1. 【齋藤薫の美容自身2】今この混乱の中でもなお、美しい人とは、一体誰なのか?

斎藤薫の美容自身2

2020.05.13

【齋藤薫の美容自身2】今この混乱の中でもなお、美しい人とは、一体誰なのか?

【齋藤薫の美容自身2】今この混乱の中でもなお、美しい人とは、一体誰なのか?

人気連載「齋藤薫の美容自身 STAGE2」。今月のテーマは“今この混乱の中でもなお、美しい人とは、一体誰なのか?”。毎月第2水曜日更新。

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すっと立っているだけで美しい、でも力強い人がいる

 ジャンルを問わず、ほとんどすべてのコンサートや公演が“自粛のため”に中止になってしまう中、つつがなく、でも粛々と行われたのが、パリ・オペラ座バレエ団の公演だった。世界最古にして世界最高のバレエカンパニー、3年ぶりの来日とあって、バレエファンは祈るような気持ちで公演を待っていた。

 その会場で改めて思ったのは、観客に何やら妙に美人が多いということ。

 なぜだろうと考えたが、やはりこれ、バレエ経験者が多いからなのだろう。経験者ほどパリ・オペラ座へのこだわりが強いといわれることもあるけれど、むしろその人がバレエをやっていたかどうかは、佇まいで一目でわかるから。

 言うまでもなく彼女たちは姿勢が劇的によい。そして足の運びが美しい。いや、ただすっと立っているだけで美しい。凛としていて、何とも優雅。それこそ気配だけで経験者かどうかわかるくらい、佇まいそれ自体が美しいのである。

 加えて、痩せているけれど弱々しくない、まさに体幹がきちんとしている印象。そのせいか服の着方が違う。どんな服であれ、何だかすっきり見えるのは、肩とかウエストのくびれといった要所要所に服がぴたりとハマるからなのだ。

 でも逆に「観客に美人が多い」という印象に、“違和感”を持った人もいるかもしれない。なぜなら多くの人がマスクをしていたはずだから。そう、顔立ちの個性は主に口元で決まる。美人かどうかは目元より口元が決めるともいわれるが、少なくとも人の印象を瞬時に決めてしまうのは、輪郭も含めた顔の下半身。でも、そういう意味で饒舌な口元をマスクで隠しているからこそ、逆にその人の本質がにじみ出てくるのだ。

 はっきり言って、マスクをしてしまうとメイクも何もない。オシャレも何もない、少々不謹慎ながら、マスクが一番似合うのはやっぱり医者や看護師の白衣である。自己顕示欲の強いオシャレほどマスクが台無しにしてしまう。いやそもそも、風邪もひいていないのにマスクをする習慣がある人には、なるべくなら存在を隠しておきたいという心理が働いているはず。同じ顔を隠すのでも、サングラスでは逆に存在が際立ってしまうが、マスクは存在が消せる。スッピンだろうがジャージ姿だろうが、許される。つまり装いの主張が消えるからこそ、その人自身が逆に露呈するのだ。ちょうど、全員同じ制服を着ていると、存在感の差が明快になるように。まさしく佇まいの美しさや、さらにその奥にあるものの差がまざまざと伝わってくるのだ。

 結果、マスクをつけていても何だか目を引く人っている。マスクをつけていても美しさがにじみ出てくる人っている。そういう意味で、バレエ公演の観客には美しい人が目立っていたと言いたいのだ。そして同時に思ったのは、こういう不測の事態が起きた時には、美しさの基準もはっきり変わるということ。

 思えば、東日本大震災の時もそうだった。それまでのメイクだオシャレだといった、表面を覆う美しさの基準はどこかに吹っ飛んでいった。正直しっかりメイクすることも、きちんとオシャレすることも、後ろめたく思えたほど。時間とともに従来の美の仕組みが戻ってはきたが、あの時も一人一人が今までとはまったく違った意識を持ったはずだ。社会における自分の役割は何なのか? 自分には一体何ができるのか? それを真摯に考えたはず。自分の中で眠りがちだった正義感や使命感のようなものが目覚めるのを感じたはずだ。そしてこういうマインドにこそサスティナブルな美しさが宿るのだとみんな自覚したはずなのだ。

 だから今回も、また違った意味で価値観が変わり、美の基準も変わる気がする。極端な話に聞こえるかもしれないが、おそらくこれからもこういうことは度々あるのだろう。いや何があるかわからないと思っておくことが重要。脅かすわけではなく、非常事態はこれからも繰り返されるという見方がもはや一般的。だから今のうちにシミュレーションしておきたいのだ。テレワークが常識となり、イベントから会食まですべてなし、部屋で一人過ごす時間を強いられた時、あなたはどう過ごすのだろう。充実した生き方ができるのだろうかと。

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一人で上手に生きられない人は……

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