1. この5年間で女の評価の構造はこう変わった

斎藤薫の美容自身2

2015.04.23

この5年間で女の評価の構造はこう変わった

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

この5年間で女の評価の構造はこう変わった

まず松嶋菜々子の評価の変動が意味するもの

6年前、松嶋菜々子の大ブレイクは、奇しくも女の顔をコワくした悪名高きモードメイクを終わらせるようにやってきた。それは“媚びない女”“男受けを考えない女”を目指すのは、江角マキコのあの風貌でもない限り、やっぱりちょっと無理だったことに気づく頃。古風なくらいの女らしさをたたえた松嶋菜々子が登場し、女は一斉に“ン!?”と立ち止まる。当時の男たちが松嶋菜々子っていいよねと語気を強めて言い出すわけで、それは、細眉に黒い爪の女への静かなアンチテーゼだったと考えていい。だから女たちも無視できなかった。当時カフェでお茶を飲んでいたら、後ろの席で「私、松嶋菜々子に似てるって言われんのよ。あんま好きじゃないから、やんなっちゃう」と言った女性がいた。今なら振り返って声の主を大げさに見てやるところだが、当時は『上等じゃない?!』と思っただけで、わざわざ顔を見たいとすら思わなかった。甘かったのである。私も、その声の主も・・・・・・。

その後の大ブレイクは、どこにでもいそうな日本的なOL顔が、スパモ級の長い手足にくっついたがための幅広い支持と分析できたが、もうひとつ、いわゆる鈴を転がすような可憐な声にもかかわらず、古風なお嬢さん役など一切やらず、教師に弁護士、TVディレクターと、パキパキ早口で強気にしゃべる役ばかり。そのギャップに何となく心惹かれる形で世間はどんどん松嶋菜々子にハマっていく。一方、時を同じくして完全無欠の美貌をもつ藤原紀香が急上昇してきたり、若い層では才能とビジュアルインパクトを前面に出した浜崎あゆみや宇多田ヒカルなどの登場もありで、和風のスターは多少とも存在がかすんでいきそうになる。

しかし今年の人気分布を見てほしい。一度ピークを迎えれば、あとは沈んでいくしかない芸能人必至の人気グラフ、しかも今は毎年のように“一番の女”が入れ替わる。そんな中にあって、松嶋菜々子のグラフはあの結婚を機に下降しそうな気配を見せながらも、結果として今年、ひとつのピークを迎えてしまった。わずか5~6年だが、この浮き沈みの激しい時代に、5~6年フワフワしながらもトップにいつづけるのは、異例の息の長さ。木村拓哉の不思議なパワーとはまた別の、不可解なパワーをこの人はもっている。

それは言うなれば日本において、きわめて特殊な永遠性をもつオードリー・ヘップバーンへの支持と酷似している。ヘップバーンは、過去に何度も日本でブームを起こしており、たぶんこれからだって何度もブームが起きうる種類の支持。なぜならば、女は何らかの強烈な個性の引力に引っぱられていかない限り、どこかに戻る場所を必要とするからで、ヘップバーンはまさにそれ。一見古風なくらい女らしいのに、役柄はいずれも向こうっ気が強く、芯が強い、パキパキしゃべる女ばかり。そのギャップに男も女も心惹かれ、女たちはひとつの理想像として、そこへたびたび帰っていきたがる。そして松嶋菜々子もそれとまったく同じギャップをもった、潜在意識の中の理想像、だから松嶋菜々子は、たぶんほぼ永遠。しかも最近の美しさはようやく凄みをもってきた。この人、どこまで行くかわからない。きっちり見守ろう。

松嶋菜々子

古風なくらい女らしい雰囲気と、それに反する強気な役どころ。そのギャップが引力となって“一番の女”であり続ける松嶋は、女たちの理想像として、ほぼ永遠の地位を確立。まさに日本のヘップバーン的存在。