
奇抜なファッションセンスとエキセントリックな言動で知られる歌姫、レディ・ガガ。そんな彼女のハートを射止めたのは、イケメンだけど特に個性際立つタイプとは言えない、普通の俳優、テイラー・キニーだった。今年のバレンタイン・デーに、彼からプロポーズされたことをインスタグラムで報告したとき、意外にも、その内容は至極シンプル。テイラーから贈られたハート型のダイヤのリングをはめて彼と手を繋いでいる、ガガの手のアップの画像と短いコメントがUPされただけ。それだけでも、彼女の心からハッピーな様子は伝わってきた。学生時代からストリップのバイトをしてまで名声に焦がれて来た野心家ガガを、ひとりの男性に恋して「普通の結婚がしたい」と願う可愛いオンナに変えてしまった魔法は、次のフレーズに隠されている。
ベッドで横に寝ている相手が、あなたを自分が女神になったような気持ちにしてくれていないのなら。——あなたが本当に求めていて必要としているのは何なのか、よく考えてみるべきね。
“If you’re laying in bed next to someone who really doesn’t make you feel like the goddess that you are, you need to rediscover what it is that you truly want and need.”
生肉ドレスを筆頭に、ありとあらゆるヘンテコリンな衣装やヘアメイクで、私たちをあっと言わせて来たガガ様。そんな彼女からは、「私を見て!」という、痛い程の強烈な自意識が感じられて、正直、今まではちょっと苦手だった。ちなみに婚約者のテイラーに出会うきっかけとなったガガのPV撮影のときも、ガガは頭に髪の毛が一本もないツルツル頭(!)で、身体にはコルクを巻いている格好だったとか。そんなガガが恋に落ちてから、プライベートでの服装が一変する。どんどん女らしい自分を引き立たせるような、美しく洗練されたファッションになって行くのだ。。それはもちろん、キャリアでも『ボーン・ディス・ウェイ』の大成功を納めて、以前より必死に自分をアピールしなくてもよくなったというのもあるだろうけれど。愛するテイラーに素のままで受け入れられて、女性としても自信が持てるようになったというのが、いちばんの影響のように思う。
テイラーはあるインタビューで、ガガのことをこう評している。「ガガはいつも側にいて、自分たちのことや仕事のことを、お互いに信じられる存在なんだ。僕は彼女のすること…彼女の仕事や音楽、それに彼女のチャリティ活動に惚れこんでいる。彼女は多くの人をインスパイアする人だよ。そう、この僕を含めてね」。好きな男性がこんな風に自分をリスペクトしてくれるなんて、女として最高の幸せ! だからこそガガは、「彼にとって自分は女神である」という喜びに包まれて、テイラーの前では歌姫の鎧を外し、「ステファニー」という本名の自分に戻る。
ひとは恋したとき、恋する相手の目というフィルターを通して、自分について改めて気づかされる。例えば自分で密かに自慢に思っていたパーツをホメられて自信を深めたりとか、逆に、思いもよらないような点を相手は魅力的に感じていて、驚かされたりとか。それはもちろん、長所だけでなく、欠点にも言えること。——そしてそれは。他の人には決して見せない素顔や一面を恋する相手にだけは見せて、深く関わるからこそ起こること、なんだと思う。恋していると、その相手にばかり視線が注がれるから、そのひとのいいところも悪いところも、拡大鏡で引き延ばされるように浮き彫りになってしまうんだよね。
もし、ベッドを共にしている相手が、あなたの長所にたくさん気づかせてくれて、「私って最高!」、そんな気分にさせてくれているなら。その彼は、あなたのことを、本当によく見てくれている=恋しているサイン。あなたの代わりにあなたのいいところをたくさんみつけてくれるなんて、最高の相棒に間違いないから、手放しちゃダメ。でももし、そうではなくて、会うたびあなたを批判したり、自信を失くさせられる相手なのだとしたら……。それは決してあなたが完璧じゃないからなんかじゃなくて、彼にあなたの長所をみつける気なんて、ないからなのかも。
だからその相手と一緒に居ると自分のことをより好きになれるかどうかって、たぶんいちばんわかりやすい、真実の恋のチェック項目と言えるのだ。
text:Moyuru Sakai photograph:AFLO
Edited by さかい もゆる
公開日:2015.05.11