
人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。
あなたは今、“いっぱいいっぱい”だったりしていないだろうか?ストレスは溢れてしまってから初めて気づくものだと言われるから。ストレスの多くは、目に見えないし自覚症状もない。けれども確実に胸の中にたまっていって、知らないうちにいっぱいになり、そして何かの拍子に溢れ出てしまう。それからでは遅いから、時々確かめてほしいのだ。今どのくらい、たまっているか?不思議なもので、本人にその自覚がなくても、満杯の時は、周囲の方が気づいている。とんでもなく前向きでエネルギッシュに見える人ほど、危なかったりすることを。たとえばレディ・ガガ。あれだけパワフルな人も、そのカゲでは救急車でよく運ばれていて、主には過度なダイエットのせいと言われるものの、本当は溢れる寸前なのじゃないかという説もある。浜崎あゆみの“結婚離婚”にも、溢れそうな水を強引に抜いた危うさを感じた。どこの国でもトップを張る女は、基本的にいっぱいいっぱいなのである。
しかし同じトップを張っていても、AKBは“総選挙”とやらで泣き叫ぶことができる分だけ幸せだ。 “いっぱいいっぱいな女”ほど、平静を装わなきゃならない立場にあるからだ。特に女は2つ以上の問題を同時に抱えることにとても弱く、恋愛もうまく行かないのに、仕事でもミスするとすぐに満杯になり、それでもって駅で転んだりすると、そのまま突っ伏して泣き続けたくなってしまう。でもそうやって一度自分を壊してしまってからでは遅いのだ。
一時期、“激太り”をして、ついに休業してしまった“あの人”の動向が今、心配されている。まさかああいう人が、とこれは意外だった。でも女たちにはわかるのだ。どんなに賢くて仕事ができて、キレイで好感度も高くて、何より心が安定していて大らかそうで……そういう人でも、人生の一時的な不具合で、たちまち満杯になるのだということが。でもだから今回のことで思い知るのは、やっぱり決して、“溢れさせてはいけない”ということ。考えてみると、満杯になった心を溢れさせてしまう女は、みんな自らの手で決壊させている。ブリトニー・スピアーズも、エイミー・ワインハウスも、そしてデミ・ムーアも。結局はみんな、自ら一線を超え、崩れていくのだ。一度決壊させると、元に戻すのは大変。とても時間がかかることを学ぶべき。
もちろんこの人たちのケースは極端だが、誰もが陥る満杯の状態。その時に自分を守れるのは自分だけだということも知っておくべき。自暴自棄になることはもちろん、仕事を休んでしまったり、生活を自ら乱してしまったり、誰かと言葉でぶつかったり、決壊のきっかけを作ってはいけないのだ。満杯なのは見えないストレス。心の中で生まれたものは、心の中で消すしかないし、ストレスでにごった満杯の水も、やがては必ず引いていく。だからひとりきりで一度だけ思い切り泣くのはあり。そういう涙にはストレス物質が溶け込んでいるから、気がつけば水が抜け、心が落ち着いていく。水はちゃんとどこかへ流れていくのだ。それを心静かに待ってほしい。大切なのは自分が壊れた姿を人に見せないこと。見せると女は後戻りできない。見せないことが心の歯止めになるのだ。やがて水は必ず引いていくのだから。
「水は必ず引いていく。だから自分が壊れた姿を決して人に見せないこと」
Edited by 齋藤 薫
公開日:2015.04.23