
人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。
今のAKBの上位メンバーたちの異様な頑張りを見ていて、ちょっと懐かしい気がした。ひと昔前の女たちの、“がむしゃら”さによく似ていたから。いわゆるバブルのまっただ中に社会に出た女たちも、頑張れば何でも手に入ると思っていた。当然のように、隣の女との間にいろんな軋轢も生まれ、だから余計に強くなって、もっと頑張ってしまうのだ。でもなぜそんなに頑張るの?というなら、やっぱり“イチバン”になりたいから。少なくともAKBは、グループ内でも、またこの世界でも“イチバンになること”そのものが仕事のようなタレント。イチバンになる努力と苦悩と情熱は確かに圧巻。かつての日本の女も同じだった。
あの頃に比べると、日本の女は“がむしゃら”じゃなくなった。でも頑張るのをやめたのかというとそうじゃない。頑張る人は、音もなく静かに頑張っている。新しい形の頑張りがそこにあるのだ。イチバンになるための頑張りじゃないから、ぶつかり合いもない。頑張らないと気がすまないから頑張るだけ。ひたすら“ちゃんと生きるため”。不景気になったり、大震災があったり、日本がヤバイと言われたり、みんな少しずつ“不安”を感じ、ほどほどに自信を失っているから、そういう時ほど人はちゃんと生きたくなり、心静かに頑張れるのだ。
結果を求めないから不思議に挫折もしない。つぶれることなくずっと頑張れて、だからいつの間にか、いろんなことがうまく運ぶ。今、人生うまく行く人は、みんなこのタイプ。そしてこういう人はたぶん、いつも「どこかで誰かに見られているから」、ちゃんと生きなきゃと思うし、頑張れるのだろう。“どこかで誰かに見られている”と思うと、人はズルくも意地悪にもなれなくなる。部屋を散らかし放題にできなくなる。レースのほつれた下着はつけられなくなる。いい加減にもなれなくなる。生きる上で一瞬一瞬に、手を抜けなくなるのだ。
さらに決定的なのは、今、キレイな人って要は、生きていくことに手を抜いていない人。だからこそ、“誰かに見られている”という感覚をつねにもっていることが重要なのだ。人は“誰にも見られていない”と思った時瞬間、生き方から立ち居振る舞いから容姿まで、すべてが乱れ、崩れていく。知らず知らず人にもぞんざいになっていく。だから人生うまく行かなくなるのだ。昔は逆に、「私を見て見て」と、女たちがみんな思ってた。でも今「自分は誰にも見られていない」と思い込む人が多くなり、自分に手間はかけるが、他人の目は気にしない。どうせ見られていないと思うから。でもそれでは手間をかけてもかけても女はだんだんくすんでいく。女はひとりよがりに生きては絶対にダメなのだ。自分が自分を好きならそれでいい……は間違い。
一歩外に出たら、いつも誰かにどこかから見られていると思ってほしい。そしてひとりでいる時、誰もいない時は、上から誰かが、即ち“お天とう様が見ている”と考えてほしい。すると放っておいてもステキになり、自然にキレイになり、しかも生き方がちゃんとする。とても素直に頑張れる。人生必ずうまく行く。そんな簡単なこと?と言うかもしれないが、そんなに簡単なことなのだ。ちゃんと生きるって。
「いつも誰かにどこかで見られていると思う人だけが素直に頑張れて、人生うまくいく」
Edited by 齋藤 薫
公開日:2015.04.23