連載 齋藤薫の美容自身stage2

悩みのある女、悩みのない女

公開日:2015.04.23

人気連載「齋藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

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女はすなわち”悩める性”。 悩むことイコール生きること。

意外に思うかもしれないが、人の第一印象は、“悩みがありそう”か“悩みがなさそう”かで、評価が大きく違ってくる。特に、女が男を“品定め”するとき、“悩みがひとつもなさそうな男”を、“なんか軽そう”とか“うすっぺらそう”と、女は一瞬にして切り捨てる傾向にあると思う。

もちろん、借金があるとか失業してるとか、具体的な悩みを背負っている男は困る。ここで言う“悩みがありそうな男”とは、あくまで“ちゃんと悩みを悩むことができる男”かどうか。“悩む能力”がある男かどうかってこと。

これは言わば、女が生まれつき“悩む性”だからで、多かれ少なかれ悩みながら生きていかなきゃならない女にとっては、恋愛も“幸せな悩み”のひとつ。だから、“悩む能力”がない男とは、恋愛しても何かつまらなそうな気がしてしまうのだ。女にとって充実した良い恋愛とは、まるでお互い同じ悩みを悩んでいるかのような精神状態で、相手と関わり、2人でじっくり話し合いが続けられる恋愛。心中が“究極の恋愛”と言われるのはそれがため。あっけらかんとただ楽しいばっかりで、ごはん食べて、あとはホテルに行くのみ……みたいな繰り返しでは、女はこれが恋愛なの? と空しくなるわけで、心のどこかにいつも悩みに似た切なさがあり、相手の心にも同じ切なさが宿っていないと、恋愛している手応えがない。だから男も、“悩める男”でないとイヤなのだ。

そう、女は“悩む性”。女が雑誌を読むのも占いが好きなのも女同士のおしゃべりが必要なのも、みんなみんな悩む性だから。自分の将来はもちろん、自分がどう生きるかも悩みのひとつ。生きることと悩むことは、ほとんどイコールなのである。  だから、“悩みのまったくない女”は、たぶん女から敬遠される。女は悩みによって人と関わり、悩み含みの会話をかわすことでしか、関係は決して深まっていかないからなのだ。悩まない女、人の悩みを知らない女は、悩むことが生きることである多くの女にとって、“人間”じゃなく“機械じかけの人形”みたいなもの。悩まない女は悩まない女同士、楽しく遊ぶしか道はないのである。しかしだからと言って、悩むのがヘタで、何でも重く悩んでしまう、悩むセンスのない女になっちゃいけない。女同士にとって、“悩みはお互いさま”であることに気づかずに、自分の悩みばっかり言ってる女は、“身勝手で面倒な女”に見られて損。ならば、できるだけ軽やかに悩む女にならなきゃいけない。

“軽やかに悩むコツ”は3つある。ひとつめは、悩みをわざわざさがさないこと。悩むことは女のサガだけあって、ヒマだというだけで悩んでしまう。わざわざ悩みをさがし、ヒマな時間を悩む時間で埋めようとしてしまう。“悩んでるヒマなんかない”という決めゼリフがあるように、人はヒマだから悩むのだ。“あまり悩まない女”は、すなわち悩みをわざわざさがさない女か、さもなければ、文字通り“悩むヒマがない女”。どうしても時間があまるなら、本を読み、映画を観よう。そもそもなぜこの世に、本と映画があるのかと言えば、人間に無駄な悩みを与えず、また多くの悩みを未然に防ぎ、つまらない悩みでくたびれないための道具。人間が本当に悩むべき悩みとは何なのかを気づかせる道具であると思う。だから悩みさがしが好きな人は、本と映画でヒマをつぶそう。

ふたつめは、悩みと遊ばないこと。女は悩む性だけに、悩みとたわむれ、悩む自分に酔ってしまう。中にはそれが心地よい人もいるから、反対はしないけど、いつも悩みにどっぷりつかっていると、いよいよ世間からは面倒な女と思われるので、とても損。悩みと遊ぶ女は、考えているふりをするが、ただ悩みを頭の中でこねくりまわしているだけ。“あまり悩まない女”は要するに目の前に悩みがあったらそれを整理し、咀嚼し自分なりの結論を出して終わらせる“考える女”。悩むことと考えることは本来別のこと。頭の中で考えがまとまらないなら、紙に書こう。不思議に悩みの本質が見えてきて、胸のつかえが取れるからやってみてほしい。ともかく悩みを悩まずに、考える。

3つめは、みんな同じことで悩んでいるのだという事実を知ること。自分だけが辛いと思ったら大間違い。みんな同じように何だかんだと辛いのだ。あまり“悩まない女”は、“他の人も辛いことを知っている女”。それを知らずに、すべての悩みは自分のものと思っていると、人の痛みがわからなくなり人にやさしくなれなくなり、いよいよ身勝手な女になってしまう。だから言うのだ。悩むのは、女のサガ。みんなみんな悩んでる。そこで、悩みはあるけど、軽やかに悩む女になった時、女は初めて生き生きした女に見える。そこで初めて女はキレイに見えるのだ。

女が“モメごと”を好むのも、じつは人と深まりたいから

まず恋愛においても、男より女の方が、モメたがる。大した問題じゃないことも「今夜のうちにすっきりしときましょう」なんて、夜中まで引っぱって話をしたがる。それも“すっきりするため”じゃなく、わざわざ“議論するため”。女はとかく、好きな人とモメたい生き物なのだ。

一方、女同士の人間関係は、平和な方がもちろんストレスがたまらなくて好ましいのだけれど、時々モメごとが起こると燃えるのも女のサガ。なぜこうも、女はモメるのが好きなのか?それは、女にとって“モメごと”が、人と深まる絶妙のチャンスだからで、モメごとを解決するために話し合うふりをしながら、じつはどんどん相手と深まっている快感に浸るのが女は好きなのだ。好きな人とは、いっぱいいっぱい深い話をしたい。それが平穏なお付き合いではなかなか得られないから、無意識にわざとモメる。女同士、相談事を持ちかけたり持ちかけられたり、ともに“問題”を共有することで、人間同士として深まったと思うのだ。第三者の悪口で盛り上がることで仲良しになれるのも、その応用。

それがいけないと言うのではない。むしろそれが女のサガなのを自覚し、モメごとをうまく使ったり、かわしたりすることで、愛を深め、友情を深めよう。ともかく自分はモメごと自体が好きなのじゃなく、人と深まることが好きなんだと早く気づいておくことが幸せへの道。

Edited by 齋藤 薫

公開日:2015.04.23

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