連載 齋藤薫の美容自身stage2

何のために泣く?~最低でも女は、2つの涙をもとう~

公開日:2015.04.23

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

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某人気タレントにまつわるお話。どこかのTV局が誇る大チャリティ企画に司会のひとりとして出演したそのタレント、番組内で次々に紹介される“障害のある人々の話”に、出演者全員が涙ぐんでいる場面で、ひとり“気丈”に涙を見せなかったという。あまりにも泣かないので、「心配になった」と出演者のひとりがたまたま漏らすのを聞いた。人を泣かすための企画ではないし、そこにいる芸能人がそろってさめざめと泣くのがパターン化している番組もどうかと思う。

でも、そういう演出くささが少ない場面で、ひとりだけ目をうるませもしない20歳前の人気者が、大人を言い知れぬ不安に陥らせたのは、わからぬではない。ただこの話にはまだ先がある。収録が終わった直後に「よく頑張ったね」の拍手を浴びると、彼女はいきなりワーッと泣き出すのだ。例の出演者は「番組中は泣かないと決めていたらしい。意外に冷たい子かと思ったけれど、そうじゃなくて安心した」と言った。でも何となく釈然としなかった。

涙には、ハッキリ2種類ある。他人のために流す涙と、自分だけのために流す涙。どちらも同じだけ流す人はいい。どちらも流さないという人もいるだろう。でも、人間どんどんデキあがっていくと、自分のためには泣かず、他人のためにばかり涙するようになる。もちろん若いうちは、そこまで行きつく道理がない。でも、逆は辛い。自分のためにしか涙が出なくなっているのは、まずいと思うのだ。

しかもこのタレントは“番組中は泣かないと決めていた”という。レコード大賞でもとった時、「泣かずに受賞曲を歌い切るぞ」と心に誓うのならわかる。でも、他人の“心を強く打つ話”は不意を突いてくるから、泣かないぞと頑張っても、涙をコントロールすることはできないはずなのだ。

“何のために泣くか?”そんなの勝手じゃない?というかもしれない。でも、そう滅多には女が泣かなくなり、とりわけ女が“嘘泣き”をしなくなってきた今、ひとつひとつの涙がその人の内面を浮き彫りにする場面も増えてきた。涙は本来あたたかいもの。だから心があたたまるのだが、自分のために流す涙より、他人のために流れ出す涙のほうが温度が高いのは確か。だからよけいに心があたたまることくらいは知っておきたいもの。

女は2つの涙をもとう。涙はやっぱり永遠に女のものなのだから。

最近あなたは、誰のために泣いたか?

いちばん最近泣いたのはいつ?それは誰のための涙だった?そんなふうに時々は自分の涙の用途を思い出してみる。思い出しても思い出しても“自分のため”ばかりに泣いていた人。あなたは、今、何歳だろう。20歳を過ぎたら、他人のためにも泣きたいね。

Edited by 齋藤 薫

公開日:2015.04.23

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