連載 齋藤薫の美容自身stage2

意地悪のある会社、ない会社

公開日:2015.04.23

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

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童話やお伽話、コミックの世界には、主人公に意地悪する脇役の存在が不可欠だ。いや、彼らは脇役というより“準主役”。バレエの『白鳥の湖』だって、主役の白鳥に意地悪する黒鳥は、難易度Cのターンという最大の見せ場を持っていて、主役以上のテクニックを要するくらい重要な役回り。強烈なキャラクターとそれなりに立派な才能をもっている“意地悪な準主役”は、だからうっかりすると主役を喰ってしまったりするものである。言い替えれば、意地悪する人がいないと物語が成立せず、主役も主役を張れないのが、この世界のしくみ。シンデレラからキャンディ・キャンディまで、意地悪される人と意地悪する人による、意地悪ネタ一色の物語によって、世界中の少女が世の中ってものを学ばされてきたのは間違いないのだ。

しかし実際、大人になってみると世の中そう単純ではない。意地悪は確かに存在するが、する人とされる人がそれほどきっぱり分かれてはいない上に、意地悪される人がいつの間にか意地悪する人になっていたりと、主役と脇役が激しく入れ替わってもうごちゃごちゃ。しかし、不思議に意地悪のまったくない世界もきちんと存在し、そこに入ると生まれつき意地悪な性根をもっている人でも、善人に成り上がる。つまり実際の大人社会は、意地悪する人とされる人がいるんじゃなく、意地悪のある会社とない会社に、きっぱり二分されるんである。さて、意地悪のある会社とない会社、そこにはどんな違いがあるのだろう。

たとえば、団体スポーツの世界では“弱いチーム”ほど意地悪が多く、“強いチーム”ほど意地悪がないという。おそらくは、チームが弱いのは誰のせいだ?みたいな責任のなすりつけ合いと、試合に勝てないうっぷん晴らしがない混ぜになって意地悪が発生するのだろうが、こういうケースでは全員が被害者意識をもっているから、誰もが意地悪されてる気になっている。だから同時に誰もが意地悪することで救われるのだ。悪者がひとり明確にいれば、逆にチームが一丸となってその人に立ち向かいもするが、その原因が不明なまま全員が被害者意識をもってしまうと、するされるが入り乱れるのである。

しかし、ひとつの集団に意地悪な空気が蔓延してしまうもうひとつの理由は、悲しいかな“一流の人間”が集まっていないこと。一流同士の人間関係は、そりゃあライバルの意識は強くなるだろうが、人間が一流なだけにわかりやすい戦いにはなりにくい。まして、お互いを尊敬する点があれば、意地悪くらいで相手をへこませられるとも思わないはずだし、第一そんなヒマはない。何を言いたいかと言えば、女の場合は会社の大小を問わず“一流企業”ほど、意地悪は少ないらしいということ。“女の場合は”と言ったのは、男の場合は一流企業ほど出世争いがいかにもシビアで、むしろ男のほうが陰湿と言われる意地悪が発生しやすいから。とはいえ、男も女も選りすぐりの“質のいい人間”を揃えていれば、少なくとも低次元での意地悪は発生しない。だから会社ものびる……というのが、一流企業の計算らしく、またそうできるゆとりが一流企業の一流たるゆえんと言っていい。

しかし、いかに一流の人間関係が成立している会社でも、たった一人“心底意地悪な人”が入ってくると、やっぱり意地悪の魔法はみんなにかかる。なぜならA子に“B子が悪口言ってたよ”と言って、B子にも“A子が悪口言ってたよ”と言うだけでいさかいは始まり、まして、意地悪とは本来ある程度知的な人のほうがうまいから、質のいい人間にもスイッチが入れば、これはかなり陰湿なものにならざるを得ない。わざわざかきまわそうという意図をもった人間がひとりいれば、プライドが支えになっている一流の人間関係はいとも簡単にこわれてしまうのだ。意地悪ってだからこわいのだ。

そこで結論。意地悪のない会社とは、一応一流、でもそびえ立つほどのエリート意識はみんなそれほど持ってない、業界3位くらいの企業……なんちゃって。人間の質の良さも、要はバランスってことなのかもしれない。

とりあえず一流企業を目指すべきもうひとつの理由

“一流企業”というのは、会社の名が通っているステイタスや、給料がやっぱり高い、あるいはつぶれにくいってことばかりが、特典のように思われがちだが、“一流企業”の“一流”は一応“一流の人”がそろっているという意味でもあり、これってじつは大変な特典。一流の男と恋愛できて、結婚もできちゃうかもしれないことも有り難いが、一応“一流の人”を集めて、それを尚かつ、より一流の社会人として、磨き上げようという“手間ヒマお金”を惜しまない会社であることがスゴイのだ。

入社後の“研修”はやはり一流企業ほど長い時間と多くのお金を使って、キメ細かく行う。仕事内容を理解するだけじゃなく、社会人としての常識から、人としてのマナーまで、放っておかれたら一生知らずに終わってしまうようなことまでを、きちんと教えてくれる場所なんて他にない。スチュワーデスが理屈抜きにモテるひとつの理由も、その研修内容が女性としての躾全般に及び、イヤでも思い切りきちんとした女性へ磨かれることをみんながよく知ってるから。「大きな会社の歯車になるのはイヤ」なんていうのは、一流企業で個人的な人磨き女磨きをしっかりやらせてもらってからでも遅くない。入れるんなら入るべきが一流企業。この就職難の時代に非常識な話かもしれないが、仕事においては“一流”ってものを見直すべき時代でもあることをどうぞお忘れなく。

Edited by 齋藤 薫

公開日:2015.04.23

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