連載 齋藤薫の美容自身stage2

ゆっくり幸せになる人と、急いで幸せになる人、どちらが得か?

公開日:2015.04.23

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

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“幸せ=結婚”では、もちろん全くない。なのに、不幸な結婚で失敗している人さえ、尚も“結婚=幸せ”と思ってしまうのは、たぶん幸せにはもともと実体がなく、“形ある幸せの標本”が結婚くらいしかないからなのだろう。だから幸せを急ぐ人は、必然的に結婚を焦り、20代から焦り、すぐに相手が見つからないとなおさら“幸せ=結婚”と信じて疑わないようになる。従って首尾よく結婚できたら、それから10年くらいは幸せの自覚をもって生きられるのだろう。でもいつの日か、きっとこう思う。私は本当に幸せなのか? 当然だ。本来“幸せ=結婚”ではないのだから。でもその分、その人は早く“幸せの正体”を探し始めるから、幸せを急ぐ意味は大いにある。なぜなら女はひたすら“幸せになりたい性”。幸せに到達してしまってからより、「幸せになりたいなりたい」と幸せを夢見ている時の方が、じつは人生が充実するからなのだ。

人生にはふたつの不幸が尽きもので、ひとつは目的が果たせなかった不幸、もうひとつは目的を果たしてしまった不幸……そんな言葉があるけれど、女の人生にも、幸せになれない不幸と、幸せになってしまった不幸とがあって、女がいちばん幸せなのは、“幸せになりたい”と幸せ探しをしている時なのだ。そう、幸せは家のインテリアみたいなもの。あれこれイメージして家具を揃えている時が最高で、完璧なインテリアができあがってしまうと何だかがっかりする。だから、その道のプロは言う、「インテリアは決して成功させちゃいけない」って。完成させずに、ああでもないこうでもないと、悩んでいるのがいいのだと。同様に“幸せを急いで前のめりになるくらい”に幸せになりたい女の人生は、結果としてつねに前向きで、充実したものになるはずなのだ。

でも、たとえば“夏木マリ、60歳の結婚”に女は、みんな猛然な羨ましさを感じた。なぜか?大人として成熟しきってからの結婚ばかりは、“幸せ”とイコールで、そういう幸せほど一過性じゃなく長続きし、死ぬまで続くものと、みんな薄々気づいているからなのだ。そもそも“終わり良ければすべて良し”。人生の最終章で幸せと思えた人がいちばん幸せだと、みんな何となく知っている。これが“ゆっくり幸せになる人”だけに許された人生だとしたら、やっぱりこっちの人生の方が心地よさそう。だから激しく羨ましいのだ。

幸せを急がず、でもきっといつかは幸せになれると、心の奥の方でずっと思い続けていること、それもまた見えない心のハリになるとても重要な感情。でも大切なのは、途中でイラついたり、投げやりになったり、悲観的になったりしない“安定した心”をもち続けられること。それ自体がじつはもっとも幸せなことなのかもしれない。だから急いでも、急がなくてもいい。問題は幸せになりたい前向きな心をいかに維持できるか?完成しないインテリアに手間取り続ける人生が、じつはいちばん幸せなのだから。

「女はひたすら”幸せになりたい性”。なりたいと思い続ける人生こそ幸せ」

Edited by 齋藤 薫

公開日:2015.04.23

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