1. 大人気韓国ドラマ【愛の不時着】を、俳優【ヒョンビン】の名場面とともに徹底解説!【前編】

2020.08.01

大人気韓国ドラマ【愛の不時着】を、俳優【ヒョンビン】の名場面とともに徹底解説!【前編】

大人気韓国ドラマ【愛の不時着】を、俳優【ヒョンビン】の名場面とともに徹底解説!【前編】

令和年代の韓国ドラマブームを代表する『愛の不時着』。どハマりする人が続出している理由とは!? ヒョンビン演じる主人公の名場面を振り返りながら、3つのキーワードで紐解く。『愛の不時着』分析シリーズ、前編(1つ目のキーワード)をお届け!

『冬ソナ』以来の空前の韓ドラブームを牽引する『愛の不時着』

大人気韓国ドラマ【愛の不時着】を、俳優【ヒョンビン】の名場面とともに徹底解説!【前編】

韓国の財閥のお嬢様で自身のブランドのCEOでもあるセレブリティ、ユン・セリが、パラグライダーで国境を越え北朝鮮に「不時着」し、ヒョンビン演じる北朝鮮兵士リ・ジョンヒョクと、国境を超えた恋におちる--というぶっ飛び設定ながら、見ているうちに「そんなつっこみどーでもいい!」と思えるほどドハマりする人が続出している。

その理由とは、一体なんなのか? ジョンヒョクはなぜあんなに素敵に見えるのか? 二人の恋はなぜあんなに盛り上がるのか? そしてたどり着いた結末が、なんであんなに幸福感に満ちているのか? 作品をじーっと見つめてみると、私達の「現実の恋愛」に決定的に欠けている、3つのキーワードが見えてくる。今回はその1つめ、「ステレオタイプじゃない男女の役割」である。

『愛の不時着』を紐解くキーワード①:
ステレオタイプではない男女の役割

VOCE大人気韓国ドラマ【愛の不時着】を、俳優【ヒョンビン】の名場面とともに徹底解説!【前編】

『愛の不時着』が『冬ソナ』に通じる多くの設定をなぞっていることは、今やよく知られた話だ。『冬ソナ』でヨン様演じるチュンサン(ミニョン)がピアノを弾いていたように、リ・ジョンヒョクも北朝鮮の軍人でありながら、スイスに音楽留学するほどのピアノの才能の持ち主である。並木道での自転車二人乗りや、悪天候で小学校に閉じ込められる展開、小雪降るソウルの町で再会する場面など、古くからの韓流ファンなら「おっ!」となる場面も多い。

だがジョンヒョクの魅力はそうした「ベタさ」を押さえながらも、そのあり方、価値観として、確実に2010年代後半(つまり韓国における#MeToo時代)を押さえていることである。不時着したセリを致し方なく家に連れ帰る第2話では、その宣言であるかのように、セリに手作りの手打ちククス(うどん)を振る舞う。30代半ばの男性が、クラシックかつ場所取りすぎのククスマシーンを持っていることにまず驚くが、それが「男の料理」じゃないことには更に驚く。ジョンヒョクはたどたどしく薄焼き卵焼いて彩りの唐辛子の薄切りまで添えるのだ。

いやいやそれは、必ずしも物資が潤沢とは言えない北朝鮮の田舎町が舞台だから……と思った人も、舞台をソウルに移した物語の後半、第14話で、入院中のセリが戻ってきた時にちゃんと食べられるよう、お惣菜を山程買い込み(セリの手が届く棚まで意識して詰め込み!)、手書きのレシピまで添えた場面を見れば、別の確信を抱くだろう。ジョンヒョクは、高いツールと材料にこだわるが片付け全然しない「オレって料理好きだからさ」みたいな男とはぜんぜん違う、筋金入りの「家事男子」なのである。ちなみに第4話ではコーヒーも入れてくれる、それもバカでかい竈(かまど)で生豆から炒ったコーヒー豆で。

女を守るが上には立たない、筋金入りの「家事男子」ジュンヒョク

大人気韓国ドラマ【愛の不時着】を、俳優【ヒョンビン】の名場面とともに徹底解説!【前編】

だがいくら「家事男子」であっても、ピンチの時にダチョウ倶楽部的に「どうぞどうぞ」と他人を前に押しやるヤツなら、勝手を承知で言わせてもらえれば、女子は完全にシラける。ジョンヒョクの絶妙さは「家事男子」でいながら「守ってくれる男」でもあることだ。

その最高潮--つまりセリとともに視聴者が「ジョンヒョク落ち」する瞬間は、セリの北朝鮮脱出計画がバーン!ドーン!ガッチャーン!という感じで大惨事とともに失敗する第6話のラストにやってくるのだが、私が敢えて推したいのは同じ話の中盤、二人で訪れたピョンヤンの夜道でセリを見失った後だ。彼女を見つけたジョンヒョクは、やや戸惑い気味にこう言う。「僕の目の届く範囲にいてくれ……安全だから」。なんだか微妙に盛り上がっちゃった自分をごまかすように「無敵のヒーローのつもり?」と聞き返すセリに、ジョンヒョクは「これまで負けた記憶はないから……」と「なんでここでそんな自信なさげ?」という風情で答えるのだ。2000年代の韓国ドラマによくいた「オレが必ずお前を守る、だからオレのそばから離れるな」とかマッチョに命令してくる感じが、ジョンヒョクには皆無なのである。

それでいて舞台をソウルに移した後半で、ドラマはふたりのそうした関係を完全に反転させる。つまり北朝鮮で守られる側だったセリは、ソウルではその金と権力で、さらに第13話では(第6話でジョンヒョクがしてくれたのと同じように)彼を狙う銃弾の前に身を投げだして瀕死の重傷を負いさえする。ドラマは意図的に、ジェンダーにまつわる既存の役割分担(男が女を守るべき)を壊しているのだ。

こうして見てゆくにつれ、視聴者はあることに気づき始めるに違いない。当初は「んなアホな!」と思っていた「北朝鮮」という舞台設定が、めちゃめちゃ効いていることを。実際、ドラマの中盤でふたりの恋を盛り上がる理由のほとんどは、「北朝鮮だから」なのである。次回にご紹介する、2つ目のキーワードは「愛を試す障害」である。

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文/渥美志保

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