
人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。
女を末長く愛してくれる、女にとって”理想の男”は、”女を尊敬できる男”である。
だいたいが、“三高男”も“三低男”も、理想の選択ではないこと、女たち自身も充分わかっているはずだ。と言うのも、女はみんな子供の頃から、潜在意識の中で“王子さま待ち”してる。王子さまとは、“シンデレラ”にも“白雪姫”にも“人魚姫”にも、なぜか必ず登場してしまうハッピーエンドの切り札。しかし大人になるにつれ、そこに現実味がないことがわかってくるから、今度は一転、理屈に走る。自分を幸せにしてくれる条件を箇条書きにする。理屈抜きの理想を捨てて、割り出した条件がかつての“三高”だったわけだが、十数年を経て新たに提唱された“三低”は、諦めだらけ。どうせ“理想の男”になど出会えるはずがないという諦めがもたらした条件……。
でも本当に理想は叶わないのか?そもそも理想の男が“王子さま”の姿なんか借りているから、話がややこしくなるのであって、私たちの理想って、本当はもっと身近なものなのじゃないか?“三低”や“B専”など、理想が低くなるばかりの今こそ、女にとっての“理想の男”を、私たち女はもう一度定義し直すべきなのである。「この人といると、自分がいちばん“自分らしく”いられるんです」。結婚が決まった女性の、3人に2人はそう語る。一見わかりやすいが、よく考えるとじつに曖昧。“いちばん自分らしくいられる”って一体どういうことか、ちょっと突っ込んで考えてみた。
自分らしくいられるって、もちろんひとつには疲れないこと。ラクであること。でももっと重要なのは、自分がいちばん“好きな自分”でいられるってことではないのか?男によって女は変わる。心優しい正しい女性にもなれば、悪態ばっかりついている間違った女にもなってしまう。私たちが考えている以上に、女は男しだい。ただしそれは“男の思い通りの色に染まる”のではなく、女はもともといろんな側面を持っていて、男の出方や相性によって出てくる顔が違うのだ。天使が出てくるかと思えば、悪魔が出てきたりもする。自分でもそれをコントロールできないのが、男の前での女なのだ。
たとえば生まれてから28年、本当にバランスのとれた心穏やかな女性として生きてきたのに、ある男と付き合ったことで、自分の知らない“鬼のような女”が不意に顔を出すってことも起こりうる。もっと単純に、大事にされすぎればつけあがり、冷たくされれば下手に出て……と、気持ちの駆け引きが女をくるくる変えてしまう。さらには、好きすぎると、バランスの悪い女が出てしまい、好きになられすぎれば、横暴な女が出てしまい……と、人格まで切り替わるのが、男の前での女なのだ。だからこそ女は、相手を選ぶのじゃなく、自分を選ぶべき。誰と一緒にいる時がいちばん“素直な女”でいられるか、“理想の自分”でいられるか、そこを選ぶべき。“理想の自分”でいられる時、女は長い目で見て結局いちばん幸せだからである。
いちばん好きな人といる時がいちばん幸せって、女は単純に思ってしまうけれど、それって長い間には女のほうに金属疲労が出てきてしまう。「いちばん好きな人じゃなく、2番目に好きな人と結ばれるのが理想」なんて言われるのも、自分が疲れ切ってしまわず“いちばん、いい自分”でいられるからに他ならない。相手を選ぶのではなく、自分を選ぶ……ちょっと心がけてみてほしい。自分がいちばん好きな、いちばん正しい自分でいられる男が結果、“理想の男”でもあるはずだから。あなたにとって。
そしてもうひとつ、すべての女にとっての“理想の男”の条件をひとつだけあげておこう。それは“女を尊敬できる男”であること。イバる男も、だます男も、うそつきの男も、女を尊敬していない。また働かない男も、束縛する男も、平気で浮気ができる男も、もちろん女に暴力をふるう男も、女に暴言をはける男も、みんなみんな女を尊敬できない男。言い換えれば、“女をちゃんと尊敬できる男”は、逆に女のほうから見ても、ちゃんと尊敬できる男であるはずだ。職場でも、「女の人ってすごいよね」「女のほうが、優秀だよね」、と臆せずにそう言える男の上司や同僚ほど、じつは優秀だったりするもの。
同様に、女はちゃんと“大人の女”が好きな男を選ぶべき。20代の女しか興味がない、“女は30歳まで”って思っているような男は、要するに女を尊敬できない男。女はむしろ30歳から……って、そのくらい言える男じゃないと、女への尊敬なんて期待できない。そして、そういう男じゃないと、末長く愛してもらえない。女を“理想の女”にしてくれるのは、女が歳をとるほどそのぶんちゃんと評価を高めてくれる男に他ならないのだから。逆を言うなら、30歳を境に寄ってくる男の種類が多少とも違ってくることを、私たち女も存分に意識して生きていきたい。
つまりは、20代のうちに焦って男を選ぶことはない。自らが“大人の女”になってから冷静にじっくりと選んだ男のほうが、“当たり”が多いに決まっている。そういう意味でも男選びは急いではダメ。結局のところ、自分自身もちゃんと“大人の女”になってからじゃないと、正しい男が見えてこないし、寄ってこないだろう。すべては、これからなんである。
もっと詳しく検証。“年上の女”好きが狙い?
世の中には結構いる。自分がいくら歳をとっても“女は30歳まで”と思ってしまう男が。自分が40代になっても、20代の女しか“女”と見ない、30歳を越えた女はもう女じゃないと思ってしまう男が。そういう男は要するに、女を徹底して外側からしか見ないから、どんな女からも“理想の女”を引き出せない。女たちに“一緒にいていちばん自分らしくいられる人”とは、どうしても思わせられないはずなのだ。逆を言うなら、自分が20代のうちから“30代の女”を好きになれる男は、結構狙い目。女を“女”としてより“人”として見る目をちゃんと備えている証だから。
こういう男を単なる“年上の女”好き……と片付けてしまうのは、ちょっともったいない。10代で20代の女を好きになるのは単なる憧れでも、20代で30代を好きになるのは“大人の女”へのある種の尊敬を含んでいると見ていいからだ。女はだいたいが、キレイになれば必ずモテて、必ず幸せになれると思っているけれど、キレイにならないと寄ってこない男には、じつは十分に注意すべきなのである。
そういう意味では、女はただ単にキレイになるだけじゃなく、キレイになったら、なったぶんだけ、“女を尊敬できる男”を引っぱれるくらいの中身を養うべきなのだ。でないと、幸せは長続きしないと心得よう。
Edited by 齋藤 薫
公開日:2015.04.23