連載 齋藤薫の美容自身stage2

キレイの動体視力を鍛えよう!~あなたは忘れてる。人はつねに動いていること~

公開日:2015.04.23

人気連載「齋藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

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このところ、オリンピックだのサッカーのW杯だのと、国レベルでスポーツに沸いたからなのかもしれないが、今は“動いて美しい人の時代”なのだとつくづく思う。パラリンピックの開会式で踊る神田うのちゃんを見て、「あの感性があったら、ああいう暴言はくのも無理はない」なんて妙な納得の仕方をしていた人がいたけれど、確かに体の動きは、その人と100時間話をしてもわからない部分を一瞬で語ってしまうところがあるのだろう。

しかし、人前で体を動かす仕事の人は別として、ファッションセンスでも体型でも欧米人に負けないくらいのレベルになってきた日本人が、たったひとつだけ大負けしてしまうのは、やはりこの体の動きであるという。体型の進化に、体の動きの進化が間に合わなかったみたいな女性を、街でもけっこう見かけてしまう。

そもそも日本人の動きが何となくダサイのは、体をすっぽりおおって、心のうちも、体の動きで示しちゃいけない和服を着つづけてきたことのツケと言われる。その日本人が、日常生活で和服を脱いで、まだやっと60年。今ようやく鎧のような和服の呪縛が解け、まず手脚は長くなったが、動かない文化の名残は、私たちの体の中に、まだたっぷり埋まってるのだ。とは言え、今どきジッとして唱ってヒットした曲は「ひだまりの詩」くらい。日本人も完全に動き出し、動いてなおキレイじゃないとキレイと認めない。明らかにそんな時代の始まりを感じるのだ。じゃあ、そんな時代に際して、私たちはどんな美容をすべきなのか。

これはひとえに、自分が日常的にどう動く物体なのかを知ること。「あなたって、随分楽しそうに歩くわよね」と言われて初めて、ピョンピョンはねるように歩く自分に気づいた時。スキーではパラレルをしているつもりが、それはボーゲンだと言われた時。世の中で自分の体の動きほど信じられないものはないと思い知ったものだが、日頃目にしないものを、人はすぐ忘れる。でも、“知らぬが仏”じゃすまされない。体の動きが野暮ったいと、その人がキレイならキレイなほど、それが“頭の悪そうなキレイ”に見えてしまうからである。

“内面からにじみ出る美しさ”の正体は、すなわち体の動きだったのだ。『芸能人は人にいっぱい見られるから別人のようにキレイになる』と言われるのも、じつは人に見られるからじゃない。自分の体の動きを自分ですべて見られるからだけなんじゃないだろうか。自分をTVで見られないすべての女が今すぐしなきゃいけないのは、鏡を見ている自分じゃなく、歩き、走り、おじぎし、手をふり、お茶を飲み、ものを食べ、そして人と会話する、ドラマ1本分くらいの動く自分を、何とかして見ることだ。その時から、あなたの美容はイチイチ倍の効力をもつことになるだろう。

美容において何より何より大事なのはただ、見ることなり!

アメリカ映画界は今、美貌よりせりふのうまさより、体の動きの美しい女優の勝ちなんだとか。動体美容はもうひたすら、しゃれた動きを見るに尽きる。そして自分も同じように動く想像。美容にもイメージトレーニングが必要な時代がついに来てしまうのか……。

Edited by 齋藤 薫

公開日:2015.04.23

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