連載 齋藤薫の美容自身stage2

“好きな人”を3人作ろう

公開日:2015.04.23

人気連載「齋藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

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ずい分昔の話だが、その時付き合っていた彼と、高校時代からの親友と、そして自分の母親と、ちょっと妙なメンバー4人で旅行をしたことがある。今でもあの快感は忘れられない。彼と親友と母親はそれぞれに気疲れする旅だったかもしれないが、私としてはこの世でいちばん気心の知れた3人と旅をする心地よさに酔いしれた。でもその“忘れられないほどの快感”は、気疲れがないからじゃない。“好きな人ばっかりの世界”に浸れる喜び。それだったのである。 

その旅の途中で考えた。この3人に対する“好き”は、比較ができないし、順位もつけられない。でも少なくともその時の自分にとっては、好きな人BEST3。まったく種類の異なる“好きな人”3人がまとめて自分のそばにいる。その心の満腹感をどうか想像してみてほしい。自分の人生、捨てたもんじゃないかも、幸せかも……そんな想いまで吹き出したのだから。 

この時、気づいたことがもうひとつある。女は“好き”という感情がどうしても偏りがち。当時の自分も、彼のことで頭がいっぱい。“好き”の感情を彼だけに使ってた。でも、親友と母親を一緒に並べてみて初めて、この二人も同じように“好き”だったことに気づく。恋の好きと、友情の好き、家族に対する好き、好きが3種類あったことに、あらためて気づかされるのだ。そして、友情の好きや、家族に対する好きを、心の中で確認した時、何だか知らないが、とてもあたたかい気持ちになれることを発見するのである。 

恋の“好き”は、女をけっこう丸出しにした“好き”。彼とのデートを優先して、前々からの女友達との約束を「仕事が入っちゃってぇ」なんてウソまでつける、ちょっと身勝手で女っぽい“好き”。女はともすると、この身勝手で女っぽい“好き”だけで、心の中をいっぱいにしてしまいやすい。もちろん、恋をしたら、イヤでも心は恋に独占されてしまう。でも、ひとつの恋が終わって心が空になったら、次の恋を必死で探し、また恋の好きで心を埋めようとするみたいなことをずっと続けていると、別の“好き”が存在することを、女は忘れがちになる。恋をしていない女もまた、恋を恋しがるばかりで、他の“好き”が存在することに、気づかなかったりするものなのだ。 

でも、女をより優しくするのは、恋ではない別の“好き”。恋するだけでも女はそこそこ人に優しくなるけれど、人としての本当の優しさは、やっぱり恋以外の“好き”でしか目覚めていかないと思うのだ。 

人の人生の舞台は、“恋”と“友だち付き合い”と“仕事”と“家庭”。大きく分けて4つある。もしその4つの舞台にひとりずつでも“大好き”と言える人がいたら、その人の人生はそれだけで明るい。それだけで、何となく日々の幸せを感じられるのだろう。もっと言えば、4つの舞台に必ず好きな人がいれば、悲しみが入り込むスキはなくなるはずだ。そして何より、その人が生きるすべての場面で、自分自身が優しさを失わずにいられる。女にとって“好きな人”は、とがった心をなめらかにしてくれる潤滑油に他ならないからである。 

“嫌いな人”の話しかしない人がいた。会社の同僚が嫌い。学生時代の女友だちも、結婚して子供ができたら話が合わなくなったから嫌い、恋もしていなくて、男なんて嫌い……でも、聞いていていちばん辛かったのは、“私、昔から家族が嫌いだった。家族に好きな人がひとりもいない”と言ったことだった。家族が嫌い……これがその人の否定的で後ろ向きの性格を育んだ原因であったのかもしれない。 

しかし、そんな彼女に恋をしている男性がいた。彼は根気よく彼女を好きでありつづけ、ほぼ1年かかって恋人同士になるのだが、彼女はこの時、こう言った。「彼に好きになってもらって、自分が“好き”という感情を今まで忘れていたことを思い出した」と。何か胸が熱くなった。すさんだ人の心をなめらかにするのも“好き”という感情。どんな凍った心でも“好き”になってあげれば溶けるのだ。 

だから、自分の生活場面のすべてに“好きな人”を作ろう。家庭で、仕事場で、学校で、友人関係で、ご近所で、サークルで、飲み屋で、通勤電車で……。そして少なくとも、彼以外に好きな人を3人作ろう。今この場で、数えてみてほしい。あなたには3人以上好きな人がいるだろうか? 

なぜなんだろう、家族の話をする人は、笑顔がキレイ

“男選び”において、こんな条件が急浮上している。“家族の話をしない男はダメ”。ママの話ばっかりしているのもマズイけど、家族のカゲがまったく見えない、どんな親兄弟がいるのかまったく想像のつかない男はやめた方がいいという。これは、“男選び”だけじゃなく“女選び”にも言えることで、聞かなきゃ家族の話をしない、してもどんな家族なんだかまったく想像がつかないというタイプは、男であれ女であれ、いくら付き合っても深まっていかないようなところがあるというのだ。

もちろん、さまざまな家庭の事情がある場合は別。でもごく普通の家族をもつ普通の人が、家族をイメージさせないのは、家族に“好きな人”がいないからなんじゃないか? と疑ってみたくなる。家族が好きじゃないのをとがめる気はない。でも、家族が好きじゃない人は“笑顔が少ない”という話をどこかで耳にしたことがある。そうかもしれない。不意に笑顔が出てこない。素直に笑顔が出てこない。基本的に一日のうちに笑顔でいる時間が少ない。それに簡単なあいさつがポンと口を突いて出てこないタイプは、何となく家族というバックグラウンドが見えてこなかったりするものなのだ。

今からでも遅くない。家族を好きになるって、人が優しくなる基本。好きになれなかった父親を好きになった娘が、急に“カンジいい子”になるなんてこともあるらしいから。

Edited by 齋藤 薫

公開日:2015.04.23

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