連載 齋藤薫の美容自身stage2

別れられる女、別れられない女

公開日:2015.04.23

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

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“フラれそうになった女”は、相手を心底愛していると思いこむ。しかしそれは99%幻想。

離婚は、結婚の何倍ものエネルギーを使うと言われるのと同様、恋に落ちるのは一瞬でも、その恋を終わらせるのには、膨大な時間がかかる。だから女の人生は、“出会い方”より、むしろ“別れ方”で決まると考えるべきなのだ。つまり“人との別れ方がスマートな女は、大きな浮き沈みなく人生を歩いていくが、別れ方がヘタだと、どうしても人生スムーズにはいかない、ということなのである。別れ方はその人自身がクリエイトするものだけに、不思議にいつも同じ別れ方。いつもだいたいサバサバ別れる人もいれば、いつもだいたいドロ沼になる人もいる。だからこそ、自分なりの別れ方が運命を大きく左右してしまうのだ。

そう、別れ方がヘタな女っているもの。付き合っている時はじつにまともで賢い女が、ひとたび別れ話が出ると、別人のように“厄介な女”になってしまうことって、少なくないのだ。いくら引っぱっても関係が元に戻ることはほとんどないのに、引っぱってしまう、だから終わった時の喪失感も大きい。消耗度も半端じゃないのである。その結果、次の恋には“もっと執着してしまう。“別れるのがヘタな女”は、ますます別れられない女となっていくのである。たぶんダメになった時に誰もが感じる「私の大事な3年間を返してちょうだい」みたいな気持ちが、次の恋愛では「今度こそわずかな時間もムダにしてなるものか」と思うから、もっと執着するのだろう。

しかし、そういう人はだいたい大きなカン違いをしている。自分はこんなに彼を愛しているのに、こんなに彼を必要としているのに……そう思い込んでしまうことである。“別れるのがヘタな女”はみんなそう。相手を好きで好きでたまらないと思っている。だから別れられないのだと。でも、たぶん離れてみればわかるだろう。なんであんな男にあんなに執着したのだろうって。

つまり、別れたくないこと=相手を愛していること、そう思い込んでしまうけど、実際には、別れたくないこと=ひとりになりたくないということ。別れたくないこと=人生の予定を狂わせたくないということ、なのである。早い話が、自分かわいさ。自己愛。我がまま。なのにそれを相手への“愛”だってカン違いしてしまう。追っかけられれば逃げるのに、“逃げれば追う”の心理も働いて、フラれそうになった女はみんな、相手を心から愛してると思い込んでしまうのだ。

だから“別れられない女”が今すぐすべきは、自分の心の中を冷静に読み解くこと。とても妙だが“恋愛感情って他の感情とひどく混同しやすい。そんなのありえないって思うだろうが、恋愛感情なんて所詮はそんなもの。自分かわいさと混同してしまうほど、半分は幻想に近いものなのだ。いや、いっそこう考えてほしい。これは幻想なのだと。そして、もう“壊れてしまった恋”を引っぱることが最大のムダなのだ、ということに早く気づいて、壊れた恋はさっさと捨てて、新品の恋を手に取りたい。その時みんなこう思うはずなのだ。なぜ早くこうしなかったのだろうと。

あのブリトニーは、バランスをくずしたまま別れた夫のところに出かけていって、復縁をせまったというけれど、たぶんブリちゃんは“別れられない女”の典型。そしてアッという間に離婚して、別れの歌をヒットさせた“宇多田ヒカル”などは典型的な“別れられる女”。

もちろん中には、心底相手を愛していて別れられないという場合もあるにはあるだろうが、心底愛する相手に嫌われたら、こっちに愛があればこそ想いを断ち切ることができるはず。“別れられない女”の愛はやっぱり本物じゃないのである。

じゃあ“別れられる女”はなぜさらりと別れられるのか?これもまたひとつの自己愛なのではないかと思う。自分を大切にしてあげなきゃという自己愛……。ただ違うのはそれをしっかり自覚していること。“別れられない女”の自己愛が盲目的な自己愛なら、“別れられる女”の自己愛はていねいで冷静で賢い自己愛。ここで私が私を守ってあげずに、誰が私を守ってくれるの?というような、確信の自己愛。言い換えれば、“自信”にも支えられた自己愛なのである。

自分は大丈夫。ひとりになっても平気。私は壊れかかった恋に振り回されている女じゃない。こんな男に足どめをくらっている女じゃない。もっともっと人生の高みを求めなきゃ、そう思えるのは自分に対して自信があるからこその自己愛。話を総合すれば、“別れる時”って、自分が自分をどういう形で愛しているのか、それを問われる場面なのである。

まさにそれが幸せになれるかどうかの分かれ道。極端な話、女は別れるべき男と上手に賢く別れるためにこそ、ちゃんと自分を磨いて自信を養い、心から大切にしてあげられるような自分を作っておくべきなのじゃないか。上手に別れることが、幸せへの道だから。住まい方だってそう、物を上手に捨てられないと、家の中はアレていく。断ち切らないと生まれない“終わらせないと始まらない、別れなければ幸せはやってこない、その単純な図式に、私たち女は早く気づくべきなのである。

別れる時の別れ際あなたは何と言いますか?

最近は、メールで一方的に“別れ”を告げてきて、そのあとはもう一切連絡がつかなくなるという別れ方が少なくないのだとか。だから“別れ話”も、あんまり濃密なものにはならないのかもしれない。けれど別れ話の最後の言葉は、けっこうずっとお互いの心の中に残っていたりするもの。「どこかで会っても知らんぷりしないでね」「いつか友だちになれたらいいね」……心が落ち着いていれば、その程度のことは言えるのだろうが、多くの場合はそこまで穏やかにはなれない。かと言って、「一生うらんでやる」とか「幸せにだけはならないで」なんて、いくら手痛くフラれたとしても言えない。最後の言葉って、その場に置かれてみると、案外難しいものなのだ。

で、そんな統計があるわけではないけれど、フラれるのでも、フルのでも、最後の言葉としていちばん評価が高いのが、じつは有名な名言、「今度生まれ変わっても、また会いたいね」。「生まれ変わったら、ぜったい一緒になろうね」はいくら何でもウソくさい。でも、「生まれ変わってもまた会いたい」なら、現世での別れには存分に納得しながらも、好きになったことは後悔していないという意味で、これは相手にとっても自分自身にとってもいちばん後味のいいひと言。女は別れても相手の心の中にふんわりと存在感を残していくべきだからこそ、そのくらいのひと言は用意しておきたいもの。

Edited by 齋藤 薫

公開日:2015.04.23

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