
人気連載「齋藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。
男と女が別れる別れ方もいろいろで、何となく未練が残る、場合によっては復縁も可能な別れ方もあれば、ドロ沼で憎しみあって、“別れたあともお友だちとして付き合っていく”なんてとんでもない、二度と会いたくない別れ方もある。この、二度と顔を見たくない別れ方をした相手とは、女にとって一体どういう男だったのだろう。もちろん決めつけはできないけれども、いろんな人の話を総合すると、やっぱりこうなる。それは、“嘘つきの男”……。
アメリカ映画によくあるのは、愛し合っている夫婦がいて、妻はとても満たされた日々を送っているが、何かをきっかけに、夫の行動に不信感をもち、まさかまさかと思っているうち、疑惑は本当になり、結末はだいたい夫がじつは妻を殺そうとしていて、すんでのところでを妻が逃げ出すというストーリー。なぜこういうパターンが多いのだろうと、常日頃気になっていたが、じつは単純に、“嘘つきの男”と結婚してしまった妻が、何の迷いもなく、一日も早く夫と別れたがるケースが、現実にとても多いからなのだという。“嘘つきの女”と別れたがる男の話はあまり聞かないから、男と女とどっちが嘘つきかと言ったら、やはり生物学的に言って、男の方なのだろう。
なぜならば、男は女より、ある意味で全然気が小さい。気が小さいのに大きく見せないといけない。だからどうしても、ズルくなったり、嘘つきになったりしてしまう。そして、今どきは女の方がジャンジャン浮気をする傾向はあるけれど、生理学的に言って、やっぱり浮気は男の性癖。浮気男は必然的に嘘を山ほどつかねばならないし、結婚前は優しかったのに、何年か後に急に暴力を振るい始めたりするのも、嘘をつく男に多いというから、そういう意味でも、男は宿命的に嘘つきになりやすい。
つまり嘘はどんな男でもつくけれど、呼吸をするように自然に嘘がつける“嘘つき”は、やっぱり女をいちばん苦しめることになるわけだ。それも、女はともかく愛されたい生き物。でも男が女にひとつでも嘘をつけば、その嘘が何であれ、女は男に愛されていないことを実感する。男の嘘=愛されていない証。女はそう思うから、“嘘をつく男”ばかりは、許せないと思うのである。
だらしない、ケチだ、いろんなことに細かい、調子がいい、自信過剰だ、感性がない、酒グセが悪い……女にとって、許せない男の要素なんていっぱいある。ただ多くのことは、しばらく付き合えば見えてくる。ところが“嘘つき”は、もともとが嘘つきだから、それなりの付き合いをしても、よく見えない。だから、長く付き合えば付き合うほどに、それは“より強く許せないこと”へと成長していくのである。まして、結婚してしまってから相手の“嘘つき”がバレると、生涯レベルで自分が裏切られてしまった気がするから、これだけはどーしても許せないという想いにかられるのだろう。つまらない男や情けない男と結婚してしまった場合は、自分に男を見る目がなかったと、自分を責める気にもなるけれど、“嘘つき”と結婚してしまった場合は、もちろん“自分の見る目”のなさを情けなくも思いながら、嘘をつかれたのだから、ある意味裏切られたのだから、自分に否はない。もう悔しいばっかり。自分の人生をダメにしたという怨みもあって、一生“許せない男”となるのである。
“人として許せない男”と“女にとって許せない男”とは、微妙に違う。“人として許せない男”とは関わらなければいいのだし、よもやそういう男に愛を感じることはないだろうが、自分が一度愛してしまった男に嘘をつかれることは、愛されたい生き物である女にとって、もっとも不幸だから言うのである。“嘘つきの男”だけはやめよう。
“生理的に許せない”は、女にとって理屈ぬき
これは恋愛に発展する前の話だが、女が男に対し最初に“許せない”と思うのは、人間的にどうのより、マナー的にどうのより、まず“生理的にイヤ”と感じる瞬間である。 顔がイヤと思うのが、いちばん手っ取り早いが、ちょっとした動作がイヤと感じたり、首すじのあたりがイヤであることに気づいたり、お泊まりしちゃって初めて気がつく、スネ毛の生え方がイヤだったりすると、けっこう厄介なことになりかねない。なぜなら、“生理的に許さない”は、理屈も何も通らない、良識もやさしさのカケラもない、まったくもって“身勝手”な“許せない生理”があるだけなのだから。
この生理は、やはり動物的な本能に近いもの。ライオンの生態なんか見ていると、人間から見れば、オスのライオンなんてみんな同じ顔してるのに、メスがどのオスと結ばれるのかをちゃんと選んだりして、ちゃんと拒んだりしている。その選択理由を、メスのライオンが理論だてて説明できるものでなく、より神のお告げに近い領域の“生理的本能”としか言えないわけだ。
で、この“生理的に許せない要素”をいっぱいもってしまっている女性が今とても増えている気がする。恋人がいない、特に恋愛したいとも思わない。これは“生理的イヤ”の基準が人一倍厳しいことを疑ってみるべきだ。でも解決策はあまりない。ともかくガマンして、男のいろんな部分に慣れるのがいちばんのようである。
Edited by 齋藤 薫
公開日:2015.04.23