連載 齋藤薫の美容自身stage2

よいプラス思考いけないプラス思考

公開日:2015.04.23

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

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プラス思考は、体からボンボン吐き出さず、対人関係にさり気なく使うと、女はとてもステキに見える。

ずいぶん昔、雑誌で女優インタビューの連載ページを1年にわたってやった時のこと。合計12人の女優さんに話を聞いたわけだが、何回目からか、私は秘かに“ある同じ質問”をするようになっていた。それは「“前向き”あるいは“プラス思考”とは、具体的に何をどう思うことですか?」女優さんのような仕事をしていれば、それはもう基本的に皆さん“前向き”だ。“後ろ向き”な人にできる仕事では、たぶんない。だから、どんな話の流れになっても、だいたいいつの間にか“前向きに生きている”的な話題になる。そこで毎回「そうか、前向きに生きることって、やっぱり大事なんだ!」といちいち感心しているだけじゃあまりに芸がないと思い、何回目からか「それは具体的にどんな時にどう思うことなのですか?」と突っこむことにしたわけなのだ。ただ“前向き”とか“プラス思考”というのは、何となく心が前を向いているっていう多分に曖昧な感覚で、意識して何かをやることじゃない。半分以上の人から「前向きになる時?具体的に?うーん、難しい質問ねェ。わかりません」と言われたが……。

でも、明快な答えをくれた人もいる。「どんな仕事がきても、“私ならデキる!”って、まず思うこと。デキるかしらどうかしら……って、一瞬でもひるんだら、おしまい。やるしかないなら、デキると思うしかない。でも、そう思うと不思議に力が湧いてきて、大方のことはデキちゃいます」なるほど、“プラス思考”とは、すなわち勇気であり、自分を励ます力であるという考え方……。これは私たちも大いに見習いたい。でも逆に「仕事がなかった時、“いいじゃない? 別に世間に注目されなくたって。生きていけるだけだって幸せじゃない?”と心から思えた時、初めてプラス思考の心地よさやすばらしさを知りました」と言った人もいて、これもまた、すこぶるよいプラス思考、そういう時にこそプラス思考になれる人って、いい……としみじみ思った。

一方、こう言った人もいる。「私はどんな時でもプラス思考。だからマイナス思考の人と一緒に何かするのは辛い。少なくとも友だちにはなれない」と。それもまた、そうなのかもしれないと納得する。ただ、何かちょっと考えたあとで、“自分にとってのプラス思考”をこう説明した女優さんがいる。「例えば、自分のお誕生日にお友だちを招いたら、その友だちが私の知らない人を連れてきたりしますよね。それが例えば、そのお友だちの彼氏で、自分には恋人がいないとなれば、当然二人の仲むつまじさがうらやましい。その時、友だちはなんで自分の恋人なんて連れて来たのかしら?って腹が立つか、私の誕生日を盛りあげるために二人して来てくれてうれしいって思えるか、どっちだろうということだと思うんです。どんなことでも、よい方に考える、受け止める……それがプラス思考ではないかしら」と。そしてこの人はこうも言った。「プラス思考を対人関係に使うと、生きることが本当に楽になる」と……。

とすれば、マイナス思考の人とは関わりたくないと思うこと自体が、マイナス思考?マイナス思考の人を全面否定するプラス思考より、種類はぜんぜん違うけれど、誘ってもいない恋人を連れてきちゃう友だちへも感謝ができるプラス思考の方が、人生が広がっていくことは間違いない。

少なくとも、私はそこでハッとした。“前向き”とか“プラス思考”って、自分のためだけに、自分が立ちあがるためだけに使うものと思ってきたが、この人は“自分のため”じゃなく、“対人関係”にそれを使うと言った。まずそのことにハッとしたのだ。

そして、同じプラス思考でも、人を否定するためのプラス思考と、人を受け入れるためのプラス思考があることに、その時初めて気づいてハッとしたのだ。確かに人間、いつでもプラス思考であるべきだし、何でも悪い方に悪い方に考えるタチの人といると、腹立たしくなってくる。でも、自分自身が前向きならばそれでいいと思うのは、どうなのだろう。プラス思考が洋服着てるみたいになるのは、どんなものなのだろう。プラス思考がまるでブルドーザーのような強引な女を作ってしまわないか?

プラス思考というのは、人との関わりにおいては、自分が人より少しでも前に出ようとするためのものじゃなく、ましてや人を拒むためのものじゃない。むしろ逆に対人関係をスムーズにし、人を気持ちよく受け入れるためのもの。結果その方が、何もかもがうまくいき、自分も幸せになれるはずなのだから。お誕生日のたとえ話で言えば、そこで腹が立たなければ、恋人のいない誕生日も楽しく過ごせるわけで、その人はきっと誰にでも愛されながら、心穏やかな人生を送ることになるのだろう。

よいプラス思考、それは自分が沈みかけた時に自分を引っぱりあげるパワーとなるもの。そして対人関係で人を拒まない、人を嫌わない、魂レベルの高い大人になるための心がけ。人間は最低この2つのプラス思考をもっていれば、生きるのが楽になる。度を超えたプラス思考はいらない。ムリして、自分の体からプラス思考をボンボン吐き出す必要などないのである。

恋愛および結婚は“とことんプラス思考”が勝利の秘訣

物事をよい方に考える……これがいちばん功を奏するのは、男がらみ。まず、恋愛しはじめは見るものすべてがピンク色、恥ずかしいほどプラス思考。ところがその反動もあり、ふと我に返ると女は一転果てしなくマイナス思考になっていきやすい。浮気してない?私をフラない?結婚するよね!?私たち。ある時期から恋愛感情は、相手を想うことより、相手の気持ちが冷めていないことを確認する方が忙しくなってしまう。しかし、マイナス思考でいちばんいけないのが、人を疑うマイナス思考。「私ってダメな女」と自分一人で悲観的になってるマイナス思考は事故が少ないが、ここでも相手を巻きこむ“疑うマイナス思考”は、恋を必ず歪ませる。せっかくの恋を自らダメにするケースの8割9割はこれが原因と思われる。

そしてこの世でいちばんプラス思考の塊になるべきは、“結婚したい女”。相手がいようがいまいが、“結婚できないかも”とマイナスに考えたらそこで結婚の可能性はまず絶たれる。もうこればかりは不動の事実で、まわりが心配になるほど結婚に前向き、おめでたいほどプラス思考の女に、結婚はやってきやすいものなんである。たぶん恋愛を複雑にしているのは、ひたすら人間のマイナス思考。プラスに考えると、こんな単純でピュアな感情はない。自分でこんがらからせない女の勝ち。そういうこと。

Edited by 齋藤 薫

公開日:2015.04.23

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