連載 VOCE特別インタビュー

スポーツ界の“メイクはタブー”という不自由さ。「強くなりたい」と「キレイになりたい」は同居していい

公開日:2022.04.27

スポーツ界の“メイクはタブー”という不自由さ。「強くなりたい」と「キレイになりたい」は同居していい

多くの女性にとって身近な存在の「メイク」。だがスポーツ界やアスリートの間では、少々事情が異なるようだ。メイクが一体どのように捉えられ、どんな問題を抱えているのか。スポーツ界の課題に立ち向かうひとりの女性に、現状と想いを聞く。

スポーツ界の“メイクはタブー”という不自由さ。「強くなりたい」と「キレイになりたい」は同居していい

多くの女性にとって身近な存在の「メイク」。だがスポーツ界やアスリートの間では、少々事情が異なるようだ。メイクが一体どのように捉えられ、どんな問題を抱えているのか。スポーツ界の課題に立ち向かうひとりの女性に、現状と想いを聞く。

お話をうかがったのは……

スポーツ界の“メイクはタブー”という不自由さ。「強くなりたい」と「キレイになりたい」は同居していい
花田 真寿美(はなだ・ますみ)

アスリートビューティーアドバイザー®。現役アスリートを中心に、引退後のアスリートや学生アスリート、スポーツを楽しむ多くの方に向けて、粧い(よそおい)と内面の両方を磨く「美」をテーマに、女性が自信をもって目標を達成するためのプログラムをプロデュース。学生時代は、バドミントンでインカレ出場。Precious one代表。

「強くなりたい」は言えても
「キレイになりたい」とは言えない

北京2022冬季オリンピックの開催中、スポーツに特化したWebマガジン「REAL SPORTS」に掲載されたひとつの記事が大きな注目を集めた。アスリートのメイクに対する批判の声に、疑問を投げかける内容のものだ。執筆したのは、アスリートビューティーアドバイザーの花田真寿美さん。

「アスリートビューティーアドバイザー」という肩書きに、聞き馴染みのない人も多いかもしれない。それもそのはず、今回お話をうかがった花田さんがその第一人者だからだ。アスリートたちがメディア対応をする際のメイクアップや、メイクの基礎・メイク直しの指導を行うのがその主な役割。アスリートに対してこういった指導を行う背景には、日本のスポーツ界を取り巻く独自の風潮が関係しているという。

「学生時代からスポーツ一筋でやってきている方は、一般の女性と比べて“メイクと出会うタイミング”がなかなかありません。そもそも日本におけるスポーツの立ち位置は、“体育”という授業の延長線上にある。つまり、“教育”として捉えられがちなんです。
教育の場においては、メイクは風紀を乱すものという悪しきイメージすらありますよね。皆さんも経験があるかもしれませんが、学校の部活でちょっと髪の毛のおしゃれをしたり、軽くメイクをしているだけでも、集中していない、覚悟が足りない、と指導者や先輩から怒られてしまう。そんな伝統が脈々と受け継がれてしまっている現状もあって、スポーツに打ち込めば打ち込むほど、メイクと出会う機会が遠のいてしまうんです」

スポーツ界の“メイクはタブー”という不自由さ。「強くなりたい」と「キレイになりたい」は同居していい
女子アスリートにメイク指導を行う花田さん。(写真=花田さんインスタグラムより)

花田さんのもとに相談に来るアスリートは、競技では表彰台に上るほどの一流でも、「メイクは初心者すぎて何から始めたらいいかわからない」という人も多いという。カメラの前に立ち、世界中に自分の顔が配信される機会もある彼女たち。年頃になればニキビだってできる。過酷な練習環境で肌トラブルに悩まされることもある。「勝てればいい。そんなの気にするな」と言う方が不自然だろう。

「メイクをしてキレイになりたいと思うことは、ごくごく自然な欲求のはず。ですが、幼少期から注目されてきた選手は特に、メイクをした途端に“純朴さがなくなって残念だ”“メイクしてる暇があれば練習しろ”なんて言われてしまう。
プレーの内容よりも、メイクそのものを揶揄するような声が上がることも少なくありません。“周囲の目が怖くてキレイになりたいなんて言えない”と震える声で相談されたり、“メイク指導を受けていることは口外しないでほしい”とお願いされたこともあります」

「強くなりたい」「絶対に勝ちたい」とは声高に言えても、「キレイになりたい」という欲求は胸の内に押しとどめておかなければならない。そんな不自由な環境を変えたい、と花田さんは語る。

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