連載 齋藤薫の美容自身stage2

恋も時々、手元が狂う~”恋する女は美しい”と頑なに思い続けるのはもうやめよう。今、眩しいのは濃いをしてない美しさ。~

公開日:2015.04.23

人気連載「齋藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

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“恋をすると女はみんなキレイになる”は本当だが、“恋をすると女はしばしば危なくなる”もまた事実。河村隆一クンの恋人の目が“恋をしすぎててコワイ”という話がいっとき話題になったけれども、あれに似た目を私たちは電車の中で時々目撃してしまう。電車の扉などにへばりつき、息をしてるかどうかが心配になるほど、二人して身じろぎなし。隣で人が死んでも気がつかないほど、お互いだけを見つめ続けて、瞬きなし。そんなカップルがむしろ最近増えていて、その女性のほうの目はだいたいイッてしまっている。恋も時々手元が狂い、女をキレイにしようとしすぎて、危ないカンジにしてしまうのだろう。そのカップルの隣で、二人を冷笑するでもなく無視するでもなく、恥ずかしそうに落ち着かない女性2人組がいた。彼女たちが妙にキレイに見えるのは何なのだろう。

20代そこそこで女がすり減ってるカンジの子が多いのはなんでなの?」「男と次々付き合いすぎたんじゃない?」「“ま、いいか、減るもんじゃなし……”ってあれ?」「でも、じつは減るらしい」「女が」「心も」。こんな会話を耳にした。節操なく男を渡り歩く女性は論外としても、いわゆる“恋多き女”を、うらやましく思う反面、気の毒になるのは、きっとすり減っているからなのだ。そういう意味で、この頃は新鮮なカンジのする女性を見ると、みんな“恋をしてない女性”に見えてしまう。今の恋は、忍んだり耐えたり抑えたりしない分だけ、すり減るのも早いのだろう。本人が気づかないうちに……。

最近、娘を嫁に出した私の伯父が涙声でこう言った。「○○クンが僕に言うんだよ。“娘を清らかなままで立派な女性にしたお父さんを尊敬します”って」。このカップルは一見そうには見えないが、今や死語と化した“清いお付き合い”のまま結婚、25歳の彼女は外見は派手だが、その歳まで純潔を保っていたことになる。私も、今の世の中にそういう種類の“女の意志”と、それに対する“男の尊敬”が残っていたことにジンと胸が熱くなった。“さあ、恋をいっぱいして、女を磨こう!!”とみんなを励ますことはたやすい。“SEXでやせよう!!”と明るく言っちゃうこともたやすい。でも今や誰もが、やれることは何でもやってキレイになろうとする時代。“今はひとまず恋をしてない女”の静かでバランスのとれた美しさや、“遊んでるふりしてても、結局親を裏切れない女性”の立派な美しさが、強烈に心を打つ。たぶん彼女たちは、“劇的”とも言える清潔感を放っているからなのだ。“恋をしてない女”がどこかくすんでいるとしたら、それは“恋をすればキレイになる”というルールのせい。そんなルールならもう要らない。

恋したからってキレイになれる保証なし

恋をしてない女が増えている。それでもキレイな人が増えている。恋をすると、目が固まり心がすり切れ、女の弾力がなくなったりもするからか。“恋すれば女はみんなキレイになる”はひょっとしたら単なる迷信。恋は変わりようがないのに、キレイだけが進化してしまったせいかもしれない。

Edited by 齋藤 薫

公開日:2015.04.23

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