連載 齋藤薫の美容自身stage2

売れっ子の時代

公開日:2015.04.23

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

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売れっ子しか売れない…… それは偏差値とは別の”頭のよさ”がいよいよモノを言う時代だから

ニュース系の番組をハシゴすると、コメンテーターの顔ぶれはどの局もだいたい一緒だったりする。どこを見てもテリー伊藤、どこを見てもデーブ・スペクター、どこを見ても“高木美保”という具合。いや司会者にさえ、同じような集中は起きていて、朝から晩まで“みのもんた”という日が本当にあるらしい。そしてコメンテーターは、一般のタレントのように人気に浮き沈みがないから、寿命も長く、視聴者は何年も同じ顔を見続けることになる。でも、それが不快なのか、というとそうじゃない。いつもと同じ顔を見つけると、ザッピングがそこで止まったりするほど、むしろ安心して見てしまうケースのほうが多かったりする。TV局のほうも視聴率競争を生き抜きたいから、新鮮味や番組のオリジナリティなどそっちのけで、他にもいっぱい出ている“安心な人”を出してしまう。リスクを背負うことをしないのだ。

でもこういう状況を、“視聴率”の話だけで終わらせてしまうのは逆に間違いで、むしろ今ますます顕著になっている“勝ち組”だけが勝ってしまうしくみを、そこになぞってみるべきなのだ。女子アナの世界でも、一人ちょっと際立ってきたかなっと思うと、たちまち何でもかんでもその一人に仕事が集中している。そのカゲで社内失業しているアナもいるわけで、“会社員”にしてはあまりに過酷なサバイバルレース。どの世界も今やそういう勝ち負けが容赦なく表面化してしまう時代。それも、勝てる人しかどうしても勝てないし、受ける人しかやっぱり受けない。そこに“例外”はないし“曖昧”はないし、“間違い”もない。揺るぎない基準がそこにできてしまったからなのだ。

売れっ子しか売れない……当たり前のことだけど、じゃあその“売れっ子”と“売れない子”を分ける基準とは一体何なのか? それは他でもない、頭の良さ。ただしこれは“バカの壁”で言うところの“バカ”じゃないこと……。“頭がいい人、悪い人の話し方”で言うところの頭がいい人、を指すのだろうと思う。じつはあの2冊のベストセラーを読んで、あんまり意味がよくわからなかったという人がいる。面白くなかったという人がいたともいう。逆を言うと、あの2冊を読んで、そーそーもうホントにそーと、胸がすくような想いがする人にとって、あの内容は単なる確認事項にすぎず、2冊の言わんとすることを本当に理解してほしい人には、その本当の面白さが伝わらないという皮肉がある。ひょっとするとあの2冊は、ここで言う“頭のいい人”たちに対し、あなたは大丈夫、間違ってないよと安心させ、そして日頃、身近にいる頭の悪い人間に、見えない苦しみや迷惑をこうむっていることに対しての“ガス抜き”という役割を担ったのではないか。またそれは、大変に重要な役割だったからこそ、あれだけの大ベストセラーになったのではないか。

奇しくも2冊は、根っこの部分では同じようなことを訴えようとしているが、それは要するに、人の心がきちんと読めることを、頭の良さと言っている点。巷の、“頭のいい人”たちも日頃から何かと主張したくてウズウズしていたこと……「世の中には、物事をちゃんと考えている人と考えているふりだけしてじつは何も考えてない人がいる」「世の中には、わかってる人と何もわかってない人がいる」「世の中には、人の心が読める人とまったく読めない人がいる」。そして、みんなが口をそろえるのは、そういう頭の悪い人ほど、イバってたり、強気だったり、自信たっぷりだったりする。そして不思議に実際エラくなっていたりする。だからたまる、頭のいい人のストレス……。それを解消したからのベストセラー。

話がずいぶんと、横道にそれてしまったが、少なくともコメンテーターの“売れっ子”たちは、ここで言うところの“頭のいい人”の代表なのだ。ただし、一見“突拍子もないこと”を言っているように見えることがキモ。それでいて、じつは根っこのところで“頭のいい人”の思考回路をわずかも外していない。だから個性的に見えてじつは正論。じつはとっても正しかったりするのである。それは言ってみれば、あの怪しいほど視聴率のいい“キムタク”ドラマの手法と一緒。乱暴な言葉を使うふてくされ男がじつはとっても正しい心を持っているという、あの手法と一緒なんである。

売れっ子しか売れない時代……それは、学歴とはまったく別の、人の心がわかる頭の良さが日本の歴史において初めて、正当に評価された結果なのかもしれない。たぶんこれからもっともっと、“その頭の良さ”が大事になる。“売れっ子”への集中は、その暗示なのである。

近ごろとても気になる“高木美保”という人

ニュース系の番組にコメンテーターとして登場する女性は、作家や大学の先生など錚々たる顔ぶれだが、そんな中でも、今いちばん際立った存在になりつつあるのが、高木美保という人。女優という肩書きを持つわけだから、“異色の存在”と言っていいのだろう。最近はメガネをかけての登場が多く、うっかり見落とすところだが、この人はたいそうな美人。ずいぶん昔の『Xの悲劇』なる映画で、初めてこの人を見た時、ワキ役ながら何だかすごい演技をするすごい美人が出現しちゃったなと思ったもの。

しかしこの人が今“売れっ子”である理由は、美貌じゃなく、コメントの斬り口。この人の口から出るコメントは、いずれも独自の視点ながら奇をてらわず、知識をひけらかしもしない、あと一歩のところで自分たちが気づかなかったことをスッパリと的確な言葉をひろって見事にまとめあげる。決して難しい言葉を使わず、わかりやすいのに巧みな表現、そこにうなるのだ。

それはまさにここで言う“頭の良さ”をそっくり具現化するコメント。心の向きも、モノの捉え方も、何だか妙に正しい。だからすごい説得力。時々、そのコメントにハッとし、そしてそのたび、この人がすごい美人だったことを思い出す。この一見アンバランスな魅力を、社会性ある売れっ子の新しい条件として、私たちもしっかりマークしておかなくちゃ。

Edited by 齋藤 薫

公開日:2015.04.23

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