連載 齋藤薫の美容自身stage2

“五感”の王者”視覚”の功罪――目をつぶれ。すると自分が見えてくる

公開日:2015.04.23

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

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“百聞は一見に如かず”も本当だが、“一見”が人の感性を鈍らせ、時に美容の足を引っぱるのだよという話をしよう。

ともかくキレイやセンスは、目で見ることでしか育たない。オシャレで美人な友だちや同僚を毎日毎日「ステキな人!」と思いながら見つめている人は、気づかぬうちにステキになる。逆に「あの人には負けたくない」と思いながら見つめる人も案外キレイになってしまうが、何も感じない人はいくら見ても効果はない。“感情ある目”こそ、キレイの母というわけ。

一方、鏡をよく見る人ほどキレイになるのは言うまでもないが、鏡には100のうち10の自分もうつらない。話す顔も笑う顔も怒る顔も、じつはまるでうつらない。鏡に自らうつしている顔がすべてだと思うと、せっかくのキレイが妙な方向へ偏っていく。“目に見えるものしか信じない”と、人はどんどんバランスが悪くなるんである。

そもそも視覚は五感の中でいちばん強い。どんなにいい匂いやいい味も、見た目に醜いと、心地よさや美味しさは半減する。嗅覚も味覚も触覚も聴覚も、視覚には結局のところ勝てないのだ。肌のお手入れの時、「目をつぶりなさい」と言われるのも、香りや感触をきちんと味わうため。視覚を閉ざすと、他の“四感”が逆に研ぎすまされるから。まして部屋がいつも散らかっている人は、必ず目を閉じよ。醜いものを見ながらでは、触感美容なんて効きやしない。部屋を片づけるか、目をつぶるか、それはお手入れ法の究極の選択なり。

しかし一方、視力が弱いと、キメや毛穴や小ジワを見落とす上に、遠目の鏡でしかうつらないくすみやたるみをぜったいに見られないから、「私ってキレイ」と錯覚しがち。そのほうが幸せかもしれないけれどネ。

いずれにしても、人と物をいっぱい見まくることと、あえて何も見ないこと。その両極の視覚づかいが大胆にできること……それはひょっとしたら最上級の美容と言えるのかもしれない。そして腹がたったら目をつぶろう。醜く怒る自分の顔を脳裏にうつして他人には見せず、なんてのも、じつは大切な美容なんである。

目を開けてるだけじゃダメ。視覚も仕事をしてこそ美しい

ばっちりとアイメイクして、パッチリと目を見開いているのに、大事なものを何も見ていない人の目を「あれはメイクじゃなく飾りつけ」と言ったアーティストがいる。他人のことも自分のことも、そして物の本質も、しっかりと見据える目は、それだけで美しいってこと。そういう目は閉じている時も、表情があるものよと彼は言った。

Edited by 齋藤 薫

公開日:2015.04.23

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