1. "成功"を諦める幸せもある

斎藤薫の美容自身2

2015.04.23

"成功"を諦める幸せもある

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

現実的な夢と、遠い夢。女の夢は"二重構造"。その狭間でもがくから、女は美しくなる。

少女の頃、あなたは何を夢見ただろう。モデルやタレントや女優になりたいと、そう思った人もいるだろうし、フライトアテンダントや外資系企業のPR、できればアナウンサーと、女の花形職業に憧れた人もいるのだろう。またもっと漠然と、女として“何者”かになる夢、注目される夢、セレブになる夢を持つのは、女の生理みたいなものだった。けれども、「将来何を目指しているの?」と聞かれると「保母さん」と答える。それもまたウソではない。女の夢って、気がつけば“二重構造”になっていて、現実的な夢と、なれるものならなってみたいというような、ちょっと遠い夢を併せ持っている。どこかで“叶うかも”と信じて諦めない。

しかし、サッカー選手やミュージシャン、時にはホリエモンみたいになりたいと思う“男子の夢”よりは、もう少し現実的なのかもしれない。“男のロマン”とは言うが“女のロマン”とは言わないように、女は“向上心”を栄養分にして生きている生き物。だから遠い夢とはいえ、男のようにそれはそれ、と分けては考えない。いつも頭の片隅にあるのが、もうひとつの夢なのだ。うすぼんやりとでも、もうひとつの夢を心に潜ませながら今を生きているのが、女なのだ。逆に言えば、それが女の向上心を作っていると言ってもよく、露骨な成功願望などはなくても、「私はたぶん今のままでは終わらないと思う」というゆったりとした野望が心の中にいつも息づいている。だから女の多くは知らない間に、上へ上へと引き上げられ、年齢を重ねるほどにキレイになり、有形無形に伸びていくのである。

もちろん、その遠いほうの夢をきっちり現実のものにしてしまう人もいるし、逆に子供の頃からムダな夢は一切持たずに、つねに今の立場に満足してきたという人もいるのだろう。でもたぶん女は何らかの、漠然とした“遠い夢”を持って生きていたほうがいい。捕まえられない蝶々を追ううちにこんな遠いところにまで来てしまったという、そのカンジが、女の人生には必要だからだ。多くの女性が、20代と30代、何かに突き動かされるように自分を磨いたり、転職を繰り返してしまったりするのも、二重構造の夢の狭間で多少とももがくからなのだと思う。それを苦しいと思う日もあるけれども、結果的にはそういう経験が、中身のつまった女を作っていく。だから二重構造の夢に惑い続けるのは、決して悪いことじゃない。むしろ、全然いいこと。

そして“うすぼんやり”とでも遠い夢を持っていたほうがいい理由がもうひとつある。それは、その遠い夢をいよいよ諦めるという時、女には予想もしなかった“幸福感”が訪れるからなのだ。女が遠い夢を諦める時って、必ずそれと引きかえに別の現実的な手応えを感じている時であったりする。たとえば「私、このままじゃ終わらない」「私の居場所はここにはない」、そう思っていた仕事に対し、ある日突然、大きなやりがいを感じるようになったりすること。すると今まで何をしても消えなかった心のモヤモヤがすっと晴れていく。それは、遠い夢の呪縛から解き放たれたことを意味し、同時に本当に自分が座るべきイスを見つけたことも意味してる。