
人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。
今の40代がまだ若かった頃、日本は“成功したい女”だらけだった。女子大生ブームやOLブームなど、つねに注目を浴び続けたこの世代にとっては、「私なら何だってできる!」ととことん強気に攻めてしまえる環境にあったのだ。じゃああの頃の“成功したかった女”たちは、今一体どうしてるのだろう。もちろん、ちゃんと成功を果たし、“実業家”になって、文字通りのセレブ生活を送っている人もたくさんいるけれども、一度成功はしたものの、その状況をキープできなかった人もまた、たくさんいる。
“成功”というのも“幸せ”と同じで、永遠のものじゃない。成功することそれ自体よりも、それを維持していくことのほうがむしろ難しかったりする。だから予想もしなかった逆転負けを味わっている人も少なくない。もちろん次の成功、また次の成功とチャレンジしつづける人もちゃんといるが、成功の儚さを思い知った人はきっと少なくないのだ。しかも“過去の栄光”は逆に人を苦しめる。“昔一世を風靡して消えた芸能人”みたいに。こんなことなら、成功なんてしなきゃよかったと思う人もいるのだろう。自信とプライド、両方がキズついてしまうから。
ところが、これに反してまったく“元気”なのが今もなお“成功したい女たち”。まだ成功していないから、成功したいエネルギーは温存され、それが年齢とともにいい具合に熟成してきて、“なんにも諦めない女”の生き生きした生命感やツヤめきになっていたりする。いつまでも成功できない男はくたびれていくが、いつまでも成功できない女は、歳をとるのを忘れ、いよいよ自分を磨こうとする。すべてはこれから、くたびれているヒマはないからなのだ。そもそも女が成功したいのは、富を得るためじゃない。むしろ純粋な向上心。わりに動機が不純ではないから、ちゃんと輝き続けるのだ。かえって早く成功してしまった人よりも。だから、成功なんてしなくていい。
さて、彼らに続く世代はもっとずっと冷静。むやみやたらに“成功したい”と張り切らず、静かにチャンスを待っている。というより今、新しい向上心を持つ女性が増えているのか、今の30代の夢No.1は、「社会起業家になること」だったりするのだ。NPOなどを立ち上げて社会のために何らか貢献すること。なるほど、これならば成功不成功を問わず、挫折感も少なく、つねに新しい目標を持ち続けられる。だって目標は、 “自分の成功”じゃなく、“社会の役に立つ”という壮大かつ曖昧なものなのだから。しかも得られるのは優越感より浄化感。これが正しい成功の捉え方なのだ。終わりのない目標をもって生きたほうが、人生うまくいくって知っているのだ。まだ成功などしなくていいって気づいているのだ。それもまた女の進化。進化した女たちは、だからこう思ってる。成功なんて死ぬまでにできればいいのだと。
「成功は、果たすより続ける方が難しい。だから成功した女より、成功したい女」
Edited by 齋藤 薫
公開日:2015.04.23