
人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。
男を最優先させるほど女は”時間”と”自分自身”をギセイにしていく
たとえば、女友達とのゴハンの約束も、カレから「会おう」と言われれば、迷わず男を優先させてしまう・・・・・・そういう人ってわりに少なくないと思う。もちろん、女友達には「仕事が入っちゃったのォ」とウソをつく。でも、そこにあんまり罪悪感はない。だって私は女。男を優先させて当然じゃない?って。こんなこともあるかもしれない。仕事で残業や休日出勤を余儀なくされても、カレとの約束があれば、「私はムリです」とためらいなく言い放ててしまう。だって人生でいちばん重要なのは“愛”でしょう?仕事よりも愛のほうが大切でしょう?と・・・・・・。男を最優先させる性癖・・・・・・それはひょっとすると、生まれながらに決まっている“女の血液型”みたいなもので、もう変えようがないのかもしれない。だから、“それは友情をないがしろにする心のない女のすること”と言われても、またそれが社会人としてあるまじき行為と罵られても、どうしようもない女の生理みたいなもの。友情も大事、仕事も大切、でもどうしようもないのである。
さて、こういう女は往々にして男を好きになりすぎる。なにしろ、頭の中を占める割合も男がダントツに多いのだから、そうなって当然。ただ、ひとたびその恋愛がうまくいかなくなれば、なおさら頭の中が男で詰まってしまうから問題なのだ。もちろん、本人も望んでそうしているわけではない。ちょっとでも男の気持ちが離れそうになると、いてもたってもいられなくなるのは性分、できればやめたいと思っているものなのだ。それでもやめられないからこそ、女の“生理”。愛されたいという生理。ひとりになりたくないという生理でもあり、幸せになりたいという生理でもある。もっと言えば、早く幸せにならなきゃいけないという、焦燥感混じりの生理。それは他人も自分も止められない、とても強い衝動だ。
だからこういう人は、せいぜい男を優先したらいい。そして早いところ幸せになるべきだ。でも、男を優先するあまり、本当にいろんなものをギセイにし、何より本当にいろんな損をしていることも、知っておかなければいけない。もちろん、女友達との関係をギセイにすることもあるのだろうし、仕事の信頼を失ってしまうこともあるのかもしれないが、そういうこと以上に大きな損失となりかねないのは、たぶん“自分自身”。男を優先させるために、女が日々ギセイにしているのは“時間”である。男のために割く自分の時間・・・・・・。しかもそれは必ずしも有効には使われなかったりする。相手が身勝手な男だと、待たせるだけ待たせて、「ごめん、今日はダメになっちゃった」。しかもこういう女は勝手に待っていることも多いから、予想以上に多くの時間をムダにしている。
こういう時間を、他の女は何をしているかと言えば、ただぼんやりTVをながめて終わる女もいる一方、“男を最優先しない女”は、だいたいが向上心が強いから、着々と自分を向上させていく。自分磨きに、自分さがし、自分を高めるために、多くの時間を費やす。英会話に一生懸命通ったり。占い系にハマったりするのも、じつは“男を最優先しない女”の特徴。まずは自分、だから男は二の次・・・・・・そういうことらしい。で、ここで何を言いたいのかと言えば、男と別れてしまったら、基本的にそこには何も残らないが、自分磨きは、いろんなスキルが積み重なっていく。いや実際に積み重なる能力は大したものではないのかもしれない。でもその代わり、“自信”が増える。私は“それなりのもの”になりましたよという自信がしっかり身についてくる。“男を最優先する女”が、男といちゃいちゃ会っている間に・・・・・・。
一方で“男を優先する女”は、男と別れるたびに、男が信じられなくなり男を疑うから、じつはもっと男に時間を費やすようになってしまう。そこにできる差がどれほどのものか、どうかちょっと考えてほしい。でもでもそれ以上に大きな損失は、ひょっとすると、“男を優先する女”ほど、悪い男につかまるってことかもしれない。こういう女性は、そもそも“男”に対して情にモロい。惚れっぽく、おぼれやすく、そしてちょっと甘い。だから、自分につり合わないような男にも、簡単にハマってしまうのだ。男を最優先する生理は、そういうところでも、女を早まらせてしまうのだ。言いかえれば、彼女たちはそういうところで、自分をあまり大切にしない。自分の向上を優先する女たちは、男も“多少とも自分を引き上げてくれる男”をさがそうとするから、簡単には惚れないが、失敗も少ない。基本的に自分を大切にするから、男に苦労させられることはあまりない。反対に“男を優先させる女”は、男に苦労し、でも“運命の人”にはなかなか出会えないのである。
それってやっぱり、いちばんの“損”じゃないか?本人にとっては、男を優先させるのも、自分が幸せになるため、自分が一人にならないため、結局“自分のため”と言うかもしれないが、結果として自分のためにならないことが多いのが現実。人間最後はひとりであること。男は案外アテにならないこと。女友達や親兄弟のほうが、イザという時はむしろ頼りになること。そして最終的に使えるのは、“自分の能力や生きる力”しかないこと。誰にも頼れないこと、知っておいてほしい。“生理”に勝つにはそれを呪文のように唱え、自分に言いきかせるしかないのだ。男を優先させるほど、自分がおろそかになり、だから、結果的に幸せは遠のいていくのです・・・・・・と一日一回唱えよう。
恋愛中こそ、男を最優先しないススメ
男を最優先する女が、皮肉なことに恋愛をうまく運べないのは、ひとえに男をイイ気にさせるから。今さらあえて断ることもないけれど、恋愛は見事にシーソーゲーム。女のほうが男に尽くせば、男は面白いようにつけあがり、どんどん尊大になっていく。これはどんなリッパな男性でも同じ。逆に彼氏がやたら尽くしてくれるタイプだと、自分がどんどん尊大になり、自分でもイヤな女と思うようになっていくことがあなたにも、きっとあったはず。
人間はそこまで安易にできていないと思うかもしれないが、人間はその一方で、非常に順応性ある生き物。チヤホヤされればその分だけ我がままになれる。しかも恋愛は人間をどこか安易な生き物にしてしまうから、それは避けようのないことなのだ。で、男は最優先されれば、その分だけ優位に立つ。しかし“優位に立つこと”それ自体が、恋愛感情でも優位に立ってしまうことになり、相手にしだいに飽きていく。恋愛における“飽きの法則”は、そこにある。
一般には、女が尽くしすぎると、男は女をうっとうしく思うようになり、だから関係がこわれていきやすいと言われるが、もっと深いところで、相手を優位に立たせてしまう力関係が、相手の恋愛感情を減退させていくというのが、ひとつの真相。だから恋愛はどちらが優位に立ってもぜったいにいけないのである。
Edited by 齋藤 薫
公開日:2015.04.23