
人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。
案外“イイ男”なのに、恋愛らしい恋愛もせず、結婚する気も今のところ皆無……そういう30代40代の男は、今どき山ほどいる。なぜ? と聞くと、多くの男は今こう答える。「面倒くさいから」。あるデータは、今の独身男性のテストステロン(男性ホルモン)の量は、20年前の6割くらいに減ってしまっていると伝えた。恋愛にも女にも一生懸命になれない体質になってしまってるわけで、もちろんそういう去勢されたような“面倒がる男”にわざわざ好かれようとは思わないけれど、現代の日本ではどうもこの“面倒くさい女”こそがNGワードのようで、彼らの視点も侮れない。
左ページで、今モテるのは“面倒がらない女”と言ったが、ここでいう“面倒くさい女”もある意味、手を抜かない女と言えるのかもしれない。そう、自分には絶対手を抜かない女。人とていねいに関わるのは同じでも、相手を見ているか、自分を必死で見ているかの違いがある。いや、ひとりで黙々と自分に手間をかけている女は何の問題もないのだ。問題なのは、自分に一生懸命だからこそ、好きな相手に自分を押しつける女……。
約束していた日に、風邪をひいて今日は行けないという男に、お弁当を作っていきなり持っていくのは、自分に必死の女。「やっぱり私のことがイヤなんだ」といじける女も、じつは自分に手を抜けない女。だったら、よく効く薬があるから持っていくという女も、迷惑だろうからじゃあ送るねという女も、じつは自分に一生懸命。本人も気づいていないが、ほとんど自分のための行為だからである。じゃあどうしたらいいの?と途方に暮れるはずだ。風邪ごときで約束を果たさない男には、「お大事にね」で充分なのである。もちろん「いつ治るの?」なんて聞かない。ここでは放っておくのが、面倒くさくない女。
しかし、まったく逆の“面倒くささ”もある。ストレートに自分ばっかりな女。“自分の話”ばかりの女。“愛してる?”が口グセの女。「白雪姫」に出てくる継母みたいに“この世でいちばん美しいのは誰?”としつこく聞く女。料理を作れば「おいしい?ねえ、おいしい?」と何度も聞き、家中を掃除すれば何時間かかったのかを、何度も強調する女……。他人の自己顕示欲はおしなべて面倒なものだから。もちろん、「夕べはどこに誰といたの?」と3回は聞く嫉妬深い女も同様。嫉妬深さも自分に一生懸命の裏返しだから。“面倒くさくない女”でいるのって、何と難しいのだろう。かと言って、相手に無関心だったり、関わりがぞんざいになったらいけない。人との関わりを面倒がらない女がイイ女なのだから。面倒がらずに生きてるのに、自らは面倒くさくならない女……そのバランスを死守すべき。
ちなみにやたらマナーにうるさい女や、ひとりだけ言葉づかいがいい女、体裁をつくろう女は女にも面倒がられ、気がつけば孤独になっている。ところが、面倒くさい女は、自分自身はとても幸せだと思いこむのもひとつの特徴。面倒くさい女は恐ろしく自分が見えていないのだ。従って、気づかないうちに不幸になったりもするから、面倒くさい女にだけはなっちゃいけないのである。幸せの錯覚によって不幸せになる女……人生においてそれだけは何としても避けたいから。
面倒くさい女は、自分自身はとても幸せなのに、知らないうちに不幸になっている。だから危ない
Edited by 齋藤 薫
公開日:2015.04.23