
人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。
“恋愛と勉強どちらが大事?”という日本の高校生へのアンケートでは、「恋愛」と答える人数で、男子は女子を上まわるらしい。一説に「デートと残業どっちを取る?」でも平然とデートと答える若手男子は女子を上まわる。気がつけば女の方が、“恋より仕事”の国になっていた。女は男より、出世欲は少ないが責任感は強い。だから未来に夢がもてない時代ほど、女の方がよく働くのだ。
しかし、あの“澤選手”が“結婚よりもサッカーを選んだ”との報道は、やっぱりどこか切ない。米プロリーグがなくなって、サッカーを続けるにはアメリカ人の恋人と別れて日本に帰ってくるしかなく、まさにやむにやまれず仕事を選んだ人。ある大物女優も恋するたびに、「女は仕事と結婚を比較しちゃ絶対にダメ。この男より仕事の方が大事と結局“仕事”を取っちゃうから、私は結婚できなかった」と言い切った。男はまだ自分に自信がもてない時に、結婚より仕事が大事と言い放つが、女は“責任感”で仕事を選んでしまう。だから女が仕事を選ぶのって、ひどく切ないのだ。出産も“今は産めない”と、責任感で後まわしにすると機を逃しかねないから、女は結婚も出産も、できる時にしてしまうべきと言われる。
ただ、それこそ澤選手のように、結婚を諦めてまで選んだ仕事には、簡単には諦めない重たい意欲が生まれる。つまり、“結婚を犠牲にした”という意識はものすごいエネルギーになるから、自ずとすごい仕事ができてしまう。女が結婚と仕事を天秤にかける時には、どっちにしろ人生がかかっているから、すごいパワーが生まれるのだ。でも逆に言うと、女が男と別れて、一時的にでも“幸せの可能性”を絶たれた時、確実に女を救ってくれるのも、やっぱり“仕事”である。恋愛がうまく行くと、仕事もうまく行くが、恋愛がダメになればなったで、仕事は女を支えてくれる。まるで“親の存在”みたいに、女をいつどんな状況でも救ってくれるのが、じつは仕事なのである。
じゃあ女にとって仕事って何か?と言えば、まずはやっぱり“責任を果たすこと”。でももうひとつ、仕事には生きる上での貪欲さが託される。人の役にたつことと、自分の欲や向上心を満たすふたつの感情。でもふたつが毎日を支えてくれるから、女はちゃんと生きていけるのだ。どっちかを失ってしまったら、どっちも失ってしまったら、やっぱり心は折れてしまう。どちらも強いから女はニートにならないのだし、女の人生には、貪欲さと責任の両方が絶対に必要だから、みんな働くのだろう。
ちなみに、いちばんいけないのは、終わりかけの恋愛にしがみついている状態。こればかりは仕事にも差し障り、本来の責任感も生まれてこない。大丈夫。恋を終わらせることがいくら辛くても、仕事があれば立ち直れる。そういう時にだけ、女はあえて男より仕事をとるべきなのだ。毅然として。
「いつ何どきも、女を救ってくれるのは意外にも仕事である」
Edited by 齋藤 薫
公開日:2015.04.23