連載 VOCE特別インタビュー

50代以上の女性たちが教えてくれる、「若く見えるね」より「あなたに似合うね」の価値

公開日:2021.12.22

50代以上の女性たちが教えてくれる、「若く見えるね」より「あなたに似合うね」の価値

年齢を重ねれば当然のようにシワもシミも増える。ボディラインだって変わっていく。でもそれって、本当に「ダメなこと」なのだろうか? 若い頃とは違う変化が現れただけで、女性として、人としての価値や尊厳は変わらないはず。『暮しの手帖』の人気連載をまとめた、写真集『ワンピースのおんな』は、そんなことを教えてくれる一冊だ。著者であり写真家の宇壽山貴久子さんに、本に込めた思いを聞く。

50代以上の女性たちが教えてくれる、「若く見えるね」より「あなたに似合うね」の価値

年齢を重ねれば当然のようにシワもシミも増える。ボディラインだって変わっていく。でもそれって、本当に「ダメなこと」なのだろうか? 若い頃とは違う変化が現れただけで、女性として、人としての価値や尊厳は変わらないはず。『暮しの手帖』の人気連載をまとめた、写真集『ワンピースのおんな』は、そんなことを教えてくれる一冊だ。著者であり写真家の宇壽山貴久子さんに、本に込めた思いを聞く。

【お話をうかがったのは……】

宇壽山 貴久子(うすやま・きくこ)さん
写真家。宮城県出身。早稲田大学卒業後に渡米し、Fashion Institute of Technologyで写真を学ぶ。2002年「犬道場」で写真新世紀奨励賞。雑誌や広告などで活動しながら様々な作品を制作発表している。主な作品に「SAME TIME NEXT YEAR」(2019)など。

「今、一番お気に入りのワンピースを着てきてください」

宇壽山さんの取材は、お決まりの一言からスタートする。被写体となるのは、住む国も職業も違う女性たち。もちろん歩んできた人生もバラバラだ。彼女たちの共通点は「50歳以上であること」「自分が一番好きなワンピースを着ていること」、このふたつだけ。思い思いのワンピースに身を包んだ彼女たちは一人ひとりが驚くほどに違っていて、とても個性的に映る。

「ワンピースはもちろん、小物も全て撮影した女性たちの私物。ヘアメイクもいなくて、全部自分でやってくださいという取材スタイルなんです。本の表紙を飾るエレン・バーケンブリットさんは着ているシルクのワンピースが実は紫と紺のリバーシブルで、レースタイツを合わせた着こなしがすごく格好いいですよね。画家なので、本来こだわりが強い方だと思うんですけど、旦那さんからのサプライズプレゼントだったというワンピースを“自分に似合う一着”に選ぶのも素敵だなと思って」

宇壽山さんの話を聞いていて、50歳以上の女性が選ぶ“自分に似合う一着”の基準とはなんだろう? とふと思う。紫のシルクのワンピースをサラリと着こなすエレンさんもそうだし、この本ではボディラインにフィットした一着を選ぶ女性たちもたくさんいるからだ。

「黒いシフォンのエンパイアドレス」ペナイン・ハートさん(51歳)
ショップオーナー/ワシントンDC出身/ニューヨーク在住/未婚
一枚で外に飛び出すことができるから、夏はワンピースだけで過ごすと言っても過言ではない。アンティークとアートに囲まれて、感性を大切にして生きていくこと。それが私の選んだライフスタイル。

「もちろん、年齢と共に変化してきた体型を認識したうえで、みなさん選んでいると思います。でも “隠す”ことが一番じゃなくて、色、柄、形、着心地が自分に合っているかどうか。そういうことを重視する方が多くて。黒のエンパイアドレスを着た51歳のペナイン・ハートさんもそう。少しふくよかな体型の方ですが、ドレスが丸みを帯びたボディラインによく似合っていた。日本でこういった着こなしをできる方は、まだ少ないかもしれません」

そもそも「ワンピースのおんな」を撮り始めたきっかけは、ワンピースを着ている女性を見るのが好きだったから。と同時に、年齢を重ねた女性は、社会からその存在や価値を軽視されがちなのでは、というわだかまりを抱えていたから、と宇壽山さんは教えてくれる。街中を歩く素敵な歳上の女性を見るにつれ、彼女たちを撮ることで何か答えが見つかるのでは、と『暮しの手帖』で連載をスタート。約10年が経過した。

「チェックのコクーンワンピース」岡本敬子さん(52歳)
服飾ディレクター/東京出身/既婚
赤いものが着たいと思っていたときに出会った。
つややかで堂々とした肌の女性を海外で見て、夏には肌を焼くようになった。
春先から綿密に段階を追って、真夏には完璧になるように仕上げる。
それに合わせて、服も、アクセサリーもかえることを楽しんでいる。

「連載の途中でアメリカから日本に拠点を移したのですが、時代の変化よりも、日本とアメリカの女性の違いをこの連載で知ることになったと言いますか。アメリカ、主にニューヨーク周辺の女性たちは、自分が魅力的に見えるポーズをよく理解していて、カメラを向けると躊躇せずポージングしてくれる。片や日本の女性たちは、普段自分の魅力を意識することが少ないせいか、ポーズの指示をさせていただくことが多かったです。もちろん“無意識の美”も素敵ですけど、自己演出というか、自分を“見せる”ことをもっと楽しんでもいいはずで。気づけていないがために自分だけの魅力が埋もれてしまうのは、勿体ないことだなと感じました」

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