1. 松本千登世の『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる⑲』 ‟一生美しいのは、謙虚な女”

2018.08.09

松本千登世の『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる⑲』 ‟一生美しいのは、謙虚な女”

美容ジャーナリスト・エディターとしてVOCEでも出演、取材、編集、執筆と活躍中の松本千登世さん。その美しさと知性と気品が溢れる松本千登世さんのファンは美容業界だけにとどまらない。こちらの美容エッセイ『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる。』(講談社)から、ぜひ今日も、「綺麗」を、ひとつ、手に入れてください。

松本千登世の『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる⑲』 ‟一生美しいのは、謙虚な女”

一生美しいのは、謙虚な女

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「バレエを習い始めたの」。友人が突然私に宣言したのはもう、10年近く前のこと。「最近思うのよね。老化ってさ、イコール『硬くなること』だなって。体も頭も、心も肌も……。だからまず、体を柔らかくしようと思って」。それが理由なのだと言いました。

もともと好奇心の塊、思いついたらすぐ行動というタイプの彼女は、早速、職場の近所でバレエ教室を見つけ、喜々として通っているようでした。すると……? 会うたび顔も体も引き締まっていくみたい。同時に目がきらきらしてきたし、口角も上向きになったよう。バレエって、こんなにも美人効果があったんだ。

ところで、10年続けた今、体、柔らかくなった? 「ほんの少しだけ。それより本当に柔らかくなったのは頭の中身だったかもね」。えっ? どういうこと?

「この年齢になると、仕事もプライベートも叱られる、諭される、教えられるなんてことが、どんどんなくなっていくでしょう? ところが、バレエは習ったり倣ったりする立場だから、不思議と謙虚になれる。人の素晴らしさを心から尊敬する、自分の欠点を素直に認める、そんな原点を思い出せた気がしたの」。

まず、くすんでいた仕事が鮮やかに見えてきたと彼女は言いました。いつの間にか自分で作っていた「どうせこんなもの」という枠や、思い通りにならないと周りに対して抱いていた不満を取り払うことができたのだ、と。そして……。ボーイフレンドに、こうしてくれないああしてくれないと愚痴ばかりだったのが、逆にこんなところもあんなところも、あの人も結構いいところ、あるのよね、そう言い始めた自分に気付いたというのです。

「女はね、一生、偉くなっちゃいけないって気付いたの。美しくないなって。私はまだまだ未熟、そう思える環境に身を置き続けることが、綺麗でいる秘訣なんじゃないかと思う」。

謙虚な女は、脳も心も、体も肌も柔らかい。すべては繋がっているのだから。これが一生通用する美しさの理由。

穏やかに許容する、ふくよかな女

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久しぶりにランチでもどう? その日、私は友人たちと集まることになっていました。中のひとりは、ほぼ2年ぶり。その間に男の子が生まれ、すでに1歳半近く。彼に初めて会えるのも楽しみで、胸を躍らせながらレストランへと向かいました。

すると、身軽なはずの私より先に彼女はもう着いていて、歩くのが楽しくて仕方のない彼の傍らに寄り添い、テラスから手を振ってる。

ごめんね、遅くなって、と手を合わせながら席に着き、母になった姿を眩しく眺めました。ほどなく彼女に抱かれて席へとやってきた彼は、照れ笑いする顔がパパにそっくりで笑っちゃうほど。

初めましてと挨拶をしながらふと彼の手に目をやると、テラスにあった雑草? 小さな植物の切れ端を持ってる……と、気付くや否や、あああっ、口に入れちゃう。だめだめ、食べちゃ。そう思った瞬間、彼女はにこにこしながら、ゆっくりとそして静かにこう言ったのです。「いただきまーす」。

子どもが食べちゃいけないものを口にしようとしたら、言い方がぴしゃりと厳しいかゆるりと穏やかか、という違いはあれど、母親は急いで制止するのが当たり前と思っていました。ところが、彼女はまったく逆。食べてもいいじゃない、とばかりに大らかに見守っていたのでした。

なんてふくよかなのだろう? その表情も心のあり方も……。こんな母親に包まれ続ける彼はきっと、伸び伸びと自由に育つはず。こんな妻が家で待っていたら、夫はそこにまっしぐらに帰りたくなるはず。強く思いました。私も彼女のような、ふくよかな女になりたい、と。

「男女比率計算」から色気が生まれる

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ある脳科学者の方にインタビューでお目にかかったときの話。「今、そしてこれからの時代、もっとも輝くのは、男女問わず『アンドロジナス』的な人、すなわち、男性と女性のどちらの『感性』もバランスよく持ち合わせている人だと思うんです」。

女性のほうが優れているとされる「共感力」。これは、相手の幸せから痛みまで喜怒哀楽の感情を心底理解したうえで、同じ感情を共有できる力。そして、男性のほうが優れているとされる「判断力」や「行動力」。文字通り、ものごとを決断し、行動、実践に移せる力。その両方を持っている人が魅力的という話でした。

例として挙げられたのが「海老蔵」と「キムタク」。それぞれに、その世界で「本物」として最前線を歩み、確固たる地位を築いている人。なるほどと合点がいきました。しかもふたりは、見た目がとにかく美しく、そのレベルは女が嫉妬してしまうほどと聞きます。男性的な逞しさや凜々しさの中に、どこか女性的な要素が見え隠れする。それはきっと、内にある感性の表れ……。

私の周りにいる魅力的な女性もまた、心や脳のどこかに男性的な視点を持っています。相手が何を求めているかを自分のこととして想像し、同じ気持ちになる。同時に、しなやかさで包み込みながら、じつは男性顔負けの潔い決断をし、ぐいぐい前に進む。

しかも、彼女たちに共通して言えるのは、見た目にもフェミニンとマニッシュをうまくブレンドして、絶妙な「色気」を生み出していること。存在そのものから女っぽさが溢れているグラマラスな美人は、ショートカットで引き算をしていたり、スレンダーでいかにも運動神経のよさそうな美人は、肌を適度に露出したり髪を巻いたりして女度を濃厚にしたり、といった具合に。それはまるで、砂糖と塩が互いを引き立て合う絶妙な「味わい」のよう……。

内面も見た目も、この「男女比率」のさじ加減を計算できること、それが、永遠の色気の法則なのかもしれません。


結局(けっきょく、丁寧(ていねい)な暮(く)らしが美人(びじん)をつくる。 今日も「綺麗(きれい)」を、ひとつ。

結局(けっきょく、丁寧(ていねい)な暮(く)らしが美人(びじん)をつくる。今日も「綺麗(きれい)」を、ひとつ。

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