
人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。
天にまかせるのが“運”ならば、“男運”よりもむしろ問題なのが、“女運”である。男はほぼ100%自分の意志によって選べるが、女は選べない。学生時代は別として、社会人になったら、もう選べない。たまたま同じ課になってしまった女の同僚、先輩、後輩は、否応なしにあなたの“女運”。気が合えばラッキー、合わなければ天をうらむか、会社を辞めるしかないわけだ。しかし、天をうらんでいるだけの“女運の悪い女”もまた、“男運の悪い女”同様、イイ女がわりに多い。
「私って、女の人にすごく恵まれているの。ホント、いい友達ばっかり!!」何かにつけてそう口に出す女性は、確かに“女運のいい女”なのだろう。でも、その相手は果たして彼女と同じように、自分も女運がいいと感じているのか?悪い男の多くは、「ボクってどうしてこう女運がいいんだろう……」などと、自分に酔っている。そもそも、男と女の間において、お互い充分に愛し合っていれば、出会いを神さまに感謝こそすれ、どちらも男運、女運なんかは持ち出さない。
つまり、“運・不運”が持ち出された時点から、その恋愛は間違い。多くの場合片方が運が良ければ、もう片方は運が悪いと感じてる。じつは、女と女の関係も同じ。真の友人同士が「私って女運がいいわ。あなたと友達になれて」「あら私こそ、“女運”のいい女。あなたと知り合えたんだもの」なんて言い合ったりはあまりしない。したら、ウソっぽい。女と女も、“女運”を持ち出すのは、やっぱりウソなのだ。従って女友達の“女運”も片方が良いと思うなら、片方は悪いと感じる、凹凸の関係であることが少なくないのだ。まして「私は女に恵まれている」なんて、わざわざ言い出す女性はだいたい関わっている女性を“女運の悪い女”にしている。
じゃあ、“女運の悪い女”はなぜ得なのか?「女に恵まれている」という女性は、多くの場合、人間関係がもともと得意ではなく、子供の頃に人に嫌われたり人とぶつかったりすることが多かったから、大人になって成り行きで知り合った相手と仲良くできたことを必要以上に神に感謝してしまう。逆を言えばそういう女性と仲良くできた女性は、ガマン強く寛容ということになり、まあこれはひとつの才能である。
しかしもともとそういう才を持っていた女性も“いい人”ばかりとつきあってたのでは、どうしても人間や社会を甘く見がち。しかし、運のツキと言うべきか、ちょっと厄介な相手とたまたま出合って、仲良くせざるを得ない状態にせまられた時、初めて生身の人間社会を知るのはもちろん、自分の忍耐強さや許容範囲の広さを知り、またそれを鍛えていくことができるのだ。“女運の悪い女”は“女運の良い女”にだいたい迷惑をかけられている。“女運の良い女”はもちろんそれに気づかないから、仲良くすればするほど迷惑は大きくなり“女運の悪い女”はいよいよそれを運命のなせる技、神さまに与えられた修業と思うしかなくなるのだ。でも耐える。だから“女運の悪い女”は、辛いんだけど、得。得だけど、人と人の間に“運”という文字がちらつくのはもともと間違い。
誰かと知り合って、この人は自分の運を良くする相手か悪くする相手かなどと“占い”で調べたとたん、そこにはもうピュアな友情なんて生まれない。損得、運・不運を考えた時点で、人と人は間違いなのだ。従って、女運が悪いと思っている女は、その付き合いを長く続けるべきじゃない。不運と感じる付き合いは、やっぱり不健全。
というわけで、これが結論。“男運”はあっても“女運”はない。“女運”の良し悪しを言う女に、女運はやってこないのである。
ブランドものとは、“女運”の開運グッズだ!!
単純に、周囲の女たちに一目置かれ、尊敬はされなくても納得はされる存在になるために、いちばん早いのは、何となくだが“ブランドもの”であるような気がしてならない。少なくとも、私たち女は、男に見せるためにはあまりブランドものを買わない。ブランドものを買う時に、ふと頭に浮かぶのは、だいたいブランドものにうるさい女の知人の顔だったりするもの。なぜなのだろう。やっぱり見栄なのか、それとも女たちへの“通り”を良くするためなのか?いずれにしても、どこかで“女運”を意識しての行動のように思えてならない。
あまり大声では言えないが、ブランド大好きな女は、ブランドものをもっていない女を、少しだけ“変人かも……”と思ったり、“貧しいの?”と思ったり、ともかく何となし少しだけ下に見てしまうようなところがある。バカにするまでいかないが、自分とは同じレベルには見ないような……。もちろんそんなのバカげてる。でもブランドものとは、そんなふうに使われる宿命にある。いや、そういう使命をもって生まれてきたと言ってもいい。
だから女は、女運を良くするために、ローンを組んでまでブランドものを買う。少なくともこれは、神社で手を合わせるよりも、“女運”を良くするのである。でも良かった。ブランドものを持ってないと認めてくれない男がいっぱいいるより、これはましなことである。
Edited by 齋藤 薫
公開日:2015.04.23