
人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。
ふてぶてしくなるのも、ガンコになるのも性格の老化現象だった!!
「悪口は、意地悪な人による慰めである」……そんな言葉がある。何やらドキッとした人もいるのだろうが、今は“積極的に意地悪する人”が激減した。昔のタレントの楽屋では、靴に画鋲を入れる、みたいな古典的な意地悪が横行したらしいが、今は“みんな仲良し”が基本。悪口の絶対量も減少したはずだが、現実にはネット上に場所を変えただけ?匿名のひとり言のような悪口は、逆に数を増していたりするのかもしれない。だからその格言も、こう書き換えるべきなのだろう。「悪口は淋しい人による慰めである」と……。
人の悪口は蜜の味とも言われ、ほとんど嗜好品のようなもの。だから心に隙間がありストレスがあれば、蜜を舐めるが如く、悪口はクセになる。タバコに近い常習性があると言ってもよく、誰もが同じようにクセになりやすいのだ。それどころか年々“悪口の絶対量”が増えていく人も。悪口のクセも一種の“老化現象”だからである。
人間、歳をとると“ふてぶてしくなる”と言われるが、それも紛れもない性格の老化。場数を踏むほどに、恥じらいやら遠慮やらがなくなっていき、まるで潤いと弾力が失われてゴワゴワした肌みたい。同様に“悪口のクセ”も、悪口を言ってる自分を嫌う“気持ちの浄化作用”が低下してくる老化に他ならない。逆に、ある種の“正義感”も歳とともに増えていったりもするけれど、同時に“自分がいちばん正しい”という傲慢さも生まれ、自分の考えを否定されたら、その相手を容赦なく糾弾して悪口を浴びせる。これもまた老化現象のひとつなのである。
もちろん、年齢とともに人の悪口を言わなくなる人もいる。もともと一切の悪口を言わない人も……。彼らは自分でちゃんとブレーキをかけているのだ。制御装置が錆びつかないよう、いつもきちんと磨いているのだ。でないと、誰かが第三者の悪口を持ちかけてきた時、うまくかわせない。ついついつられて口にしてしまうのが悪口の危険なところ。そしてその装置も老化によって力を失うことがある。逆にもっと制御が利くようにするには、やっぱりちゃんと意識して徳を積んでいかないと。
じつは、“素直さ”や“けなげさ”はもちろん、“優しさ”だって、放っておけば老化してしまう。いずれもその人の本質にあるものだから、消えてしまうことはないけれど、“素直さ”は“ガンコさ”になり、“けなげさ”は“勇ましさ”になり、“優しさ”は“おせっかい”へと形を変えていく。そして、良くも悪くも弁がたつようになるから、人間だんだん辛辣になっていく。それが“悪口のクセ”に変化してしまうケースが少なくないのだ。そして、放っておくと、一日の半分は悪口を言っているような、コワい女になっていて、それがすなわち性格老化。
恋して、学んで、人を幸せにしてあげると性格は歳をとらない
私たち女は、肌と顔と体のアンチエイジングには一生懸命だ。でも心のアンチエイジング、ひいては性格のアンチエイジングには、まったく手つかず。ただ歳を重ねるほどに、心のうちは肌に出る。性格がそっくり顔立ちになる。つまり心と性格のアンチエイジングは、“間接的にして決定的な美容”。だから今すぐ始めたいのだ。もちろん一体何をどうすればいいの?と途方に暮れるのだろうが、まずやるべきことは、やっぱり“悪口グセ”をやめること。悪口は、それこそシミシワみたいに、もっともわかりやすい老化現象だから。実際、女は悪口を言っている時って、それだけで5歳以上は老けて見える。
じゃあ女がいちばん人の悪口を言わない時って、いつだろうか?恋愛中である。言うまでもなく、心が恋愛感情でいっぱいになって、他の感情が入る余地がないうえに、恋愛ホルモンPEAは一種の興奮剤だから、悪口を言う精神状態になれないのだ。ましてや愛されていれば、悪口で自分を慰めたり、癒したりする必要はなくなる。やっぱり悪口は、ネガティブな心を自ら慰めるツールに他ならず、だから当然のこととして、心がヒマにならない努力だけは必要だ。“性格老け”しないため。
いや、もともと恋愛は、最強のアンチエイジングと言われてきたが、ここで必要なのはあくまで悪口を止める方法としての恋愛。別に本物の恋でなくても、追っかけでもして擬似恋愛ができればそれでいい。逆に本当の恋愛ではやがて疑いや嫉妬が生まれ、一転いきなり悪口のモンスターになりかねない。だから擬似恋愛の方がいっそ性格アンチエイジング効果は高いかもしれないのだ。
そして学ぶこと。習い事をする。学校に通う。ともかく知らないことがあるのを認める。知らないことを知ろうとする。なぜならそれだけで、人はいきなり謙虚になれるから。人間、歳をとるにつれ、人の意見を聞かなくなる。その結果、どんどん“ふてぶてしく”傲慢になっていく。でもそれ自体が間違いであることに気づくためには、自分にはまだまだ知らない事柄がたくさんたくさんあるという現実を認めることが何より大切なのだ。だから一年生みたいに、ゼロから何かを学ぶこと。それが性格のアンチエイジングには不可欠なのである。
さらには、“悪口グセ”のある友人をもたないこと。悪口は嗜好品であり、お茶の友。だから聞いていて心地いい時もあるし、そんな悪口を次々提供してくれる友人に友情を感じたりもしがち。まずは彼女がなぜ悪口を言うのかを分析しよう。意地悪だから?淋しいから?それを知れば友情を見直さざるを得なくなるだろう。
そして何より、自分が“幸せ”ならば、わざわざ人の悪口を言わずとも生きていける。ただやみくもに“幸せ”を追っていると、逆に自分より幸せな人がやたらに目について、それを忌々しく思い、かえって山ほどの悪口を言うハメになる。そこで思い出したのが「いちばん明快な揺るぎない幸せは、むしろ人を幸せにする行為にある」という言葉。なるほどそうかもしれない。人に感謝された時の方が、わかりやすい達成感や充実感があるし、人間もっといい人になろうとする。自分を幸せにするより、まずは身近な人を幸せにする方が、心は満たされるのだ。その幸せを共有できるのならなおさら。ハリウッド女優が難民を養子にとるのも、そういう意味がなくはないと考えるとわかりやすい。人を幸せにする幸せは、幸せの中でももっとも崇高なもの。それによって性格のアンチエイジングが成立しても不思議じゃないのだ。
恋をして、学んで、友情を見直して、そして人を幸せにする……。友人の悪口を減らしてあげるのだって、人を幸せにすること。立派な性格アンチエイジングである。
女は悪口を言っている時、実際に5歳以上は老けて見える。性格の老化も目に見えるのだ。
Edited by 齋藤 薫
公開日:2015.04.23