1. 女はみんな、喜怒哀楽のいずれかを生きている【斎藤薫】

斎藤薫の美容自身2

2017.08.09

女はみんな、喜怒哀楽のいずれかを生きている【斎藤薫】

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 今月のテーマは"女はみんな、喜怒哀楽のいずれかを生きている”について。毎月第2水曜日更新。

女はみんな、喜怒哀楽のいずれかを生きている【斎藤薫】
齋藤 薫
ビューティジャーナリスト
by 齋藤 薫

女は、4つの感情を目まぐるしく入れ替えながら生きている

「セックス・アンド・ザ・シティ」……あなたもかつて、ハマっただろうか。NYを舞台に、4人の女性が繰り広げる“恋愛人生ドラマ”。何より4人の“会食おしゃべり”が可笑しくも奥深く、日本でも大ヒットした成功要因は、まさにそこにあったと言っていい。4人の誰かに起こった問題を、まるで会議にかけるようにテーブルに載せ、あーでもないこーでもないと意見を戦わせる。そこには常に女の喜怒哀楽があって、みんな一緒になって喜んだり怒ったり……。究極の女子会を覗き見ている私たちを興奮させた。 

女の喜怒哀楽……まさに、泣いたり笑ったり、女の感情は常に忙しい。この女子会はさらなるスピードで4つの感情が入れ替わるさまを見せてくれたわけで、だからふと思った。これが3人だったりしたら、ここまでヒットしただろうかと。女の喜怒哀楽は、やっぱり女が4人いなければ、本当のところを描けないはずと。 今はあまり読まれないのだろうか。少女小説の金字塔『若草物語』 ……日本文学の中にも、4姉妹が登場するし、こじらせ女子ドラマ、「ガール」も4人。やはり4人の女が“女の喜怒哀楽”を描ける重要な手段だったからではないか。“てんでバラバラ”な4人が、女の四隅をきっちり描くと、見ているものの感情が必ずどこかと同期するから常に共鳴が続くのだ。

SATCの4人を無理矢理当てはめると、喜怒哀楽の“喜ぶ”の分野を担当するのが、PR会社の社長で、自由奔放、性の快楽を追求し続けるサマンサ。“怒る”を担当するのは、弁護士であるミランダ。人格者だけれど、何だかいつも怒っている。“哀しむ”のは、やはりヒロインのキャリー。女性の生き方を語るライターという立場からも、恋愛至上主義者としても、常に心が揺れ、憂えている。そして、“楽しむ”を象徴するのは、幸せ願望が誰より強いテンネンな主婦、シャーロットだろう。その4人が様々なテーマについて、一緒に喜怒哀楽するからこそ、女の喜怒哀楽がまんべんなく上手に描かれるという仕組み。そういう意味であまりによくできたドラマ。過激なセックス描写が平然と入り込むのに、恋人のいる人にもいない人にも、結婚している人にもしていない人にも、ぐるりと見事な共感を生んだのはそのせいだろう。 

でも、現実の世の中はもっと明快だ。いつもニコニコ笑顔を絶やさない“喜ぶ女”がいるかと思うと、なんだかいつも怒っていて、文句を言っている“怒る女”がいる。一方でいつもいつもクヨクヨ全てを後ろ向きに考えてしまう、 “哀しむ女”もいる。逆に何でも前向きに考え、何でも楽しめてしまう、“楽しむ女”も。もちろんみんなの心の中に喜怒哀楽の全てがある。顔の表情にも喜怒哀楽の全てがある。しかし他者から見ると、女は○○な女という風に喜怒哀楽のどれか一つに偏って見えてしまうのだ。それも、社会は人のイメージを簡略化しようとする。この人いつも笑ってるよね。この人いつも怒ってるよね。そう決めてしまう方が楽だから。その方が人間を整理しやすいし、記憶しやすいから。誰かを思い出したときに、笑顔しか浮かばない、仏頂面しか浮かばない。それもまた、そうやって人々のイメージが整理され、記憶されているからなのだ。

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喜怒哀楽が上手な女性とは?

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