連載 齋藤薫の美容自身stage2

セックスレス愛の時代

公開日:2015.04.23

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

“レス気味”のカップルは、”その分”いっぱい愛を語り合うべき義務がある。

今、セックスレスなカップルがじわじわと増えているという。セックスレスと言えば、これまでもちろん“夫婦”間でのことを指したが、最近ではそれが若いカップルにも広がっているという噂・・・・・・。でも、セックスレスなカップルって、それ、早い話がただの友達じゃない?と言うかもしれないが、そこが不思議、彼らはレッキとした恋人同士なのである。おそらく厳密に言えば“セックスレス気味”のカップルということになるのかもしれないが、でも結婚前からセックスレス気味になってしまう、その背景には一体何かあるのか?

そこには今、いろんな説が存在する。すぐ頭に浮かぶのは環境ホルモンの影響だが、これまで言われてきたのは、あくまでも精子の減少による“生殖能力”の低下。セックスレスカップルを生むような直接的影響があるのかどうかは不明である。“食生活の変化”も影響していないとは言い切れない。激辛ものが味覚をマヒさせるのは事実だけれども、このマヒがキレやすい人格を生むひとつの要因になっているという説もあり、人の生体に何がどう影響するのか、それはハッキリ言って予想がつかないほどなのである。かなり信憑性が高いのは、文字通りの“少子化”によって、男の子がまるで女の子のように蝶よ花よと育てられちゃった結果、女よりやさしい、そしていくじのない男ができあがり、彼らはついでに“性的要求”も減らしちゃったという説。

断っておくが、“セックスレス”という状況を生む原因はやっぱり男のほうにある。男がそれをあんまり望まないから、放っておくといつの間にか“レス気味”になっていくというしくみ。女にその気がなければ、男は浮気に走るのがオチで、きれいなセックスレス関係は生まれない。ついでに言えば、スポーツ選手のように闘争心を日頃から養っている男ほど、そういう欲求も強くなるとはよく言われること。戦後60年、平和が続いた日本には、韓国のような兵役義務もなく、闘争本能そのものが減退しているのだろう。その結果、男をやらない男ができあがるということ。

そしてもうひとつ、女が“男の体毛”を嫌ったり、“美しい男”をもてはやしたりしたことも、じつは大きな引き金となっている。“体毛”は、男性ホルモンそのものと言ってもよく、それをつるつるに脱毛したりするうち、逆にホルモンバランスに変化が生じ、男の本能がそがれていくこともあるだろうし、女が男を品定めするようになれば、ちょこっと美しい男はとことん美しくなろうとし、そういう精神性は100%女のもの、だからついでに性的要求が減退していっても何ら不思議じゃない。男が男でなくなる要因の半分は女にあり、なのである。アメリカにホモセクシュアルが多いのは、女が強くなったせいと言われるが、日本の男をレス気味にしたのも、また少し違った意味で強くなった女たちのせいかもしれない。最後にもうひとつ、ホモは知識人やアーティストに多いように、人間はモノを考え知識を得て、精神的に進化していくと、ある種のアブノーマルになりやすく、“レス気味”もいろんな意味で頭でっかちとなった人間の進化の証かも・・・・・・。

かくして続々できあがるセックスレス気味カップル。一瞬どうなのだろうと思ったけど、冷静に考えると、これ、“気味”のうちは案外よい流れなのかもしれない。少なくとも男のつまらない浮気が減ることだけは確かだし、何より“性的欲求”と“恋愛感情”を混同しない。恋愛の失敗の多くは、いっときの激情にかられたものの、あとが続かなかったというケース。それに気づかず、ズルズルと引きのばそうとするから女がキズつくのだ。それに比べてセックスレス気味の二人は、ある種のプラトニック愛だから、想いがピュア。女のほうも、“エッチしたいだけなんじゃ?”という男へのお決まりの不信感を持たず、安定した気持ちを保てるのだろう。ハッキリ言っちゃえば、女はどっちでもよかったりするから、“レス気味”でも、案外うまくいってしまうものなのだ。

そして“セックスゼロ”ではないから、結婚すれば子供も生まれるだろうし、浮気も少ないだろうから、家庭はけっこう安泰・・・・・・なんて。しかしながら、フランスあたりのカップルに比べ、日本のカップルはそういう回数がもともと少ないらしく、体温の低さからレス気味にまで至ってしまったとしたら、それで本当にいいのだろうかという疑問はもちろん残る。愛し合う者同士にとっては、しごく自然の営み・・・・・・そう思うと、やっぱりイビツ。もしもこれ、ゲームで育った世代が、人と必要以上に深く関わることをあまり望まなくなった結果だとしたら、とっても由々しき問題。人を愛するパワーの減退だったら、とっても深刻な問題だ。

何しろ生理的なことだから、ここでマズイねマズイねと言っていてもラチがあかない。“レス気味”のカップルほど、気持ちの結びつきを強く濃厚なものにしないと。その分たくさん会話しないと。その分いっぱい愛の言葉を恥ずかしがらずに吐かないと・・・・・・。でないと女もカサカサになりそうで心配。レス気味でも、せめていちゃいちゃし続けてほしいもの。

フランス人と日本人の性的意識の違いはどこから来る?

本文でも述べたように、フランス人のカップルは、日本人のカップルよりはるかにホット。“セックスレス”なんていう現実があるなど、信じられないと彼らは言う。何かそこに、フランス人と日本人の決定的なメンタリティの違いが表出している気がしてならない。日本のディズニーランドはご存知のように、何年たっても大盛況。しかしフランスにあるユーロ・ディズニーランドは必ずしも成功していないという。それもフランス人は、人工的につくられた道具を使っての、決められた遊びが嫌い。食材を持って、郊外に車で出かけて、何もないただ景色のいいところで遊ぶ・・・・・・まさしくフランスのマネが描いた「草上の昼食」みたいに。それがフランス人的な遊びの快楽。

おそらく、彼らは“想像力”という感性が強烈だから、絶叫マシンがなくても、絶叫に近い快楽を感じられちゃったりするのかもしれない。同じように恋愛においても、愛を語り、それをどんどん盛り上げて、ひとつの衝動まで持っていくためには、そういう想像力が不可欠。もしも、日本人がゲームのしすぎで、恋愛感情をていねいに言葉に変え、激情にまで盛り上げる感性のパワーを減退させていて、男も女もそのために“セックスレス気味”になっているのだとしたらコワイこと。せいぜい難解なフランス映画でも観て、衰えた想像力を目覚めさせよう。

Edited by 齋藤 薫

公開日:2015.04.23

こちらの記事もおすすめ

    You May Also Like...

    あなたにおすすめの記事

      Serial Stories

      連載・シリーズ