齋藤薫の美容自身stage2

「後ろ向きな女」をたちまち「前向きな女」に変える方法

2020.12.09

齋藤薫の美容自身

人気連載「齋藤薫の美容自身 STAGE2」。今月のテーマは“「後ろ向きな女」をたちまち「前向きな女」に変える方法”。毎月第2水曜日更新。

齋藤薫の美容自身

人気連載「齋藤薫の美容自身 STAGE2」。今月のテーマは“「後ろ向きな女」をたちまち「前向きな女」に変える方法”。毎月第2水曜日更新。

世の中が動き始める今こそ、分岐点。後ろ向きになるか、前向きになるか

 あなたは自分の頭の中を占めているものを、円グラフでざっくりでも描くことができるだろうか? 一時期流行った「脳内分析」のテストは、自分自身のタイプを知るためのもの。でも、ここで考えたいのは、そもそも私たちの頭の中は、どうあるべきなのかということなのだ。

 それも今はやはり落ち込む日、後ろ向きになる日が多いという声をよく聞く。とくにフリーの人や今の職場に満足していない人は、将来を悲観する日もあるのだろう。でもどうか皆同じだということを知ってほしい。先が見えない状況では当然のこと。ただ自粛生活ではほぼ全員が同じ環境にあり、人との比較もしなかったのに、物事が動き始めると、また人と比較し始める。わざわざ比較して自己否定をしがち。だから苦しいのだし、だから後ろ向きになる。世の中が動き始める今こそ、前向きな人と後ろ向きな人に、はっきりと二分されてしまうのだ。

 しかも、今まで見事に前向きに見えた人が、一転後ろ向きになるほど、価値観がひっくり返った。そういう傾向がとくに芸能人などに見られるのも、喝采を浴びた経験がある人ほど、自分が社会に必要とされているのかどうかを不安に思い、強迫観念に苛まれるからなんだろう。責任感が強く、プライドも高い人ほど、今後ろ向きになりがちなのだ。

 逆に言えばそのくらい簡単に心の向きは切り替わる。小さな挫折でアッという間に180度切り替わるものだからこそ、何としても頭の中からネガティブを追い出す術を考えておきたいのだ。

 現代人における頭の中の思考は、仕事、家族、趣味、人間関係……ざっくりとこの4つ。そして、この4分類がほぼ均等に割り当てられていれば、ストレスはあまり溜まらないと言われる。つまり全体を100としたら25%ずつ。もちろんそんなにうまく4等分できるはずもないが、人間の脳には一度に一定量以上は思考が入らないため、何か心配事があると一つのことで文字通り頭の中が一杯となり、激しい偏りが出てくる。考えるべきことが沢山ありすぎると、混乱し、イライラし、脳が疲弊すると同時に自分を見失う。だから思考の整理をすべきなのだ。穏やかな整った心に戻り、後ろ向きを前向きに戻すために。

 驚いたことに、浮かんでは消え、浮かんでは消える断片的な思考の数は、1日5万個とも10万個とも、またそれ以上であるともいわれる。確かに、ずっと頭を離れず一日何度も浮かんでくる思考もあれば、一瞬で消えていく思考もある。あれ、昨日の件はどうしただろう。やだなぁ来週の打ち合わせ。彼女はどうしてあんなに横柄なのかしら。あ、買い物に行かなきゃ。でも、昨日の件どうしただろう……そんなふうに、何の脈絡もなくひどく断片的な思考が浮かんでは消え、浮かんでは消えしているのだ、一日中。しかも10万個の8割がたは、無駄な思考だといわれる。つまり、今考えなくても全然いいこと。心に引っかかった昔のことを繰り返し思い出してみたり、ちょっと不安に思う先のことをわざわざ引っ張り出しては思い悩んでみたり、そんな思考などハッキリ言って無駄。今考えなくていいことで頭を一杯にしているのが私たち人間なのだ。本当は「たった今」「今のこと」だけを考えていればいいのに。

 例えば午前中に仕事でミスをして、一日そのことに囚われ続ける日は少なくないはずだが、今するべきは、むしろそれを挽回するために「たった今何をしたらいいか」を考えること。悩むことではなく、考えること。午前中起きた失敗はもう過去のことなのに、それをくよくよ悩む心が人を苦しめている。だから「今」に思考を集中させるのが、人生をうまく進める絶対のコツなのである。

心の筋肉を鍛えることで、自分を苦しませる思考を排除できる

 じゃあ、どうしたらそれができるのか。ちゃんと方法があった。実は今、アップルやGoogleなど先進的な企業ほど、社員に対し就業時間に行うようにと推奨し始めたのが“マインドフルネス”。とても簡単な呼吸法だが、実はこれこそが「たった今」に集中するためのトレーニングなのだ。

