
人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。
確かに、人にははっきり“得な人”と“損な人”がいる。得する人はいつも得してて、損する人はいつも損をする。世の中やっぱり不公平なんである。でも、美人が得するとか、天に二物をもらった人は生まれつき得してるとか、そういう話じゃなく、同じような境遇に生きてても、何だか得しちゃう人っているもの。自分じゃとても損だと思う・・・・・・じゃあ特する方法を考えましょ!食事に行けば、いつもデザートが一品多いとか、月に一度は誰かしらから映画や観劇の切符をもらってしまうとか、大した実入りではないけれど、予期せぬ“もらいもん”とか“サービス”とかを受けてしまう女って、必ず身近にいるはずなのだ。ただ、チリも積もれば……で、そういう女性たちは結果いつも楽しそう。そういう得のない女にとっては、何か引っかかる、不可解な存在でもあるはずだ。さて、彼女たちはどこがどう違うのか? 答えは簡単。得する人は“楽しそう”と言ったけど、彼女たちは得したから楽しいんじゃなく、楽しそうだから得をするのである。
初めて行ったレストランで、デザートが一品増えて出てきちゃうのは、そこの料理を楽しそうに食べていて「お下げします」とやってきたスタッフの顔を見て「あー、おいしかったア」とするりと言えちゃう人。日頃からの“軽ーい楽しげ”感があるから、お店の人をいい気持ちにさせちゃうだけ。また、いろんなタダ券をしょっちゅうもらうのだって“顔見知り”に毛の生えた程度の、友人までいかない知り合いが山ほどいるから、数打ちゃ当たる的に券が集まってくるだけのこと。
しかし“友人未満、顔見知り以上”という微妙な知り合いを作るのは、わりに難しく、損な女はこれができない。これもやっぱり“軽ーい楽しげ”感っていうのが決め手であり、初対面から“です”“ます”じゃなく、“だよね”系の語尾が使えちゃうのに、図々しく非常識に見えない人なつこさがないと、そういう中途半端な知り合いはぜったい増えていかないのである。それに、得な女は相手が誰であっても、つねに同じスタンス、へーこらもしなければエラそうにもせず、ひたすらいつも楽しそう。つまり誰といつどこで会っても“お友達モード”だから“ちょっとだけ友達”が無限大に広がっていくのである。
こういう女性は、結果として男にもモテるが、男にばかりモテる偏った匂いはまるでなく、むしろそれ以上に女にモテる。つまり“人にモテる女”なのだ。 自分にはもともといういう資質がないと、ハナから諦めてしまう人は多いはず。しかし“図々しくなるギリギリ手前の人なつこさ”は無理でも、いつもいつも楽しそうでいることはできるはず。楽しそうな雰囲気を作るのだ。
ちなみに人それぞれが醸し出す“雰囲気”には、必ず理由がある。真面目そうな雰囲気を持つ人は、必ず姿勢が異様にいいとか、優雅な雰囲気を持つ人は必ず腕から指先までの動きがなめらかだとか、みんな体のどこかに理由があるのだ。で、楽しそうな雰囲気を作るのは、他でもない“口角”。笑わないまでも、口角をきゅっと上げる。すると単に微笑んでるように見えるだけじゃなく、自分の体の中でも不思議な連鎖が起こるのだ。口角を上げると、別にうれしくなくても、目が明るくなり背筋が伸びアゴが心もち上がり、何だかわからないが、楽しそーな空気を放出してしまうのである。
自分のイメージを変えるなんてじつは簡単。口角一ヵ所に意識を込めるだけなのだから。それがクセになった時、あなたは以前より人が寄ってくることに気づくだろう。狙い通りの“軽ーい楽しげ”という見えない引力が、人を吸い寄せたのだ。それがまた自信となって、他人との距離感をどんどん縮める。そして気がつけば、デザートが増え、タダ券が集まっているのである。だから得を取ろうとするより、口角を上げる!これである。
雰囲気づくりの“連鎖”をマスターするとコワイくらい思い通りの女になれる
たとえば、女性ホルモンを投与しただけで、バストが大きくなったり、肌にハリが出てきたりするように、人間の体はきわめて複雑かつ精密なコミュニケーションの回路を持っていて、どこかか一ヵ所を動かすと別のどこかが自然に動いてしまうようなことが、あちこちで起こりうる。
たとえば、ここでご紹介した“口角上げで、楽しげな雰囲気づくり”に関しても、理屈では説明できないその連鎖反応を、裏づける事実がある。口角を上げながら、コワイ目をしてみてほしい。これが絶対できない。また口角を上げながら、本気で怒ってみてほしい。これも絶対できないはずなのだ。“表情美容”として、「口角を上げなさい口角を上げなさい」と、しつこいほど言われる訳、きっとわかったと思う。口角を上げてしまうと、全身どこも否定的な動きができなくなる上に、否定的な言葉も言えなくなる。人間の体の中にも、そういう決定的な決まりごとっていうのがあるわけだ。
同時に、腕を組むと可愛い声が出なくなるとか、手をヒザの上にお行儀よく重ねて置くと、だらしない口元がきゅっとしまるとか、連鎖による不思議な現象は枚挙にいとまなし。 意識して“仕草”を作りこむなんて、ダッサーイと言うかもしれない。でも仕草ひとつを意識するだけで、美容5年分くらいの“魅力づくり”にはなることを、どうか覚えていてほしいのだ。
Edited by 齋藤 薫
公開日:2015.04.23