
家族に仕事に向き合う毎日の中で、ベッキーさんが気づいたことや考えたこと、出会ったひとやもの、とにかく心を動かされたままに本音で綴ります。連載タイトルの【ベッキーの「新こきゅう」】は、マスク生活を余儀なくされ、呼吸について考えさせられる日々の中で、ベッキーさんが想いを込めて命名。写真の撮影も、ベッキーさん。「キムチを漬けました! 最近は他にも醤油麹、蜂蜜レモン、ニンニク麹……色々なものを作ってます」
私は世紀の大発見をした!!!
初めて会うその人は、どうやら人を見抜くチカラがあるらしく、初対面の私にイキナリ「そんなにメンタル弱くてネガティブなのに、よく芸能界でここまでやれてるよね」と言ってきた。あれ、おかしいな。“ベッキー”ってポジティブで明るく元気なキャラだと思うのにな。何を見てそれを判断したのだろう。その人の言葉が不思議だった。
14歳の時に『おはスタ』でデビューした私は、番組内で“英語を楽しく教えるお姉さん”のポジションを任された。持ち前の明るさを現場で褒められることが多く、とにかくお仕事はすべて元気にやってきた。「どんなに朝早くても元気でえらいね!」と褒められると「……ってことは疲れた顔を見せるのは悪いことなんだ! 常に元気でいよう!」と気づき、「いつも前向きで素晴らしい!」と言われたら「……ってことは、ネガティブな発言はない方がいいんだ!」と気づき、自分の中で心得の様なものがどんどん増えていった。まあでも、ある意味自分らしくいればいいだけだから、そんなに難しいことではなかった。
ところが30歳手前。お仕事のしすぎで心がパンクしてしまった。元気っ子な私にそんな日がやってくるとは想像もしておらず、びっくりもしたが、一時的なものだろうと思い、オフも月1日から週1日に増やし、なんとか乗り越えた。そんな日々を経て、その後はお仕事のブランクがあったり、出産にまつわるアップダウンも経験し、私はたくさんの“感情”を味わった。
冒頭の話に戻るが、初対面のその人にかけられた言葉が頭から離れず、私はここ最近ずっと考えていた。確かに私は、すごく凹みやすい。傷つきやすい。引きずりやすい。大人になればなるほど、その度合いが強くなってるような気がする。でも元気なベッキーも本当の私だし……。そして私は気づいた。世紀の大発見をしてしまったのだ!! 「あ……私、“ベッキー”を演じていたのかも」と。本当はネガティブ体質の私だが、憧れの女の子像を描き、それをベッキーに重ねてお仕事をしてきたのかも!と。私はこのノーベル賞級の大発見をすぐに夫に伝えた。「私、すごいこと気づいたんだ。たぶん……私……ベッキーを演じてきたのかもしれない」。すると一言「そんなのわかってるよ」。えーーーーーーー!? 他の身近な人に聞いてみても、みんな「いまさら、なに?」というテンションだった。どうやらテレビのベッキーとオフのベッキーは別人らしい。えぇーーーー、私、根っからの元気っ子だと思ったのになぁ。持ち前だと思っていた明るさは、嘘ってこと?? 世紀の大発見は一瞬にして砕け散った。
“ベッキーを演じてる”というワードに気付いてからは、少し罪悪感が生まれてしまった。でも、“演じる”と“嘘をつく”は違うと思う。私の中には、ちゃんと元気な私も居て、そこを引き延ばしたり、少し膨らませたものがベッキーなのだと思う。だから嘘をついて生きてきたわけではない。誰かを騙そうとしたわけではない。たぶん、私は少しベッキーに憧れを抱きながら生きてきた。あと、そもそもだが、人はみんな色々な自分を演じていると思う。仕事仲間の前では気丈なキャラ、ママ友の前では真面目なキャラ、親友の前ではふざけたキャラ。常にキャラが一貫してる人もいるが、多くの人はどこかしらでその場に適した自分を演じているのだと思う。だからそれは普通のこと。うん。普通のこと。
強い自分も、弱い自分も、他人の前でちょっとがんばっちゃう自分も、きっと全部自分。嘘は疲れるから選ばず、ある程度のプロ意識を大切に、また明日も頑張ろう。
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ベッキー/Becky
1984年生まれ。神奈川県出身。14歳で子ども向け番組『おはスタ』でデビュー。以降、バラエティやトーク番組、雑誌などで活躍。2019年にプロ野球指導者の片岡保幸さんと結婚し、2020年春に第一子、2021年春に第二子を出産。2021年には「第14回ペアレンティングアワード」でママ部門を受賞。洋服のデザインや絵画制作も行い、カラフルなアクリル画が印象的な「Becky art」も人気。YouTubeチャンネル「ベツキイ!!!!」も、絶好調配信中。また、自身初のスキンケアブランド「NaturaLUNA...
」のプロデュースもしており多方面に活躍の場を広げている。
撮影、イラスト、文/ベッキー 撮影(ポートレイト)/猪原悠
Edited by 渕 祐貴
公開日:2023.03.09