連載 齋藤薫の美容自身stage2

あなたは”B面”をもっているのか?裏返せないキレイは、あまりに苦しい

公開日:2015.04.23

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

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B面、またはサイドB……ほんの10年前まで、音楽を聞くのはCDではなく、レコードかテープ。面が表と裏、両方あって、いわゆる“EP盤”で言えば、A面はみんなの知ってる表の曲。裏にひっくり返すと、みんなの知らない曲が入ってて、これを“B面”と呼んだのだ。でも何で今更そんな話を持ち出すのかといえば、TVで見かけたSIDE-Bというオビ番組に、妙に感動したからなのだ。

出演者は一般人。ごくふつうの、たとえば区役所の職員だったり、OLだったり……。ところがまったく別の分野では、言わば“その道の達人”だったりする。たとえば区役所勤めの女性が、ブーメラン投げの名人だったり、ふつうのOLが、玄人はだしの人形づかいだったりするみたいな。つまり、まっとうな職業をもっていながら、ふだんの姿からは想像もつかない“裏の顔”、B面をもっていることを、毎回淡々と紹介する番組だったのだ。

ハタと気づくのは、自分にはB面がないってこと。別に、何かの達人じゃなくても、周囲がウソーッ、意外!と驚くようなB面が自分にはないことを情けなく思ったのだ。

その番組に出てくる人は、なぜかみんなB面が“勝負師のギラギラした目”をしてて、A面に戻ると“非常に充たされた穏やかな目”をしてた。明らかに目が違った。それは、ただ単に仕事とオフがきっぱり分かれるとか、休日は思いっきり遊んで素に戻るとか、そういう単純なオン&オフの差ではないのだ。たとえば私も、休日はなるべく休日らしく遊ぶ主義だが、仕事の時は“ゆとりのない目”をしている分、休みの日は“気のぬけただらしない目”をしてたりする。B面でギラギラし、A面で充実しきって穏やかになる、その人たちの2つの目とは意味がまるで違うことを知ったのだ。

たぶんそれは、“オンとオフが循環しているか否か”の違い。オンとオフは、スイッチを入れて切る繰り返し。でもA面B面は、それぞれが立派なテーマをもち、きちんと完結する2つのストーリー。2つを行き来することで、人はつねに代謝し新鮮な呼吸ができるようになる。また、まったく効きどころの違う2つの成分の相乗効果のように、A面だけでもB面だけでも得られない、充実感と生命感が得られるのだ。

昔から、A面とB面をもつ人はいっぱいいた。渡辺淳一氏は元・医者だし、小椋佳氏は元・銀行マンだった。しかし彼らは“天才”なのだと、簡単に片づけていたことも確か。だが今は、A面B面両方をもつ人が、すぐそばにいたりする、そんな時代になったことを痛感したのである。

ミスコンの世界大会でも、他の国のミスたちには医者の卵とか弁護士とかが平気でいたりするのに、日本のミスは、せいぜいが女子大生。何だかとっても一面的。美しいことだけに偏ったら、将来困るじゃない?と以前から思ってた。

おそらく日本の女は、歴史的に“家にいるもの”と決めつけられていた分、A面をもつことさえ、欧米に比べずいぶんと遅れたせいなのだ。“女性の社会進出めざましく……”なんて言ったって、女が外で働くことは、ただのA面。「仕事のストレス」を訴える女性が多いのは、たぶんA面だけを延々とかけつづけるレコードみたいに、終わったら針を戻し、また針を戻しと戻すことだけに一生懸命だからじゃないのか。A面だけしかもっていないと、そのA面を愛せない。片方しか翼をもたない鳥のように、もがいてももがいても飛び立てない女になってしまうのだ。宇多田ヒカルって何だかスゴイと思ったのも、高校生のくせして作詩作曲歌唱で記録を作り、でも飛び級してさっさとコロンビア大学とかに入っちゃうかもしれないという、A面B面とも金ムクみたいな人生を早くも送っちゃってるから。“今”を今すぐ充実させたいなら、とにかくB面だ。

“B面”の暮らしをもってるかいないかは、靴のワードローブが知っている

さてあなたは、オシャレにおいてA面B面をもっているだろうか?たとえばわかりやすいのが、靴のワードローブ。ヒール高めのパンプスとかピンヒールのミュールとかはいっぱい持っているけれど、スニーカーやタッセルはゼロという人、これはちょっとまずい。また、フラットシューズばっかりの人も、少々危ない。

そもそも靴は、その人の趣味嗜好を語り、行動を物語る。だから靴のタイプの幅広さは、行動半径の広さや女としての奥行きなどまでを物語ってしまうのだ。お見合いで“お断り”した理由に、“男性の靴下が白かったこと”があげられたり、好きになった同僚の男性と初めて休日デートした時、会社にはいてくるのと同じ革靴をはいてきたのが、どーしても許せなかったなんて話を聞くにつけ、足もとが“人間の幅”みたいなものを理屈抜きにして示してしまう事実を痛感する。女の靴は、何がオンで何がオフで、また何がA 面で何がB面だかが、判断がつきにくく、ごまかしやすいだけ。ここで、持っている靴の顔を見直してほしい。じつは思い切り偏った女になってしまってはいないだろうか。

ともかく今、靴のB面を強化しよう。そうすると、自然に自ずと、生き方におけるB面が一緒についてくる。今まではいたことのない靴をはくと、別の場所を別のステップで、別の方向に歩いてみたいと思い出すのが人間だからである。生きることは歩くことだものね。

Edited by 齋藤 薫

公開日:2015.04.23

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