1. 松本千登世の『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる(最終回)』 ‟本物の価値を知る人に本物の美しさが宿る”

2018.10.04

松本千登世の『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる(最終回)』 ‟本物の価値を知る人に本物の美しさが宿る”

美容ジャーナリスト・エディターとしてVOCEでも出演、取材、編集、執筆と活躍中の松本千登世さん。その美しさと知性と気品が溢れる松本千登世さんのファンは美容業界だけにとどまらない。こちらの美容エッセイ『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる。』(講談社)から、ぜひ今日も、「綺麗」を、ひとつ、手に入れてください。

松本千登世の『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる(最終回)』 ‟本物の価値を知る人に本物の美しさが宿る”

本物の価値を知る人に本物の美しさが宿る

Image title

ご当地スーパー研究家として活躍中の友人、菅原佳己さんとの会話。「適正価格ってあるよね」と、牛乳を例に挙げ、私たちはもっとお金を払うべきだと彼女は言いました。

安さを追求する消費者心理は理解できるけれど、酪農家たちの大変さに思いを巡らせたら、安すぎると気付くはず。それこそが、これからずっと国産の牛乳をおいしく、安心・安全に飲むために、今私たちがすべきことなんじゃないか……。

目から鱗が落ちる思いでした。健康な牛を育てるために、厳しい自然の中で、来る日も来る日も餌をやり、掃除をし、愛情を注ぐ。そして乳搾り……。聞けば、生まれた子牛が乳を出すまでに要する期間はなんと2年。想像をはるかに超える苦労があって初めて、私たちは牛乳という恵みを享受できるのだと改めて思い知りました。

「作り手の顔」や「トレーサビリティ」を求めながら、一方で1円でも安く手に入れたがる。この「矛盾」に気づき、無意識だった自分を戒めなくちゃ。

何気なくこの話をしたら、ある女性がひと言。「そう思える人のほうが、牛乳をおいしく感じるよね。栄養価だって変わってくると思う。長い目で見たら、1円をケチるよりそのほうが断然『得』なんじゃないかな。価値が高まる気がするの」。

モノでなく、その裏にあるコトやヒトにまで思いが及ぶ人でありたいと改めて思いました。モノの価値は使い手が決めるもの、自分自身が決めるものなのだから。

印象が「崩れない」とは、肌が「美しく崩れる」こと

Image title

今日はプロにメイクしてもらう日。だから、すっぴんで行っちゃおう。UVケア効果のあるCCクリームをささっと塗っただけで、夏の名残が色濃い日中を過ごし、メイクルームへ。

「肌、いい感じですね、皮脂がほどよくブレンドされて艶になってる。このまま生かしましょう」。

えっ!? 何も塗っていないに等しいんだけど、と気にする私に、でも、松本さんらしくて私は好きですよ、と彼女は言ってくれました。

この日撮影するのは、恥ずかしながら私のプロフィール写真。作り込むと私の個性が消されるということだったのでしょうか?

私たちはファンデ選びに欠かせない条件に「崩れない」を挙げるけれど、それを追求するほどに人間らしい肌から遠のき、かえって崩れを目立たせることがあります。

印象が崩れないとは、「美しく崩れる」肌が作るもの。心地よく呼吸をして、時間とともに温度や湿度や息吹が見える。そんな肌がじつはその人らしくて美しい……。そう気づかされました。自分も周りも好きになれる肌はきっと、人間臭さが透ける肌に違いないのです。

寿司屋に連れて行きたい女の条件

Image title

「寿司屋に連れていきたいと思わせる女性がいいなあ」。あるクリエイターが、理想の女性について語ったときの言葉です。

その人は、上質な素材の洋服を纏い、香水じゃないいい香りがするだろう。ナチュラルなメイクで、髪をすっきりとまとめているだろう。相手の自分とも店のご主人とも、笑顔とともに会話が弾むだろう。美味しそうに食べ、幸せな笑顔をしているだろう……。

品格と清潔感があり、知的で健やか。大人の女性はかくあるべき。それを言葉にされた気がして、なるほどと納得させられたのです。

何もかも待てなくなった私たち

Image title

アマゾンの「アマゾン・プライム・エアー」もドミノ・ピザの「ドミコプター」も。いったい、どこまで便利になるのでしょう? それが叶うほどに、私たちはもっと「待てなくなる」と思いました。

今食べたいと思えば、コンビニエンスストアに駆け込めばいい。今話したいと思えば、携帯電話が相手を捕まえてくれる。それが当たり前になった途端、欲しい洋服は明日まで待てなくてインターネットでクリックし、LINEの返事がすぐに来ないとイライラする……といった具合に。知らず知らずのうちに私たちは、何もかも待てなくなりました。

そんなとき、たまたま見かけたトーク番組で、ある精神科医が「現代の若者たちは待てなくなっている」と語っていました。

わかりやすいのが、恋愛。手紙で思いを伝えていた時代には、届くのにも返ってくるのにも時間がかかったもの。その間、人はあれこれ想像を巡らせます。思いが叶うと信じ込ませたり、そうかと思えば、最悪を想定して覚悟を決めたり。いや、何かの手違いで手紙がまだ手元に届いていないのかも、忙しくてまだ封を開けていないのかも……。脳と心をフル回転させて、相手の気持ちを慮り、自分の気持ちと寄り添うのです。

ところが、メールはスピーディな分、機微がない。たった5分10分返信がないだけで不安になり、とっとと希望を捨て、「はい、次」。想像力を養う時間を与えてくれない……。つまり、そういうこと。人は、やきもきしている間に熟すのに。心の振れ幅がそのまま深みに繋がるのに。この時間がいい女を育むのに。

美容においても、じつは「待てる女」がいちばん美しくなれると聞きます。化粧品は、効くと信じて希望を持って、毎日毎日続ける人に、いちばん早く変化が訪れる。

それに対して、すぐに結果を求めようとする「待てない女」は、結果が現れないのを化粧品のせいにして「はい、次」「はい、次」「はい、次」……。だからいつまでたっても効かない。

すべてにおいて、待てる女を目指したいと思います。待つ間に女は熟す、そう思って、いつもよりほんの少しだけ、気を長く持ってみませんか?


結局(けっきょく、丁寧(ていねい)な暮(く)らしが美人(びじん)をつくる。 今日も「綺麗(きれい)」を、ひとつ。

結局(けっきょく、丁寧(ていねい)な暮(く)らしが美人(びじん)をつくる。今日も「綺麗(きれい)」を、ひとつ。

【バックナンバーはこちら】

Image title

松本千登世『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる』