
人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。
女の成功願望は、純粋な向上心の表れと言ったけど、それは“自分はどこまで行けるのだろう、一体どれほどのものなのだろう”その可能性を見てみたいという純粋な気持ち。あるいはまた女にとって成功は自己表現の重要な手段でもあったりする。女にはもともと自分をちゃんと見てほしいという本能があるから、自己表現の場をいつも求めている。仕事もそのひとつ。だから成功は、自己表現の大舞台なのである。さらに、女にとって成功は “幸せになること”と等しい。幸せになりたいと思うのは、女のDNA。昔の女は、幸せをじっと待ったが、今の女は幸せを自分でイチから組み立てようとするから“成功=幸せ”となる。
ついでに言えば、女がキレイになりたいと望むのも、やっぱり“成功願望”のひとつ。そう考えると、女の成功願望はじつにまっとうな女をつくるし、どんなに日の当たらない場所にいる女もちゃんとキラキラ輝かせる、絶対の決め手にもなってくる。それじゃあ、女がまともな成功願望を持てなかった時、あるいは歪んだ成功願望を持ってしまった時、一体どうなるのか? そこで思い出されるのが、前代未聞の結婚詐欺容疑の“34歳の女”。
謎なのは、“あの女”は一体何のために詐欺を繰り返していたのか?少なくとも“幸せになるため”じゃない。“成功するため”でもない。高額な料理講座を受けたり、ブログで自分のことを丁寧にアピールするのは向上心であり、自己表現にも見える。けれどキレイになりたいという女として当たり前の欲望を持っていない。どこかで諦めたのか、いつかまとめて全身整形でもしようとしたのか、まったく手つかずだったりする。そもそもあんなにいろいろ計算し、いろんな小細工をしながら“幸せになりたい”と思っていないのは不可解すぎるのだ。一体この女は何がしたかったのか? ベンツに乗り、ブランドの袋だけをネットで買っていたのは、ひたすら自己顕示欲に見えるし、料理の腕を磨いたのは、どこか花嫁修業のよう。目的がまるで見えてこない。彼女が思う“成功”とは、一体何だったのだろう?
だから改めて思ったのだ。女はまっとうな成功願望を持っていないと、断片的な欲がバラバラな女をつくってしまうこと。最低限の二大欲をどこかで捨ててしまうと、女としてとんでもなく歪んでいくこと。もちろんこの女の例はあまりにも特異。そこからは何の教訓も得られないが、でも女は女として当たり前の欲を持っていないと、まったく不健全な女になっていく。それだけは確かなのだ。向上心を持ち、自己表現したいと望む、もちろんキレイにもなりたいし、幸せにも絶対なりたい、それらを総合して人生に成功したいと思ってる……それが女の正しい心のバランス。そのうちひとつでも欠けると変なほうへ行くか、あるいは何にでも億劫な生気のない女になっていくか、どちらか。女を正すのは、やっぱりふつうの成功願望、これだけはいつまでも持ち続けるべきなのである。
「幸せになりたい、キレイになりたい……女の二大欲を持っていないと、女は危ない」
Edited by 齋藤 薫
公開日:2015.04.23