連載 齋藤薫の美容自身stage2

悔し涙の時代~悔しい時にしか泣かない女たちへ~

公開日:2015.04.23

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

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泣かない女が増えている。でも正しくは、悲しい時は泣かない、泣くのは悔しい時だけ……そういう女性が増えている。上司に何かを注意されると、すぐ泣くOLは相変わらず多いが、昔は悲しくて泣いたのが、今はひたすら悔しくて泣く。“部下の女の子をよく泣かせる”ので有名なある男性は、「悔し涙にもふたつあるよ」と言った。自分が許せなくて泣く女の子と、注意した相手が許せなくて泣く女の子の両方がいて、自分にはその区別がハッキリつく。泣いてる目が明らかに違うものと彼は言う。泣きながら自分をにらんでいる目は本当にコワイから、「もうやめとこ」と逃げ腰になるが、自分が許せなくて泣いている目を見ると、こういう涙はのばしてやらなきゃと思うとも言った。

自分が許せなくて泣く……じつはそれ、かなりエネルギーのいることで、簡単そうだがえらく難しい。並の人間には、なかなか出ない涙なんである。ずい分昔、確か中学生の頃、採点されてもどってきたテストの紙を、みんなの前でクチャクチャにしながら泣いた女生徒がいる。クラスのリーダー的存在、設定ができすぎだが彼女はバレー部のキャプテンもやっていた。あれだけ激しく悔し涙を流せる彼女を、私は自分とは人間の力量がぜんぜん違うと思ったもの。ひょっとしたら、つねにエキセントリックであった“中学生のバレー部”という舞台で、鍛えに鍛え抜かれた“負けん気”のせいかもしれない。

そこまで自分に闘志を燃やせるのは、“勝負”と隣り合わせなど特殊な環境にある人の特権。ある種のうらやましさを感じたものだった。今彼女はどうしているのだろう。うまく成長していけば、彼女は“うれし涙”という、よほどのラッキーか、よほどの人間でないと流せない涙を流せたはずだ。“うれし涙”など、今どき結婚式の花嫁ですら、流さない。大学に受かっても、就職が決まっても、流さない。人生において、“うれし涙”を流せる出来事など、そうそうは起こらないのだ。

だから、“うれし涙”を流せるくらいの人生を送ることは、人生のひとつのテーマ。そして、“悔し涙”を流せる人は、うまくのびていけば、やがて必ず“うれし涙”を流せる人なのだ。

あの負け知らずの柔ちゃんが銀メダルに終わった時、激しい悔し涙を流したが、それを機にこの人は急に大きくなった気がする。次のオリンピックではきっと世にも美しい“うれし涙”を流すのだろう。“悔し涙”流すなら、それを“うれし涙”を流せるくらいの成功につなげよう。上司をうらんでる場合じゃない。

悔し涙とうれし涙は紙一重

あんな涙が流せてうらやましい。生まれて初めてそう思ったのは、高校野球の敗者が、泣きながら甲子園の土を袋につめてる姿を見たとき。でも勝者は勝者で泣いている。悔し涙とうれし涙は、背中合わせだけど、紙一重。このコンビがある限り、勝っても負けてもいいのである。

Edited by 齋藤 薫

公開日:2015.04.23

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