手な女になればいいのである。

悩みを悩みのままこねくりまわすだけでは、心をがりがり削るだけ

 たとえば世に言う"風邪をひかない女"って、本当に一年中ひかないのだろうか? たぶんそうではなくて、毎回ひきかかりで症状が止み、治ってしまう人。いや"治してしまう人"と言うべきだろう。風邪くらいで会社を休みたくないから、ご飯の約束をドタキャンしたくないから。言いかえれば、風邪はひきたくなければひかずに済んでしまうものなのだ。

 で、悩み方が上手な人も、悩みがムクムク起き上がってきても工夫で最小限にくい止める。悩みの大きさを決めるのは、自分自身なのだから。

 私事で申し訳ないが、私が極端な"朝型生活"を続けているのも、じつは"悩みを最小限にくい止める"ひとつのテクニックだったりする。夜は夜というだけで悩みを深めてしまうから。いや、夜が来るから人は悩むのだ、とも言えるほど。だから自分に"悩む時間"を与えないという意味で、夜を限りなくコンパクトにして、朝できることはすべて朝にまわすという形で、朝型生活を始めたのだ。従ってお風呂もメインのスキンケアも朝。夜のお風呂は胸にしまってあった悩みを揺り起こして、増殖させるから。さらに厄介なのが、夜ベッドに入ってからの"眠れない時間"で、体に重くのしかかる暗闇は忘れかけていた悩みも引っ張り出して、倍々に膨らませてしまう。だから夜を長引かせるのは絶対タブー。夜は心が負になるが、朝は一転不思議なほど心が上向きでポジティブになるから、悩みを悩めない。そのまま一日が始まって、バタンキュー。悩みの育つスキを与えないのだ。かくしてバタンキューの形をつくるのには、逆に暗いうちに起き出すような朝型生活がいちばん。これだけで随分悩まない体質になれた。生活を変えることで、悩みはあっても悩まない体質をつくればいいのである。

 もうひとつ、悩みの質を自らの手で変える方法もある。悩みはあくまで悩み。何も生まないし、心をがりがり削るだけ。悩みは一刻も早く"悟り"に変えるべきなのだ。他のことをして気を紛らわせても解決にはならないからこうしてみて。

 これは心の専門家に教わった方法。悩みが胸のあたりにあるうちはただ悩みをこねくりまわしているだけ。長い時間、悩みを住まわせておくと心にも体にもダメージを与える。だったら"悩まない人"のほうがマシ。だから悩みを頭まで引っ張り上げるイメージをしてほしい。頭に持ってくると悩みは急に"考え"に変わり、なぜそうなったのか、何がいけなかったのか? 自分をどう変えればいいのか? といきなり解明が始まり、わりにすぐ答えが出て悩みがするする解体される。そして頭のてっぺんから上に抜けていく。頭でちゃんと考えると悩みは抜け、悟りだけが残るしくみになっているのだ。

 ともかくすべてのことに意味があり、悩みも苦しみも大切なことを悟らせるためにやってくる"人生の課題"。だから悩みは必ず悟りに変わる。変わるほどにどんどん人格が磨かれるから、人間は悩むほど成長する生きもの、そう言いたいのだ。悩みが生まれるたび、悟りが増えるチャンスと思えたら理想的。人生はどんどん良くなる。大いに悩み、大いに悟ろう。

 ただ断っておきたいのは、人に迷惑をかけなければ"毎日毎日悩んでばかり"だってかまわないが、悩みがいちいち目に見えるようではまずい。そして他人には強く出るのに、自分自身は傷つきやすく、自分に対してはやたらデリケート……こういう人も生きにくい。自分を慎重に取り扱いすぎるがゆえの悩みは、"他人を畏縮させ、疲れさせ、必ず女を不幸にするから、間違ってもやってはいけないのだ。悩みは風邪。大丈夫。体力つけて免疫に変えるように、悟りを増やしたら、人生は自ずとスムースに動き出す"。 だから悩みは人にぶつけず、人に見せず、頭から上に抜くか逃げ切るかなのである。

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photograph:Yoshiaki Toda
styling:Hiromi Hosoda
design:Kohtaro Hori (horitz)
text:Kaoru Saito

石井 亜樹
石井 亜樹
VOCE編集長。スキンケアはたっぷり使うことでズボラを補おうとする乾燥肌。若い時はそばかすだったものがシミに変わってきてるのが悩みなので、美白は年中。ファンデはリキッド一辺倒だったが、ゴルフを始めてパウダリーにも目覚め、顔のUV対策には人一倍気を使う。趣味は落語と箱根駅伝。

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