 ただ背筋を伸ばして、両手を両膝の上に手のひらを上に向けて置き、目を閉じてゆっくりと鼻から約3秒間息を吸い、数秒止めて、またその息を約3秒かけてゆっくりと吐いていく。たったそれだけ。それを何度か繰り返すだけなのだが、重要なのは呼吸の仕方ではなく、その呼吸を意識すること。鼻から入ってくる空気の冷たさを感じ、出ていく息の生温さを感じること。それができたら、頭の中にある邪念を鼻から呼吸とともに外に出していくという意識を持つ。それが頭の中の整理となり心の鍛錬となるのだ。

 最初は集中できないはずだ。さまざまな思考が出ては消え、まわりの音も気になるのが普通。でも繰り返すうち、だんだん呼吸に集中できてくる。その分だけ無駄な思考、邪念を排除できる。苦しみの種が生まれなくなるのだ。

 実は私自身、昔から超朝型を続けているが、そのきっかけは夜に余計なことばかりを考えがちだったから。日中は前向きなのに、夜は後ろ向きになる。それに自ら気づいたから、夜はできるだけ早く寝て、自分に後ろ向きになる時間を与えず、その分だけ早く起きて、考える時間を朝に移動させたのである。それも「夜、書いた手紙は朝、読み直すまでは投函してはいけない」といわれるように、夜は気持ちが負になるから。夜は心がどんどん閉じていくが、朝は逆に開いていく。同じことも朝考えると、非常にポジティブな思考ができるからなのだ。

 ともかく30代の頃、何だか知らないが、いつも不安で、いつも後悔がたくさんあって、いつもくよくよしていた時期がある。自分はこんな性格だっただろうかと、ふと客観的に考えてみたとき、これは自分にネガティブになる時間を与えてしまう自分自身がいけないのだと気づいたのだ。だからまず、夜の入浴をやめた。夜、バスタブに体を沈めると条件反射のように余計なことをモヤモヤ考え出すもので、きっとその時間がいけないのだと確信し、夜はさっさと寝て、朝早く起きて入浴したら、気持ちが見事に前を向いた。なるほどこれなのだと気づいて、さらにどんな瞬間にも、自分に悩む時間と猶予を与えない生活を始めたのだ。

 一番怖いのはベッドの中で眠れなくなること。そこでのマイナス思考は半端じゃない。恋愛中か、もしくは翌日によっぽどいいことが待っていない限り、闇を見つめて悪いことばっかり引っ張り出してはわざわざ悩む。だから夜すぐに眠りに入るためにも早起きし、ネガティブな自分を追い出して行ったのだ。

 うっかり悪い思考が生まれたら、さっさと自分を別の場所に持っていく。例えば「ネイルを塗る」みたいな集中力を要する行為へ切り替える。実際イライラしてるときのネイル塗りは、心を整えてくれるはずで、そういうふうに自ら悪い思考を追い出す術を知っておくことが大切。つまりネイル塗りも実はマインドフルネスなのだ。写経などと一緒で、心の筋肉を鍛えるトレーニングなのである。

 実際に“体の筋肉”がつくと、それだけでポジティブになれるのとも無関係ではなさそう、そう思えるほど体を鍛えるように心を鍛える。今こそ、それをやらなければ! これから本当にどんな世の中になるかわからない。いいことばかりではないだろう。また同じことが繰り返されるかもしれない。そのために準備をしておきたいのだ。今のうちに。

 過去への後悔、未来への不安、それはいらない思考。それを追い出すだけで、脳の疲れが取れ、ゆとりある精神が戻ってくる。そして前向きなキレイな思考が頭の中にさらさらと入ってくる。すると頭が冴え、健康になり、心が整い、幸福感に満たされる。そして美しくなって痩せる。悲観的になりようがなくなる。今まさに幸せと不幸せの分かれ道。それこそ新しい服を一着買った喜びだけで、後悔も不安も吹き飛び、生きる望みが生まれるようなこと。ほんのちょっとの差で、これからの人生が変わる。精神と脳の浄化、今すぐ始めたいのだ。

それこそ新しい服を一着買った喜びで、後悔も不安も吹き飛び、 生きる望みが生まれるような。そういう脳の作り方を知ると人生が変わる。 前向きと後ろ向きの差は、ほんのちょっとの差なのだ

撮影/戸田嘉昭 スタイリング/細田宏美 構成/寺田奈巳

Edited by 中田 優子