連載 齋藤薫の美容自身stage2

急いでやせたい女~何かを奪ってしまうそのエネルギー~

公開日:2015.04.23

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

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アメリカ人は、太りやすく、そして実際やせてはいないから、せっせとダイエットに励むが、日本人は大して太っていなくても、ダイエットに夢中になる。その理由を考えてみた。

もともと、食べものの心配がまったくない国ほど、ダイエット熱が高いのは当然として、食べものがいつでもどこでも手に入ってしまう国ほどダイエットも盛んという見方もできる。アメリカ人はファーストフードで太ったが、日本人は24時間営業のコンビニがポコポコできたから、未然のダイエットに励むのではないのか。しかしもうひとつ、理由があるとすればこれ。

じつはここへ来て、日本女性のダイエット熱が、わずかばかりダウンしていると言われる。もっともこれは“ダイエット特集号”が以前ほど売れなくなったという雑誌界の見方にすぎず、よく考えれば、あそこまで手を替え品を替えダイエット法を提案されたら、さすがのダイエットフリークもあきるし疲れてくるし疑い出して当たりまえ。もちろん、一方にダイエットピルで楽してやせる方法が現実味を帯びてきたことにも一因はあるが、もっと深読みすれば、日本女性の中に宿命的に宿っているダイエットへの焦りが、何かまったく別のものへの焦燥感に、のり移ったという見方もできないでもない。

たとえば今激しさを増している“ブランド買い”その直接の“引き金”は言うまでもなく、リサイクルショップや安売り店の急増。でも従来の“ブランド好き”以外の人までが“ブランド買い”に走るその背景には、“全員で何かひとつのテーマを追いかけなければいけない国民的強迫観念”みたいなものがあるような気がしてならないのだ。“今のブランド買い”には、“欲しい欲しい”よりも、持っていないと“まずいまずい”という気持ちのほうが色濃く見えている。つまり“こうありたい感”より“ねばならない感”のほうが強いのだ。日本の女性が作るブームはいつもそう、だからすぐ全国的ブームか出来あがるのではあるけれど、そのもっとも普遍的な形が、これまでは“やせなければマズイ感”であり、最近は“ブランドものを持っていないとマズイ感”に移った。とまあ、そういう話ではないかと思うわけである。

じゃあそれがいけないかと言えば、別にいけなくはない。問題なのは“焦り”である。こうありたい感”は、目標に向かって歩いていくことだから、いつの間にかそれなりの手続きを踏んでいる。いつかバーキンが欲しいと思う女心は“いつか”まではきちんと頑張ろうなんて、女を妙に生まじめにしてしまうものなのだ。でも“ねばならない感”は手続きなど踏む余裕を自分に与えず、とりあえず少々みっともなくてもいいから結果を出そうとさせるのだ。女がうっかり醜くなるのは、そういう瞬間。バーゲン会場ではどうやっても何をしても女が美しく見えないのはそのため。

焦燥感がダイエットからブランドに移ったのなら、むしろ今のほうがダイエットできれいになれる。焦りの集団心理がない分だけ、ダイエットも素直に効くし、なおかつダイエットする姿も、今のほうがずっと美しく見えることは確かである。

ダイエット話をすると太って見える?

数名の男たちの会話を聞いてたら、こんな話を耳にした。「化粧品の話はまだいいけどさ、ダイエットの話ばかりしている女たちって、それだけでデブでブスに見えるよな」ナヌー?でも正しいかもしれない。みんながやせたいと思ってる時、やせたい女は、ただやせたいだけの女に見えている、気をつけよう。

Edited by 齋藤 薫

公開日:2015.04.23

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