1. 松本千登世の『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる(23)』 ‟完璧な肌より、美人の気配”

2018.09.12

松本千登世の『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる(23)』 ‟完璧な肌より、美人の気配”

美容ジャーナリスト・エディターとしてVOCEでも出演、取材、編集、執筆と活躍中の松本千登世さん。その美しさと知性と気品が溢れる松本千登世さんのファンは美容業界だけにとどまらない。こちらの美容エッセイ『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる。』(講談社)から、ぜひ今日も、「綺麗」を、ひとつ、手に入れてください。

松本千登世の『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる(23)』 ‟完璧な肌より、美人の気配”

完璧な肌より、美人の気配

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ファンデーションに不満を持っているうちに、ファンデーションを塗らなくなってしまったと嘆く女性に会いました。

彼女はファッション関係の職業に就いていて、自他ともに認めるファッショニスタ。だからこそその事実に、正直とても驚かされました。えっ? どうしてどうして?

「ファッションを追求するほど、ファンデーションを塗った肌の存在が重く思えてきたんです。欠点を隠して、自分の肌色を閉じ込める……。顔だけを切り離して見ると確かに素肌より綺麗なんだけど、引きの目線でトータルバランスを見ると、どうも肌だけが浮いていて納得がいかない。そんなふうに葛藤しているうちに、あー、もう要らない! いっそのこと、やめてしまおうって思ったわけ」。

私もどこかで感じていました。肌だけがひとり歩きしてるんじゃないか? これで綺麗と言えるのか? って。

私たち日本人の肌クオリティは、世界でもトップクラスと言われるほど。だからでしょうか、「肌だけは綺麗じゃないと」という義務感や強迫観念が生じて、顔だけ切り離すという方向に行ってしまったのではないでしょうか? そう、その人の存在が取り残されていることに気付かないで。

誰しも、隠したい肌の粗があると思います。でも、あまりにもそれを気にしすぎると、ファンデーションはどんどん厚みを増していきます。

粗は少しくらいあったほうが人間らしい。粗は他人からはさほど見えていない。そう自らに言い聞かせ、少し力を抜いて、ファンデーションと付き合いたいと思うのです。顔だけを美しくするのでなく、全身から漂う「美人の気配」を作ると視点を変えて。

メイク顔は社会性、素顔は女力を語り出す

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仕事でお目にかかった男性のひと言。

「僕は女性の『メイク顔』と『素顔』の関係に惚れるんです。女性に出会うときって、たいていメイク顔でしょう? まず、その顔を見て相手に惹かれるんだけど、僕の場合、すぐに素顔を見て女性として本物かどうか確かめたいと思ってしまう。素顔を見たときに、あまりにギャップがありすぎるとなんだか引くし、逆にまったく変わらないのは色気を感じない。もちろん、素顔が綺麗であってほしいのは大前提。そのうえで『大人』と『子ども』を行ったり来たりするような微妙なメイク顔と素顔の関係を持ってる女性が理想的だな、って思うんです」。

男性の視点って、鋭い。人格を変えて見せるほどの化けるメイクにはだまされた感じがあって信頼できないし、一方で、効果を感じないメイクしかできないようでは女としての魅力に欠ける。素顔が綺麗だと自分に女性を見抜く目があったのだと思う……。こう言われて、改めて気付かされました。

確かに、メイク顔は「生き方のセンス」を、素顔は「女の能力」を正直に語るもの。自分を最大限に美しく見せようとするメイク顔には、相手への思いやりや社会的な立場や責任など、周りの人とどう関わりたいのかという「社会性」が如実に表れるはずです。

一方、何も纏わない顔には、ピュアな魂を持っているかどうか、人間的な奥行きがあるか、ちゃんと丁寧に暮らしているかどうか……など、時間を積み重ねて得られる「女力」が表れるはず。

大切なのは、素顔とメイク顔が、互いに鍛え合うような関係であること。メイク顔に刺激されて素顔が育つ、素顔が育つとメイク顔が華やぐ、といった具合に。どちらにも飽きたり慣れたりしないで、毎日を過ごせたら理想に違いないのです。

記憶の中で、シワが消えていく人

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ヘア&メイクアップアーティストの中台朱美さんの言葉。

「私、人のシワが大好きなんですよね。綺麗なシワがある人を見ると『今まで、この人はどれだけ笑ってきたんだろう?』って気になる。幸せな時間を積み重ねてきたんだな、とその人の人生に俄然、興味が湧くんです」。

仕事ぶりも人柄も、ずいぶん年下なのに、と一目置いていました。そして、この言葉を聞いて、ああ、ここに彼女の「引力」の秘密があったのだと確信したのです。

思い出してみると、私が出会った素敵な女性の「顔」には、それぞれに美しいシワがありました。包み込むような穏やかな笑顔、恥ずかしそうにはにかむ笑顔、周りを渦に巻き込んでしまうような弾ける笑顔……。いっぱいシワを作って笑っていた顔に、どれだけ励まされ、癒されたことか。そう、あのシワこそが、その人にしかない美しさに違いありません。

同時に不思議なのは、美しい人のシワは、記憶の中でどんどん消えていくってこと。おそらく、美しき女性たちは、シワを跳ね除ける肌と心の弾力があるのでしょう。シワはあるけど、刻まれない。そんな共通点があるのです。

目元のシワも法令線も何もかも、笑った証。そう前向きに捉えて、その分、跳ね返せるだけの肌と心のハリを養おう。そう思えればきっと、美容に対して肩の力が抜けるはずです。


結局(けっきょく、丁寧(ていねい)な暮(く)らしが美人(びじん)をつくる。 今日も「綺麗(きれい)」を、ひとつ。

結局(けっきょく、丁寧(ていねい)な暮(く)らしが美人(びじん)をつくる。今日も「綺麗(きれい)」を、ひとつ。

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松本千登世『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる』