連載 齋藤薫の美容自身stage2

女のイス取りゲーム あらためて、女子アナは得か?

公開日:2015.04.23

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

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一見とても幸せそうで、実のところ、とってもしんどいのが“女子アナ”である。おそらく、女の仕事としては最高峰。美貌と知性と、何らかのプラスアルファを備え、その上でものすごい倍率を勝ち抜かなければならない最高難易度の仕事。その日から“女優の卵”とでも何でも言ってしまえる女優より、はるかにはるかに選ばれた特A中の特Aランクの女性たちと言っていい。とりわけ、美しい声で“しゃべれること”は、女の格をもうワンランク上げるから、やっぱり“女子アナ”が女の一等賞であることは間違いないのだ。

しかしその割に苦悩が大きすぎ。“座れる席が限られている”からだ。一般企業と違って、どんな不況でも“新人”が増えていくのに、イスは増えない。毎シーズンがまるでイス取りゲームみたいなレギュラー取りは、ちょっと想像を絶する。しかも最近、待遇的にますます一般社会とズレてもきている。30歳でもう“お局化”して、引退を考えざるを得ない環境であること。それって、今どきありえない。あまりに早すぎる。

少し前まで“美人女優は40歳で引退”と相場が決まっていたハリウッドだって、40代女優がいちばん幅をきかせている時代、なぜか日本の女子アナ界だけが、時代とズレまくっている。“女は若いほどいい”という古い古い男社会も、TV界の構造上どうにもならないことなのかもしれない。でも、少なくとも知恵を使う仕事は30代からが本番であるべき。一等賞の人たちがそこで早くも女子アナ生命が問われるような岐路に立たされるなんて、理不尽きわまりない。もしこんなにも早急に追い立てられる仕事でなければ、あの川田亜子さんの悲劇もなかったかもしれないのにと思う。あの人はまだ29歳だった。ファンでなくても、その死を何ともったいないと思ったはず。とても単純に、もっともっと頑張りたくて仕方がなかった人が、自分で自分の人生を終わらせてしまうのは、何とも忍びない。そんなに急いで決めなくてもよかったのにと強く思う。

女もどこかの時点で、世間からの評価を甘んじて受け入れなければならない時が来る。で、昔は確かにその評価が20代で下されたから、みんな30前までに何らかの手応えが欲しくて焦ったと思う。でも今は、そんなに早く評価は下らない。“自分はこのくらいの女”という自己採点をするのも、もっともっと先でいい。40代で大成する人もいれば、60代で大成する人もいる。だからもう、いつまでっていう期限はないのだ。それを強制的に早められてしまう女子アナって、やっぱりきつい。20代が最高点、っていう仕事はつらすぎる。だからあえて女子アナの人にも言いたい。自分の採点はもっと先ですればいい。今は、じっくりゆっくり、自分を高めていけばいい。一生かけていい点を取れるようにって。自分はどのくらいの女か、一生かけて、考えればいいのである。

「”自分はどのくらいの女か、それは一生かけて判断すればいい。急いで採点してはいけない”」

Edited by 齋藤 薫

公開日:2015.04.23

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