連載 齋藤薫の美容自身stage2

結婚してしまった女

更新日:2021.02.22

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

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“したい”とあせった女は、したとたん”してしまった女”になってしまう。

そう、世の中には“結婚したい女”ばかりじゃない、“結婚してしまった女”もたくさんいる。つまり、結婚している自分や結婚している現実を、時々でもうらめしく思う女は、決して少なくないのである。未婚で、しかも結婚したい女には、理解できないのかもしれないが、今の夫に不満はなくても、「あーあ、私、結婚してしまったんだ・・・・・・」という、後悔にも似た戸惑いを胸に抱えながら妻をやっている女は、ある数いるのだ。そして、そういう女たちの心の声に耳を傾けていると、女にとっての結婚の定義が、今この瞬間も、少しずつ変わりつつあることがわかってくる。

たとえば、20代半ばくらいでその時付き合っている人と、とても自然な流れで“結婚した女”・・・・・・きわめて一般的なケースだが、こういうタイプに限って、この“してしまった感”を強く感じていたりする。言うまでもなく、早めに結婚したことで、知らずに終わってしまったこと、やらずに終わってしまったことが、じつはとてつもなく大きかったんじゃないかと思っているからである。

人生はどう引っくり返っても、2つのコースを同時に経験することは不可能だから、あの時“結婚しなければ”“あっちの人と付き合っていたら”といういわゆる“たら、れば”発想をいちばん持ち出しがちなのが、この“結婚してしまった女”なのである。結婚を選ばずに、独身キャリアをやっている女は、“あの時、結婚していれば・・・・・・”とはあまり考えないが、そうやって過去をふり返り、悶々とするのは、だいたい“結婚してしまった女”なのである。それも“結婚してしまった女”は、基本的に何かをギセイにしたと思ってるから。従って“結婚してしまった感”の強い女ほど、不倫に走る。もし結婚していなかったら、自分はもっと愛され、もっと評価され、女としてもっと高く売れたかもしれないと思うから、ひとまず恋愛に走る。もともと恋愛体質で、ときめいていないと生きている実感がないというタイプは別として、不倫する妻は、結婚によって失ったのかもしれない“栄光”を、ちょっと見当違いの不倫で手っ取り早く取り返そうとしている場合が多いのだ。

一方で、“結婚してしまった女”が、さらに今また増えつつあるのを感じるのは、最近いよいよイイ男とイイ女が本当に結婚しなくなってきたからなのだと思う。まずは近頃“結婚しないイイ男”が、本当に増えている。モテないからじゃなく、むちゃくちゃモテそうでエリートで金持ちの40代が、「なかなか縁がなくて・・・・・・」とか言いながら、優雅な独身生活を送っていたりする。つまりそういう時代になろうとしているのに、“結婚してしまった女”は、自分はなぜのーのーと結婚してしまっているの?と思うわけなのだ。

それを受けて、イイ女の中にも“別にしなくたっていいか・・・・・・”とぼんやり考えはじめている人がいるし、“一度してみたい”くらいに、結婚を気楽に捉える女は、先にも述べたように確実に増えている。しかも“バツイチ”がカッコイイという時代、ふつうに結婚しているだけって、何だかどうなんだろうという疑問がフツフツと湧き出しはじめているわけなのだ。そしてもちろん、“結婚してしまった女”は、大きな間違いを犯している。“ともかく結婚したい女”と同じ過ちを犯している。結婚を“不動産”として見てしまう過ちを。“結婚したい人”は、結婚を“桃源郷”のように思ってしまうと言ったが、“結婚してしまった女”も、“ローンで手に入れた3LDK”を結婚だと思ってしまっている。動かない、ひとつの土地みたいに思ってしまっている。

でも本当の結婚は、むしろコロコロ転がしていくもの。言ってみれば雪だるまみたいに、転がしながら大きくしていくもの。自分たちの思い通りに変えていくもの。そう思えば、“結婚してしまった”という過去形は、ぜったい出てこないはずだ。結婚とは「さあ、明日はどうしようか、何をしようか?」と、毎夜、ベッドルームで夫婦話し合うもの。そう考えると、大変だけれど楽しい。人生ゲームみたいにめまぐるしく、リスクも多いけれど、でもワクワクする。それが結婚だと考えてみたらどうだろう。

既婚者の間では「結婚って、何だろうね?」「ホント何だろうね?」「わからないね」みたいな会話がよくかわされる。むしろ自分たちで定義をつくっていくもので、たぶん結婚に定義はないのである。だから、結婚したことで、ホッと安心してしまうのも、してしまったと後悔してしまうのも間違い。“結婚はゴールではなくスタート”と、耳にタコができるほど言われても、女が結婚をゴールと思ってしまうのは、やっぱり“結婚したい”“結婚したい”と願いすぎてしまうからなんだと思う。“したい”とあせるから、結婚したとたん“してしまった女”になってしまう。“一度くらいしたいもの”と思えば、“やってみたらけっこうおもしろいじゃない? 結婚って”と逆に結婚を思う存分楽しめるに違いないのである。

結婚しないイイ男が増えているのは一体なぜか?

そう、本当にビックリするほどのイイ男、ひと昔前なら“三高”の中の“上の上クラス”のイイ男が、結婚しないで残っているという現実が、ひとつの話題を呼んでいる。こういう男を見て、女はだいたいこう思う。黙っていても女が寄ってくるような男は、もったいなくて結婚なんかできないのよね・・・・・・と。しかし、そのうち何人かの話を聞いていると、結婚しない原因はむしろ仕事。ともかくともかく仕事が忙しくてそれに加えて趣味のひとつももっていたら、ホントに結婚しているヒマがない、それだけの理由だって・・・・・・。イイ男かどうかは別として、日本でイチバン忙しい小泉首相も独身で、要はああいう独身が増えてきたと考えればわかりやすい。

それならば、今どきの“結婚しないキャリア系イイ女”と、理由はまったく一緒。頑なに“自分は結婚しない”と言い張るわけでもない、“しないんじゃなくて、できないの”と卑屈になるわけでもない、言ってみれば“何となく結婚していない女たち”。こういう女たちに限って、みなイイ女という現実が今の日本には厳然とあるわけだけれど、男の側にもついに“何となく結婚していないイイ男たち”が増えてきたわけで、いずれそういう意味での男女のバランスが整ってくると、本当に結婚の定義が変わってくるかもしれない。どちらにしても、結婚しないイイ男が現れてきたのは、事件である。

Edited by 齋藤 薫

公開日:2015.04.23

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