連載 齋藤薫の美容自身stage2

男はみんな、気が弱い

公開日:2015.04.23

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

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女にとって最悪なのは、気の弱い男がその弱さを隠す時の”から威張り”

“どんな男が好き?”と聞かれると、私は迷わずこう答える。「コワイものなしの男!!」以前はそう言うと、何それ、ヤクザってこと?と笑われたが、最近はなるほどそうかもしれないと、深くうなずかれるようになった。おそらく女性の90%以上は、男に優しくされたいと思っている。あまりに平凡すぎてバカみたいだから、“どんな男が好き?”と聞かれて、そのまま「優しい人」と答えてしまう人はさすがに少ないが、時代がどんなに変わろうと、結局のところ女は優しくされたいのだ。

言うなればそれは、遺伝子的な宿命。男に守られるためにこそ、腕力に乏しく、男に肩を抱かれるためにこそ、背が少し低くて、肩幅が少し狭い。そして男に愛され優しくされるためにこそ、女は男より美しく生まれた。そういう“女”に生まれちゃったからには、やっぱり男に優しく守られながら生きていきたいわけである。でも、ここ数年間に、女たちの中で“男の優しさ”に対する疑惑が、日々大きくなりつつある。いや、“優しい男”って本当に優しいのか?という疑問は、ずいぶん前から持っていた。でもここへ来て、優しく見える男って、じつは相当にヤバイのじゃないかという、何だかやたら大きな不安が、頭をもたげてきているのだ。いやたぶん、大地震が来そうだから、“優しい男”がどんどん怪しく思えてきたのだと思う。

どういうことかと言えば、21世紀に入ったあたりから、地球が何だか不気味な変化を見せていて、大地震はもちろんいろんな天変地異が一度に押し寄せてきそうでかなりコワイ。それこそ、人類滅亡の噂まであったりするわけで、本能的に身の危険を感じている女たちは、だから男が現実に自分たちを守ってくれるのかを考える。迫りくる身の危険が、かつてないほどシビアに男の本心を見つめ直させるのだ。

その結果、今どきの男たちはヘタをすると女を置き去りにして逃げまどい、自分だけでも助かろうとする……かもしれないという判断を下したのだろう。平成の男の優しさは、遊ぶ時に、彼女が行きたいという場所にどこにでもついてきてくれる優しさであり、“有事”に女を守ってくれる優しさじゃないことを、今の女はハッキリ悟ったのだ。戦争が終わって60年、彼らの父親ももう戦争を知らない。“戦う性”も2代続けて戦わなければもうすっかり丸くなり、弱くなる、そういうこと。いや直接的な原因は、もちろん少子化で、男の子が女の子のように育てられてしまったこと。母親の庇護のもと、甘く生ぬるく育ってしまった男の子は、必然的にいくじがなく気が弱い。仕方がないと言えば仕方がないのだが、身を挺して弱い者を守る、“強いからこそ優しくなれる”というその優しさを備えた男は、今や本当に希少価値。

でも大地震の時、我先にテーブルの下に隠れてしまうのは、逆にまだ許せる。問題は“気が弱い男”がその気の弱さを隠そうとした時。たとえば、外に行くと気弱が出てしまうのに、自分ではそれを認めたくないから、家では意味なく強気になってしまう“内弁慶タイプ”。ハッキリ言って女がいちばん選んじゃいけないのはこのタイプ。強がるだけならいいが、必ず横暴になるから。それは気が小さいことの裏返し、歪んでいるからタチが悪く、“DV”はだいたいそこから始まるともいう。  ただこういう男は、横暴と優しさを交互に使う。なぜなら気が小さいからこそ、横暴になったことで彼女が自分から離れていってしまわないかと急に怖くなり、必要以上に彼女に優しく振る舞うのだ。女はそこに引っ掛かり、別れられずにズルズル続いてしまうのは、だいたいがこのパターン。

一方、もっと広く世間に対しいつも威張っているのも、じつは気の小さい男。厄介なことに男は、男なんだから気が弱くてはいけないと思うあまり、無意識に虚勢を張ってしまうわけだが、これも強いから優しくなるのと、まったく逆の構造。しかし “から威張り”は女から見てカワイく見えることも。程度によっては許せるタイプではある。そして、気の弱さからとってもウソつきになる男もいる。「昨夜、誰とどこにいたの?」と聞かれ、一緒だったメンバーに女の子が一人でもいると、それだけで不安になって、ついつい“残業”だったと言ってしまう。本当につまらないウソだけど、そのウソがバレたらどうしようと不安になり、またウソの上塗りをするのもこのタイプの特徴で、ハッキリ言って女を守る心のゆとりなんて、生まれようがないのである。

だから、男は“コワイものなし”でないと困るわけだが、それにしても“コワイものなしの男”はマジに少ない。“ヤクザ”だって、集団で暴力に訴えるのはやっぱりもともとはコワイから?おそらく神さまは、男たちにノミの心臓の代わりに強い腕力を与えたのだと思う。度胸がない分、大きな体を与えたのだと思う。だから男はみんな気が弱い。それを知っておくと、逆に恋愛はもう少しうまくいったりするのかもしれない。

たとえば、車で道に迷った時、人に道を尋ねるのを躊躇するのは、だいたい男のほうで、女は「なんでさっさと聞かないのよ」とイラつくが、それは宿命的な気の弱さと、男のくせに道も知らないなんてカッチョ悪いという“から威張り”体質のなせる業。それをカワイイと思うくらいの寛大さを持ったほうが、女は幸せになれるのかも。いつまでも“コワイものなし”にこだわっていると、女はけっこう損をしちゃうのかもしれない。

日本の女が韓流ドラマに、純愛ドラマに、ハマる訳

日本の女たちが韓流ドラマにハマった理由を、韓国のマスコミがいろいろに分析した時、「日本はまだ男尊女卑が家庭内にもあって、女性たちがしいたげられているからだ」みたいな意見が目立ったらしいけれども、果たしてそれ、本当か?確かに、まだ一見夫のほうが強い家庭はいくらでもあるはずだが、だからと言って、女がしいたげられているから“純愛モノ”に走るわけじゃない。そんな家庭の主婦が、“追っかけ”をやれるはずもないわけで、むしろ逆。“内弁慶夫”も含め、どっちにしろ気弱な亭主が、イザという時に自分を守ってくれそうにないからこそ、韓流ドラマの、あの不自然なくらいの純愛で男が女をしつこく求め、根性で守ろうとする姿にフラフラするのだ。

辻褄をムリヤリ合わせるならば、韓国にはまだ徴兵制っていうのがあって、イザとなれば男は戦わなきゃならない。だから韓流ドラマのパターンって、だいたいが女が“弱者”として描かれ、それを男が命をかけて守って「死ぬほど愛してます」みたいなことも平気で言えちゃう土壌があるのじゃないか。日本のTVドラマに目を転じると、「踊る大捜査線」とか、お決まりの“キムタクドラマ”以外は、だいたい男がふがいなくって、むしろ女が強気だったりするパターンが基本。だからやっぱり女を守ってくれる強気の男を求めてしまう女心……納得!

Edited by 齋藤 薫

公開日:2015.04.23

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