連載 齋藤薫の美容自身stage2

イチローな女vs.マツイな女

公開日:2015.04.23

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

人はみんな天動説か地動説を生きている。

「あなたは、イチローとマツイ、どちらが好きですか?」まさにあの、日本中が久しぶりに沸いたWBC、ワールドベースボールクラシックが佳境に入った頃、某テレビ局がなぜだかそういうメールアンケートへの参加を呼びかけた。気持ちはわかるが、ああゆう時期だけに、“イチロー人気急上昇”を数字で示したい企画意図が見え見えで、多少の違和感を覚えたもの。

しかし結果は、7割近くがやっぱり「マツイ」を選び、コメンテーターが「そーなんですかねー」「わかってないなぁ」などと、私情たっぷりにコメントしていた。とまあ、世論というのは“ノリ”で簡単に動きそうでいて、意外にそうでもないということがわかった。しかしでも、そのアンケート企画の面白さは、わざわざあのタイミングに“イチローかマツイか”という二者択一をさせたことである。

二人ともスターにして成功者、いずれ劣らぬ類希な才能に恵まれた。でも二人は、本当に見事に正反対。何もかもがまったく逆、と言っていいくらい……。だから私たち女にとってどうか、男としてどっちが好きか、みたいな話でも、その二者択一は時々、俎上に載せられていた。どうしても比較され、ライバルにさせられてしまう運命の二人なのかもしれない。野球にまつわることには、とことん何の興味もないという人のために一応説明しておくと、二人とも日本が誇るスーパースターにしてメジャーリーガー。しかしイチローは“孤高の天才”で、マツイは“誠実な努力の人”……という具合に対照的。

二人の違いを端的に語るのが、マスコミへの対応で、イチローはあくまでクールでめったにインタビューに応じず、記者泣かせ。マツイはきわめてフレンドリーで、どんなに成績不振でもイヤな顔をせずに快くインタビューに応じることで有名。ところがWBCで日本代表となったイチローが上機嫌でインタビューに答え、“孤高”どころか、チームワークの素晴らしさを熱く語り、それを相当に“ヤバイ”とまで言ってのけたのだ。で、イチローも本当は熱い心の持ち主で、本当は“いい人”かもっていうこと自体が話題となったのである。でもここでこうして“バーサス”をやろうとして、初めて気づいたことがある。二人は実際はさほど対照的でなく、違うところはただ一点。“天動説”の人か“地動説”の人か、そこに尽きるということを。

つまり“天才”と“努力の人”と言っても、天才も努力を惜しまず、努力の人も天性の資質があったから、成功できた。厳密な正反対と言うなら彼らとニート君たちを対比すべきで、彼ら二人は人間のレベルから言ったらほとんど一緒なのだ。ただ一点、イチローは天動説の人で、チームはビリなのに“個人の記録”を世界一にまで導いている。今回のWBCでは一転、自らリーダーをかって出てみんなを引っぱった。しかしそれも、太陽も月もすべての星も、我が地球を中心にして自分のまわりをまわっているという、天動説の人ゆえ。逆にマツイがWBCに出なかったのは、結局のところ“ヤンキース”という所属チームに迷惑をかけられないという理由から。マツイ選手も最近“記録”をつくったが、それは500試合連続出場といういわゆる皆勤賞、記録の意味がやっぱり違う。代表になれば当然“4番”で主役になれたものを、オレさまになれない性格、やっぱり太陽のまわりを、他の星と一緒に地味にぐるぐるまわる“地動人”らしい決断だった。

違いはそこだけだが、そこだけでも大きく違う。WBCで、記者の質問にしゃべりまくるイチロー選手を見て、随分変わったとか、マツイみたいになってきた……と言ったコメンテーターがいたけれど、一見同じに見える二人の“対応”は意味がまったく違う。あれだけの人物がそう簡単に主義を変えるはずもないし、“性分”というものもまたくるくる変わるものじゃない。良くも悪くも、イチロー選手は自分のためにしゃべり、マツイ選手は良くも悪くも相手を困らせないためにしゃべってる。しゃべる内容を見れば、それはあまりに明らかだ。

そしてもちろん、どちらが良くて、どちらが悪いとは言えない。二人とも成功しているように、どちらの主義も世間に通用する。私たちも、どちらを支持してもいい。でも“天動説”と“地動説”のように、意味がまったく異なることだけは、認識しておくべきだろう。つまり、二人とも記者の質問ににこやかに答えるけれど、目的がまったく違う。それは何にでも当てはまり、たとえば、プレゼントを贈ること一つとっても、天動人は自分にしかできない贈り物で相手をびっくりさせようと思うのだろうし、地動人は相手がどんなものなら喜ぶのだろうとひたすら考える。また、大好きな友達にも、天動人なら、会いたいからと熱い想いをぶつけるように電話するが、地動人は電話一本するにも、今忙しいのではと躊躇する。相手から誘われることを待ってしまうのだ。

繰り返すがどちらが良いとは言えない。しかし、あれだけイチローブームになっても、例のメールアンケート企画で、やっぱりマツイ好きが多かったのは、動かぬ事実。だって、地動説はまっとうすぎてつまらないが、この地球にとって、天動説はやっぱり間違いだったのだから。

ナカタが選ぶ女vs.ミヤモトが選ぶ女

サッカー日本代表の中でも、“好敵手”と目される男二人がいる。何だかんだ言っても外せないナカタ選手と、ミヤモト選手。今度も主将はミヤモトになるのだろうか。でも違った意味で陰のリーダーはやっぱりナカタになるのだろうか。ともかく、まったく異なるリーダーシップを備えているからこそ、“そのへんにはいないスケールの男”二人として、私たち女はどっちがいいか?をけっこう真剣に考えてしまう。で、このコラムも“ナカタな女vs.ミヤモトな女”という内容にしようと思ったが、“ナカタなタイプの女”なんてこの世にいない。男にしか存在しえないタイプ。じゃあ男にならナカタな男っているのかというと、これも疑問。やっぱり“ナカタな男”はナカタしかいないのである。

で、妙に気になるのが、一体誰と結婚するのかってこと。ミヤモトは確か高校時代から長い長い交際を経て結婚している。わーそういうタイプが好きなの!っという人もいるだろう。片やナカタには、隣に置いておさまりのいい女がみつからない。恋人なんて各国にいそうなのに、まだ一人に決めないのは、自分に見合う女がいないから?そういう“特別な女”を目指す人もいるのかもしれない。ミヤモトのような何もかも持っている男を、若いうちからキープし続けられる女もすごいが、“特別な女”もすごい。さあ、あなたはどっちの女なら目指せるか?

Edited by 齋藤 薫

公開日:2015.04.23

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