
人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。
出会いのある人にはいくらでもあるのに、ない人にはない。それは一体なぜ?いつの時代も女たちの間で囁かれてきた疑問である。いやたぶん、みんなわかっているのだ。人なつこく近づいて、すぐに親しくなって、もう一度会う可能性を探る……そういう努力が出会いをつくるなんて、重々わかっているのだ。でもそれが難しい。がっついて見えない、図々しく見えない、馴れ馴れしくも見えないように……。そう心がけているうちに“次への可能性”がしぼんでいって、最後に慌ててすがりつくカッコ悪さを考えてしまうから、初対面が出会いにならずにそこで終わる。単純にそういうこと。いやもっと根本的な問題として、“人なつこい”ってどうやるのか、方法がわからないはずなのだ。
そこで気づいてほしいのは、“人なつこい”とは“人懐こい”と書くこと。人なつかしいと書くこと。もちろん“懐”には、“なつく”や“したう”の意味もあるけれど、大人の人懐こさにはむしろ“なつかしむ心”が求められる。つまり、昔からその人を知っているような気持ちで話をするのがカギなのだ。昔から知っていると思うと、不思議に警戒心が生まれず、サッと心の扉が開く。出会いが運命的なものに思えてくる。初対面で話が弾むと、「昔から知ってたみたい」と思うのと逆に。だから自分自身に暗示をかけるのだ。
もちろん、会う人すべてに“運命”を感じることは無理である。でもこの人絶対に無理、絶対にイヤ、と思う人以外は何かの縁があるのかもしれないと思うこと、それが“出会い”のコツなのだ。何かの縁があると思うと無理に質問を用意しなくても、縁のありかを見たくなる、何かしら共通点を探したくなる。あるいは自分のことを話したくなる。“袖振り合うも多生の縁”という諺は、まったくもってその通り。ただ、袖が触れ合うようなちょっとしたことも、前世からの深い因縁によって起こるもの、という意味で、何だか知らないが“懐かしい”のである。動物同士が会話なく、“波動”のようなものでお互い敵か味方かを見極めるように、人間同士もお互いの関係性を、会った瞬間見極めている。こちらの心を相手も読んでいる。だからこちらが懐かしいと思えば、相手も懐かしいと思うのだ。前世からの深い因縁を、“思い出す”のである。
これは恋愛においてだけじゃない。女同士にだってそっくり当てはまる話。性別の差なく、どんな立場の人をもあまねく懐かしみ、縁を感じる人が、必然的に恋の出会いも増やしていくのだ。今どき、恋愛対象の男とだけじゃんじゃん出会う、なんて都合のいい生き方はできないはず。男も女も人間も、昔より人の心が見えているから、もうごまかしはきかない。だからこそ今、分け隔てなく、出会った人にひと通り“人懐こい女”になろう。人を懐かしむ女になろう。初対面で、あ、懐かしいと思うと心の扉がパッと開き、表情がパッと明るくなる。それが人との出会い方である。だいたいが、この広い世の中で一度でも言葉を交わすことになる人は、必ず縁のある人なのだから。
出会った人を懐かしいと思うこと。昔から知っていると思うこと。それが人との出会い方
Edited by 齋藤 薫
公開日:2015.04.23