連載 齋藤薫の美容自身stage2

マジメな女が強い!

公開日:2015.04.23

人気連載「齋藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

人気連載「齋藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

どんな才能もマジメとセットになっていないと、もったいないことに、生涯花開かない。

“残っていく人”と“残らない人”という言い方がある。おそらくすべての世界に、“残っていく人”と“残らない人”が存在するのだろう。一般の企業では、新卒の新入社員が100人入ったとしても、2年後くらいには半分に減っていたりして、“残っていく人”と“残らない人”が明確だ。芸能界でも、毎年何百人というタレントや歌手がデビューしているというが、とりあえず顔が知られるようになる“残っていく人”は、ほんのほんのひと握り。一時期よく見かけたのに、知らないうちにいなくなってしまう人も思いのほか多く、それも“残らない人”に入るのだろう。茶道教室からダンス教室まで、おけいこの世界でも、3回でやめる人もいれば、30年も“残っていく人”がいる。この前のWカップでは、“残っていく国”と“残らない国”が1ヵ月間、毎日のように明暗を分けていたが、スポーツの世界でもまた、“残っていく人”と“残らない人”が、非情なほど明確なのである。そして最近とみに“残っていく人”と“残らない人”という言い方がよく使われるのは、何かを“始めよう”と思う人があらゆる世界で増えていて、でもその分だけ挫折する人もすごく増えているという証拠だろう。

ここで何が言いたいのか?“残らない人”は「だって、つまらないんだもん」とか、「条件が悪すぎて……」とか「運のいいヤツっているんだよね」とか「自分の力を認めてくれる人がいない」などと言い訳をしがちだが、残らない、または残れないのは、要するに“マジメさ”がなかったことが始まりなのだ。

たとえば、今をときめく女優と言えば、誰だろう。今ここで3人くらいを思い浮かべてみてほしい。黒木瞳に米倉涼子に菊川怜、いえ松嶋菜々子や藤原紀香もまだまだ……という具合に。この人たちが一世を風靡できた理由を、たぶんみんなは、“キレイだから”“スタイルがいいから”“オシャレだから”なんて思っちゃってるだろう。でも、ハッキリ言って、キレイでスタイルが良くてオシャレな人なら、他にもいっぱいいっぱいいる。この人たちが成功した理由も、じつは人一倍マジメだったから。でなければ、今の地位はないはずなのだ。キレイなだけで“残れる”世界などはこの世にひとつもない。“残らない人”はそこに気づかないから、残れないのである。

ただマジメだけでいいわけじゃもちろんない。どんな世界でも、“マジメが洋服着てる人”は、どちらかと言えばバカにされちゃう。たぶん、マジメな人にも2種類あって、避けたいのは、自分がマジメであること自体に一生懸命になる人。マジメを最優先させて、本当の目的が見えなくなる人。こういう人はだいたい、仕事の優先順位を間違えて、一本の企画書を作る時に、見た目により美しい書類を作ることに一生懸命になるあまり、中身がまったくおそまつになる。何がいちばん大切なのかを見失ってしまう。“目的を果たすこと”に対してマジメにならなきゃいけないのに、マジメになることにマジメになるから、結果じつは何も生まないのである。

マジメとは、たぶん食事における“ごはんかパン”みたいなもの。白いごはんだけの食事なんてありえない。おかずを美味しく食べるためにこそ、ごはんがあると言ってよく、自分の魅力を人に認めさせるために、マジメがあるわけで、いくら魅力や才能のある人も、そこにマジメがひっついていないと、世間さまには何も伝わらないってことなのである。そう、世の中には、すごい才能をもっている人はいっぱいいるが、マジメというものが根底にないために、その才能を生涯花開かせない人もいっぱいいるのだ。それが何とも悲しいじゃないか。

今まで、マジメであることは、何となく軽んじられてきた。カッコ悪いとか、ヤボったいとか、おもしろみがないとか、いろんなことを言われてきた。でもたぶん、2002年6月の1ヵ月間で、つまりWカップにハマって、やっぱり人間マジメじゃなきゃ、何も始まらないのだと思い知った日本人は多かったはずだ。勝ち上がるチームは、要するに目的を果たすことに対し、人間の限界までマジメに取り組んだ人たちの集まりだったからである。そして奇しくもこの6月に、チャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門での優勝を、日本人女性が勝ちとった。音楽の世界でも、才能を形にしようとする“究極なマジメの快挙”。なんだかとても、マジメが恋しくなった。マジメなこと自体に憧れを感じてしまったりもした。何か、これからのテーマはマジメってことかも……と思ったりもした。マジメっていい。マジメはすごい。マジメをごはんにして、毎日しっかり食べる。すべてはそこから始めないと、人の人生、薄っぺらくなるばかりなのである。

ピアニストとバレリーナはマジメの女神

さて、マジメは女をキレイにするのか?少なくとも、美容に対してマジメな女は、不マジメな女よりは、明らかにキレイである。ただ、本当に女をキレイにするマジメとは、やはりひとつのことにこれまでの人生の2/3以上を費やし、今もそれに一日の2/3以上を費やすくらい、“何かに打ち込むマジメ”。

たとえば、すでに有名になっているピアニストとかヴァイオリニストなどの演奏家のマジメは、並大抵じゃない。世界的なコンクールなどで賞を取ったりするくらいのテクニックを持つ人は、3歳くらいから濃厚なまでのマジメ生活に365日明け暮れていることは間違いなく、子供の頃から一日6時間もピアノを弾いているようなとてつもなく熱いマジメをやってきてしまうと、もう顔からして普通の女の子とは違ってきてしまう。クラス中を見渡した時、ひとりだけ鮮明に見えてしまうような、発光するような存在感みたいなものが、その子の体に宿ってしまっているのだ。たぶん、マジメをみっちり積み重ねていくと、見た目の魂濃度が、一般人より高くなるのであろう。ヘラヘラしながらお弁当を食べていても、一人だけ魂が宿っちゃってるみたいな。バレリーナはこれに、異様な“姿勢の良さ”が加わるから、もっと魂が濃い。それは美容では絶対作れない美しさ。マジメは女を、ミューズにする。

Edited by 齋藤 薫

公開日:2015.04.23

Serial Stories

連載・シリーズ