
人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。
“苦手な女”より一人でも多く”得意な女”を探すこと。それが苦手克服の近道。
苦手なら近づかなきゃいい。でも食べものの“苦手”は食べなきゃすむが、人の苦手、とりわけ同性の苦手は避けたくても避けられないから、ますます苦手になっていく。“苦手な女”ってそういうものなんじゃないだろうか。厄介なのは、“苦手な女”=悪意の女、では必ずしもなかったりすること。つまり、こちらが彼女を苦手としているだけで、彼女自身はむしろ世間じゃ“いい人”と思われていたりすること。世間にツマはじきにされているわけではないから、関わりを避けようにも避けられないケースも多い。ヘタをすると、同じ仲良しグループ内にすら“苦手な女”がいたりするから、なお厄介なのだ。
そこでその攻略法だが、人づき合いの鉄則として、“相手を知ること”が何より優先されるが、ここはまず、自分はなぜ彼女が苦手なのか、その理由を知ることから始めてみよう。負ける、疲れる、傷つく・・・・・・おそらく苦手な理由はこの3つに尽きると思う。自分にとっての“苦手な女”はそのうちどれに当てはまるのか、まずはそこを明快にしたい。ひとつめは“負ける”・・・・・・。意外に思うかもしれないが、人は勝ち目のない相手を理屈抜きに苦手と思う。スポーツの世界では、どうしても勝てないライバルを、“もっとも苦手な相手”と呼んだりするが、同様に女って、“すごい美人”には、それだけで何となく苦手意識を持ってしまう。それが女優やモデルなら素直に拍手が送れるのに、同じ会社や学校や、軽い知り合いに美人がいると、心のどこかで彼女を避けたいと思ってしまうのだ。
そこで、美人に平気で近づいていくのは、負けてもスネない、負けてもヘソを曲げない心の広い人。こういう人はたぶん“苦手な女”が人よりだいぶ少ないはずである。 少なくとも、この場合は苦手の原因が自分自身にあることがわかったはずだ。だから負けても平ちゃらの、広くて強い心を持つか、さもなければ美人に負けないほどキレイになるか、それで苦手意識は克服できるはずなのである。次に、“傷つく”・・・・・・。言うまでもなく、ズケズケとものを言う、土足で踏みこんでくる相手を得意とする人はいない。これはまったくの不可抗力で、基本的に自分のほうに非はないし、こういう相手には、確かに近づかないことがイチバンなのだが、これが隣の席に座っている同僚だったりすれば、もう避けようがない。
そこで必要になるのが、人づき合いの鉄則、“相手を知ること”。この人はなぜわざわざ人を傷つける言葉を平気で吐けるのか?なぜ人に干渉するのか?それを冷静に考える。何かのコンプレックス?天性の意地悪?それともアタマが悪いの?そうやって、彼女が人を傷つけてしまう理由を分析するのだ。たとえば“正しい人が苦手”という意識は、自分がおバカで相手の基準についていけないってだけのこと。その相手には何の非もなかった。しかし、他人を傷つけるタイプは、彼女自身の問題を他人にぶつけてくるのが基本で、非はだいたい彼女にあるのだ。けれど不幸だからそうしてしまう、ある意味では、カワイそうな人・・・・・・。そう思えるくらいに、相手の心の闇を想像しておくといい。それは自分にとって“苦手な女”じゃない。ただ“気の毒な女”なのだと・・・・・・。
そしてもうひとつが、“疲れる”・・・・・・。じつはこれが“苦手意識”としていちばん厄介。なぜなら、自分に非があるわけじゃないが、相手に100%非があるとも言えない。とても単純に、“話がみ合わない”“反りが合わない”だけだったり、相手は善人、でもパワフルすぎてついていけないからの疲れだったりするからだ。男と女に決定的な相性があるように、女と女にも相性があり、肌が合わない相手もいる。これは運命的かつ生理的なもので、たぶん生涯改善しない。でもだからこそ、こう考えてほしい。合わない相手と一生一緒に暮らさないといけないなら死にたくなるが、そういう相手と関わる時間なんて、一生のうちの何百分の1にすぎないだろう。お互い、一緒にいる時間をミニマムにおさえようとするはずだし、乱暴に言っちゃえば、人間そのくらいのガマンができないとマズイ。学校給食で、どうしても食べられないヤサイがあった人も、今はその日の苦しみをなつかしく思うだろう。人間、得意なもの、好きなものばっかりだったら、いっそつまらない。人生の一時期を“苦手な相手”との短い会話に費やしたことを、年をとってから、なつかしめばいいのだ。
そして、弾丸の如くしゃべる人、相手の話を聞かない人、自分の自慢ばかりの人・・・・・・そういう相手と会話すれば、人はだいたい30分で強いストレスや疲労を感じるだろう。それでも彼女が同僚だったり、先輩だったり、“やむを得ない友人”だったりした場合、30分以上の会話を余儀なくされることもあるはずだ。でも考えてみてほしい。ストレスでは人間死なない、疲労もためなければ死なない。ストレスはほどけばいいし、疲れは癒せばいい。だから“苦手な女”がいる分、“得意な女”が必要なのだと思う。苦手科目を無理に克服するより、得意科目を増やすほうが楽しい。“苦手な女”から逃げまわるより、“得意な女”をいっぱいつくって、ストレスよりも喜びを、疲れよりも幸せ感をたくさん感じるほうに自分を仕向けたほうが得なのじゃないか。苦手なんて、その程度のもの。得意ですっぽり消し去ってしまえる程度のもの。得意が苦手を1人でも上まわれば、人づき合いに自信が持てる。それが“苦手な女”克服のいちばんの近道なのである。
“苦手な女”を手玉に取るちょっと小ずるいテクニック
“苦手な女”の中には、自分に勝ち目はまったくない相手として、厳しくて口うるさい女上司なんていうのも、当然含まれているのだろう。本文で述べたように、“すごい美人”にはそれだけで勝ち目がないと思うから、女は勝手にスネて苦手意識を持ってしまいがちだが、強大な女上司は相手に有無を言わせない。その威圧感は、放し飼いのドーベルマンが隣にいるみたい。激しい苦手感を覚えてしまっても無理はないのだ。したがってこういう苦手さの克服法はちょっとだけ方向性が違う。
わずかでも歯向かえば、5倍くらいになって返ってくる。無視もできない。とすれば残された方法はただひとつ。誉めてしまうのだ。まるっきりのお世辞では、さすがにボロが出るけれど、コワイものなしの女管理職なら、誉めることのひとつやふたつはあるはずだ。そこを大げさにならぬよう、イヤイヤに見えぬよう、過不足なく誉める。不思議なことに、もともと自信満々で着々と上に上がってきたエリートは、誉められることがやっぱり大好きで、不器用に誉めても相手をいたく喜ばせて、関係は大なり小なり良くなるはずだ。犬はこちらがコワがればもっと人間をナメる。上司と部下の関係も同様、コワがることなく近づくほどに、こちらにも苦手意識がなくなって、よけいにいい関係が生まれるはず。だから“苦手な女”は誉めるに限る。
Edited by 齋藤 薫
公開日:2015.04.23